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三代目剣聖は自由に生きたい。「婚約破棄ありがとう。あなたの家に代々伝わる剣はもらっていくね!」

作者: 巫月雪風
掲載日:2026/02/08

「ハンナ!貴様との婚約を破棄する!」

「……はぁ?」


 今婚約破棄を宣言したのは、一応私の婚約者、クリストファー・リーンハルト。

 リーンハルト家領主(数日前になったばかり)だ。

 ちなみに私達の婚約期間は約半年。

 短い、と思うかもしれないが私からすれば半年も行動を制限されてかなり苦痛だった。


「だいたい、我が家の伝統がおかしいのだ。剣に選ばれた者を剣聖として扱うなどと!」


 周囲の人もうなずいている。


 ちなみに彼が言う剣は、今私の腰に差してある。

 リーンハルト家は、何年も前から剣を鞘から抜ける者を探していた。

 というか、いつでも誰でも参加できますよ、という風に募集していたのだ。


 で、何でも屋をしながら世界を旅していた私は、興味本位で参加。

 そして、誰も抜けなかったその剣を抜いてしまったのだ。


 この剣、当然ながら普通の剣ではない。

 世界に四つしかない、神の武器なのだ。

 当然ながら、それを扱える者は当然限られている。


 そして、それを使っていたのは、リーンハルト家を作った初代剣聖、名前はニック。

 このニックだが、とにかく様々な伝説を持ち、剣聖とまで呼ばれている。

 今でも全剣士の憧れと言われているくらいだ。

 もちろん私も憧れている。

 そんな彼が使っていたのがこの剣なのだ。


 そんな彼は当時のこの国の王から剣聖の称号を与えられた。

 ついでにこの土地も。

 だが、彼は自身の子供にはその剣を使わせず、自身の弟子に託した。

 その弟子が二代目剣聖。

 その弟子は、自身の後継者、というか次の剣の使い手を指名せず、初代の子供に返した後、亡くなったのだ。


 そして今。

 その子孫であるクリストファーは十五代目。

 そして剣を受け継ぐ事になった私は三代目剣聖というわけだ。

 


 ちなみに、なぜ私が剣を抜くイベントに参加していたかというと、一つの噂を聞いたからだ。

 その噂、その内容は……剣を抜くことに挑戦した者は誰一人として帰ってこなかった、というもの。

 実際に家族が抜きに行って帰ってこなかったという人にも会いに行き、噂が本当である事を確信。

 それを聞いて私はますます興味を持ち、挑戦。

 見事抜いたのだった。


 で、私は当時領主だったクリストファーの父親から勧められるままに婚約。

 もっともすぐに嫌になったけど。


 数日前にその父親が亡くなり、クリストファーが領主に。

 で、婚約破棄。


「まぁ、いいですけどね。むしろ感謝です。では、これで」

「待て!その剣を返してもらう。それは、我がリーンハルト家のものだ!


