それぞれの、その後
■ ハルディン伯爵家について
ハルディン伯爵家は、急激に没落したわけではない。
爵位も、屋敷も、名も――
形だけは、残っている。
ただ、社交界での扱いが、変わった。
招待状は届く。
だが、席は端になる。
挨拶は交わされる。
だが、話題は深まらない。
誰も正面切って非難はしない。
その代わり、
触れてはいけない家として、
静かに距離を取られる。
「あの件は……」
そう言いかけて、
言葉を濁される。
王都では、
“保護された令嬢がいた家”
という事実だけが、
噂としては確実に残った。
継母は、
以前よりも社交に熱心になったが、
状況は変わらなかった。
使用人は増えたが、
屋敷は、どこか落ち着かない。
伯爵は、
会合の席で、
次第に発言しなくなった。
誰も、
「どうしてこうなったのか」を口にしない。
静かだが確実にスルーされる。
それが、この家に与えられた、扱いだった。
ミレイユの名は、
今も、正式な家の記録には残っている。
だが、
現在形ではけして語られない。
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■ レオネル・アルデハイトについて
レオネルは、
婚約者のいない状態を、
淡々と受け入れている。
同情も、
批判も、
当然だが周りから向けられることはなかった。
彼は、相変わらず優秀で、
真面目で、
与えられた役目をきちんと果たす。
ただ、一つだけ変わったことがある。
進路だ。
彼は、
法律を学び始めた。
理由を聞かれても、
多くは語らない。
「…仕組みを、
知っておきたいだけです」
聞かれると彼はそう答える。
声は静かだが、
軽くはない。
力のある者が、
無自覚に誰かを追い詰めることがある。
それを、
彼は知ってしまった。
だから、
剣や地位だけでは
守れないものがあると理解した。
彼は、
過去を語らない。
だが、
同じことを繰り返さない。
それが、
彼なりの誠実さだった。
⸻
■ そして、ミレイユは
ミレイユは、
今日も教会で働いている。
床を掃き、
花に水をやり、
疲れた人に、お茶を出す。
時々、
お菓子を焼く。
「ちゃんと控えめにしました」
そう言って差し出すと、
誰かが少しだけ元気になる。
それでいい。
彼女の力は、
噂にならない。
奇跡とも、
呼ばれない。
祭り上げられる事なく、
ただ、そこにある。
ミレイユは、
もう振り返らない。
過去に縛られず、
誰かを見下ろすこともなく。
好きな人のそばで、
人の役に立つ。
それが、
彼女が選んだ生き方だった。
そして、リアナはそんなミレイユを少し遠くから優しく見つめている。
読んでいただきありがとうございました!
コメントもありがとうございます!ちゃんと読んでます!仕事忙しくてあわあわしてるので返信できなくてごめんなさい!
でも読んでます!感謝٩( ‘ω’ )و))




