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超超超大人気バンドのイケメンボーカルに転生した俺 〜初恋のあの子を幸せにするのに結局、誰かは関係ありません!?〜  作者: 甘い肉うどん


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第十話 疑惑

きょうすけはカス!

「……レン先輩、これ、マズいことになってます」


放課後の生徒会室。めいが顔を青くしてスマホを差し出してきた。

SNSのトレンドには『#天音蓮』の文字。だが、その隣には不穏なタグが並んでいた。

『#レクイエム盗作疑惑』『#九重氷斗のパクり』。


匿名の告発アカウントが、生前の九重氷斗がSNSに細々とアップしていた古いデモ音源と、俺の新曲『レクイエム・フォー・H』のサビを比較した動画を投稿していたのだ。


「誰がこんな……」


「……恭介よ」

聖が苦々しく吐き捨てる。

「彼、昨日からライブハウス界隈で言い触らしているわ。『天音は死んだ九重から曲を盗んだ』って。皮肉にも、貴方の歌が完璧すぎるせいで、『17歳の少年にこんな曲が書けるはずがない』という疑念が信憑性を帯びてしまっている」


フェニックス・レコード側からも、事実確認が終わるまでシングルの発売を延期するべきだという圧力がかかり始めていた。

前世で「華がない」と捨てられ、今度は「才能を盗んだ」と石を投げられるのか。

24歳の俺の魂が、再び黒い絶望に染まりそうになった。


その日の夜。俺は逃げるように、一ヶ月前の事故現場に近い公園のベンチに座っていた。

「……天音くん」


聞き慣れた、けれど今の俺を一番救ってくれる声。

陽葵が、胸に古い、ボロボロになったスケッチブックを抱えて立っていた。


「陽葵……ごめん。今、俺と一緒にいるとろくなことにならない」


「ううん。これを見てほしくて、ずっと探してたの」


彼女が差し出したのは、九重氷斗——つまり、俺が高校時代に使っていた五線譜ノートだった。

パラパラと捲ると、そこには殴り書きされた無数のメロディと、歌詞の断片。

そして、最後のページには、一ヶ月前の日付とともに、震える文字でこう書かれていた。


『いつか、この曲を天音蓮のような奴が歌えば、世界は変わるんだろうか。俺にはその華がないけれど。——レクイエム、いつか君に届くように』


「……これ、どうして陽葵が?」


「九重くんが事故に遭った日の放課後、彼の下駄箱の近くに落ちていたのを……私が拾ったの。届けてあげようと思ったのに、その夜に、彼が……」


陽葵の瞳に涙が溜まる。

「天音くん。このノートには、九重くんが天音くんを『認めていた』証拠が書いてある。盗んだんじゃない。彼は、貴方にこの曲を託したかったんだと思う」


皮肉な話だ。前世の俺は、今の俺に絶望し、そして憧れていた。

俺は陽葵の手からノートを受け取り、確信した。

このノートがあれば、盗作疑惑を逆転のプロモーションに変えられる。


翌日。俺は聖とめいを呼び出し、緊急の生配信をセッティングさせた。

タイトルは『九重氷斗へ捧ぐ』。


配信が始まると同時に、視聴者数は一気に30万を超えた。コメント欄は誹謗中傷と期待で荒れ狂っている。

俺はカメラの向こう、画面越しにニヤついているであろう恭介を見据えて、ノートを開いた。


「盗作だと言っている奴らに、一つだけ教えてやる」


俺はノートの最後の一節を読み上げ、そしてそのままピアノの前に座った。


「これは盗作じゃない。……『九重氷斗』という名の、報われなかった天才から受け取った遺志だ。俺はその重さを背負って、アイツが死んでも届かなかった場所へ、この歌を連れていく」


そこから俺が歌ったのは、シングルのカップリングに予定していた新曲。

九重のノートにあった未完成の断片を、今の俺が完成させた**『未完のラブレター』**。


歌い終えた瞬間、コメント欄の動きが止まった。

その歌声には、盗作した人間が持ち得る「後ろめたさ」など微塵もなく、ただ圧倒的な「愛」と「弔い」だけが宿っていたからだ。


「……信じるか信じないかは、勝手にしてくれ。でも、俺はこのノートに恥じない歌しか歌わない」


配信が終わった直後、SNSの空気は一変した。

「天音蓮、かっこよすぎる」「九重くんって人の曲をこんなに大切に歌えるのは彼だけだ」

疑惑は、伝説へと昇華した。


配信を終え、精根尽き果てた俺に、陽葵がそっと寄り添った。

「……届いたね。九重くんに」


「ああ。……ありがとう、陽葵」


俺は彼女の肩を抱き寄せた。

生徒会室のモニターでそれを見ていた聖が、ペンをへし折り、めいが「あー! 先輩だけずるい!」と叫んでいることも知らずに。


だが、この大逆転劇を、誰よりも屈辱的な思いで見つめていた男がいた。

「……遺志だと? 笑わせるな」


恭介は、ノートの筆跡が九重のものであることは認めた。だが、彼は気づいてしまった。

「……あのノート、九重は肌身離さず持っていたはずだ。下駄箱に落ちていた? そんなはずねぇ。あの日、あいつは……」


恭介の猜疑心は、ついに「超常的な領域」へと踏み込み始めていた。

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