 その言葉を聞いて私は思わず噴き出した。


「面白。あんたらさぁ、なんで初代が自分の子供に剣を使わせなかったかわからないの?」

「ふん。初代はもともと成り上がりで貴族になった者。すでに弟子がいたからだ。弟子が出来る前に子供が出来れば子供に継がせただろうよ」

「呆れた。この剣を抜こうとした者は、私以外皆死んでいる。それは知ってるよね」

「無論だ」


 そう、あの噂は本当なのだ。


「それを知ってなお、剣を返せ、と」

「そうだ、その剣は私にこそふさわしい。初代の血を引き、優れた剣士である私がな」


 確かに、クリストファーの剣の腕は中々だ。

 領地から出た事や実戦経験もない。

 だが、それでも優れている事は間違いない。

 私が保証してもいい。


「あなた、確実に死にますよ」

「はっはっは。そんな事あるか」

「では、どうぞ」


 そう言って私は剣を差し出す。

 クリストファーは鼻で笑うと剣を持ち、鞘から抜こうとして……

 そして止まった。


「がががががggggggg」


 クリストファーの口から異音が響き……彼の体から白い煙が上がる。

 周囲からは悲鳴が響く。

 彼の体は溶けていき、やがて骨だけになり、地面に落ちて灰になった。


「だから言ったのに」


 私はそう言って再び神剣を取る。


「では、さようなら」


 そう言って私は去ろうとしたんだけど……


「あの者を捕らえろ!領主様を殺した大罪人だ!殺しても構わん!!」

「は?」


 この家の執事の声を聞き、警備兵がやってくる。


「うっざ……」


 私は神剣を抜くと一瞬で警備兵たちを皆殺しにした。

 そして、恐怖におびえる執事もついでに殺しておく。


 こうして、おびえる周囲の人々を尻目に、私はお屋敷を去るのだった。


 その日の夜。

 宿屋で休んでいると、客が来た。


「あなたは?」

「はい。私はリーンハルト家に代々仕えている執事でございます」


 と、その若い男性は自己紹介した。


「何?また仇討ち?」


 この宿屋に来るまでに何人も追っ手を殺している。

 正直もう飽きた。


「いえ、私は個人であなたにお話がありまして」

「何?」

「なぜ、あなたは神剣に選ばれたのですか?そして、なぜクリストファー様が剣を抜けないと思われたのですか?その理由を知りたいのです。なんでも、その剣の持ち主にはその剣や持ち主の情報が与えられると聞き及んでおります。ですので、ご存じではないかと」

「えぇ、知ってるわよ。まぁ、いいわ。教えてあげる」


 彼の言う通り、この剣を抜いた私には、代々のこの剣の持ち主、それこそ初代剣聖より前に持っていた人の事すらわかる。

 私は彼に説明を始めた。


「この剣はね、自らの主人を選ぶ。それは知ってると思うけど、選ぶ基準はなんだと思う?」

「いえ、存じておりません。初代も黙っていたそうですし」

「まぁ、一々言う事じゃないしね。そもそも気にするような人は絶対抜けないし」。


 私は笑いながら話を続ける。


「じゃぁ、この武器の正式名は?」

「いえ、それも。初代の話では主になればわかると。あなたならわかるのでは」

「もちろん。正式名は神鳥の神器っていうの」

「神鳥の神器、ですか?神鳥の剣ではなく?」

「そうよ、よく見て、私が抜いた時と比べて、剣が細くなっていると思わない?この神器はね、主の得意とする形に自らを変えるの。人によっては槍や長刀の場合もあったようね」

「なるほど、持ち主が扱いやすい武器に姿を変える、と言うわけですね。神器と言われるわけです」

「で、話を戻すけど、この神器は鳥なのよ。つまり、この武器が求めるのは自由な心。何物にもとらわれない、ね。もちろん強さも求められるけど」

「それで、あなたが選ばれた、と」

「えぇ、これでも私は面白いことを求めて何でも屋をしながら世界を旅していたからね。初代剣聖も領主になる前はそうだったんでしょ」

「そう聞いております」

「だから、初代剣聖は領主としてここに住むことを決めた時、弟子にこの剣を渡したのよ。領主として一か所にとどまり、愛する者と生涯暮らす。そんな自分がこの神器を持ち続けるのはふさわしくない、ってね」

「なるほど……」


 ちなみに、領主になる事や結婚して所帯を持つことが、即【自由ではない】、という事にはならない。

 それを禁ずることもまた、自由ではないからだ。

 しかし、初代は生涯ここにとどまった。

 それはこの国を、この国で出会った人々を、そしてなにより妻を愛していたから。

 一か所に留まる自分はもはや自ら翼を落とした鳥。

 この国と言う籠に自ら入り、その中で暮らす。

 そう覚悟を決めた初代は神器を手放したのだ。


「で、ここまで聞けばクリストファーが剣を抜けなかったかわかるでしょ?」

「はい」


 剣を抜く者に必要なのは自由な心。

 領地から出た事すらない坊ちゃんが、生まれながらに籠の中で育つ者が、ましてや籠の中から出ようとすらしない者が抜けるはずがない。

 初代剣聖が自分の子供に剣を渡さなかったのはそれを看破していたからだ。


 世界を旅し、成り上がりで貴族になった自分と違い、生まれながらの貴族である子供に抜けるはずがないとわかっていたのだ。


「では、二代目が後継者を指名しなかった理由は?」

「初代剣聖が二代目剣聖に神器を渡したくらいから世界が平和になったでしょ。で、その影響で戦いが減って、皆守りに入ったから。安定を求めて落ち着いた暮らしを求める人が自由な精神を求める神器を扱えるわけないでしょ」

「なるほど。そういうわけでしたか」


 うんうん、と彼は頷く。


「話は終わり。満足?」

「はい。ありがとうございます。それで、実はもう一つお願いがありまして」

「なに?」


 少し興味を持った私に、彼は面白い提案を出してきた。


「私も連れて行ってください」

「は?」

「リーンハルト家はもう終わりです。その地位に驕り、最近は民をないがしろにしています」

「で、破滅する前に脱出しようと」

「はい」

「いいの?代々仕えているんでしょ」

「最近は私の一族に対する扱いもひどく、親族は私以外既に全員出ていきましたよ」


 解雇が三割、自主退職が七割ですがね、と彼は笑って言う。


「で、あなたも出ていくと」

「はい。それもリーンハルト家の為ですから」

「あら、なんで?」

「実は、私の一族も初代の血を引いているんですよ。私達の一族の先祖アリア様は、リーンハルト家の初代ニック様とは女友達でして、彼が貴族になる前から、そしてなった後も彼を支えたんです。アリア様はニック様とその妻になる女性との関係を察すると、自らの思いを諦めてニック様に仕えていたのですが、その思いを見抜いた奥様が子をなすことを許したそうです。アリア様はそれほどニック様と奥様に信頼されていたのです」

「そうだったの」

「はい、それ以降私たち一族はリーンハルト家にお仕えしていたのですが、先代の頃から私達をないがしろにしておりまして。どんどん出て行ってるのです。今残っているのは私だけ。でも、もううんざりです」

「代々仕えている家系の人間に逃げられるなんて、あの家末期ね」

「はい。実は、ニック様も似たような予言をしています。アリアの家系の人間全てに見捨てられた時こそ終わりの始まりだ、とね」


 そう言って彼は笑う。

 そのあくどい顔から、リーンハルト家は本当に終わりだろうな、と思った。


「で、私を護衛に、と」

「いえ、私はこう見えて実戦経験のある剣士です。私は、あなた、というかその剣と旅をしたいのです」

「は?」

「私はアリア様の大ファンでして、彼女のようにその剣の主を支えたいのです。」

「ふ~ん、私より剣ね~」

「はい。そうです。ついでに、どこか遠くでいい女性を見つけて子をもうければニック様とアリア様の血を残す事にも繋がりますし。一石二鳥です」


 自分の事しか考えていない、という事をはっきり言う彼を見て私は笑った。


「私に興味があるなんて普通の内容だったら、放っておこうと思ったけど、はっきり私より剣なんて言うのは面白いわね。いいわよ、一緒に旅しましょ」

「ありがとうございます」

「……ところで、あなた名前は?」

「名前、そうですね。何でもいいですよ」

「え?」

「せっかく新しい旅に出るんですから、新しい名前を考えますよ」

「……あっそ、好きにすれば」


 そう言った私の言葉を聞いて、彼は笑って言った。


「決めました。スキニスレバにします。今あなたが言った言葉から取りました」

「変な名前」

「名前なんかにこだわるなんて時間の無駄です。それに変な名前という事は人の目を引く、という事。何か面白い事件を引き寄せるかもしれませんよ」

「……あんた、私よりよっぽど神器の主に向いてるんじゃない?」


 そう言った私に対し、彼は笑って言った。


「冗談でしょ。私はニック様よりもアリア様みたいになりたいんです。だからこっちから断ってやりましたよ」

お楽しみいただけましたでしょうか?


私が温めている話を利用して作りました。

ザマァとかではないのですが、お楽しみいただけると幸いです。


よろしければ、ご意見ご感想、レビュー以外にも、誤字脱字やおかしい箇所を指摘していただけると幸いです。

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