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弟の婚約者がどうみてもドアマットヒロインなので愛でることにしました。  作者: ちょこだいふく


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17/23

能力の確信

異変は、偶然ではなかった。


 リアナは、ミレイユの部屋に足を踏み入れた瞬間、空気の違いに気づいた。


 重くない。

 澱んでいない。


 むしろ、

 呼吸がしやすい。


「……ここ、昨日とは違うわね」


 独り言のように呟く。


 視線の先で、

 窓際の鉢植えが、静かに花を咲かせていた。


 昨日まで、

 蕾すら頼りなかったものだ。


 リアナは、足を止める。


 魔力の残滓。

 操作の痕跡。


 ――ない。


 強引に流された力ではない。

 暴走でもない。


 自然に満ちた結果。


 リアナは、はっきりと理解した。


 これは、偶発ではない。


「……確定ね」



 その日の午後。


 アルデハイト侯爵は、私室に娘を迎えていた。


 重厚な書棚。

 磨かれた机。


 家の長が判断を下す部屋だ。


「話があると聞いたが」


 低く、落ち着いた声。


「ええ」


 リアナは、即座に本題に入った。


「ミレイユ・ハルディン嬢についてです」


 侯爵の視線が、わずかに鋭くなる。


 だが、遮らない。


「彼女には、

 能力が発現しています」


 曖昧な言い方はしない。


 事実として、告げる。


「生命系と思われます。

 ただし、既存の分類には当てはまらないようです」


 リアナは、短く説明した。


 発現条件。

 暴走の有無。

 意図の不在。


 そして――

 教会の中庭で起きた、二次的現象。


 侯爵は、最後まで口を挟まなかった。


「……なるほど」


 ややあって、頷く。


「制御不能ではないな」


「ええ」


「兵器転用の兆候も?」


「ありません。

 …本人の性格上、まずありえないでしょうし」


 即答だった。


 侯爵は、机に指を置く。


「では問題は一つだ」


 視線が、リアナに向く。


「――守れるか」


「守ります」


 迷いなく言う。


「というより、

 すでに守られています」


 “環境”によって。


「能力は、

 幸せを感じたときに発動します」


 侯爵の眉が、わずかに動いた。


「……危うくはないか?」


「ええ」


 リアナは、否定しない。


「しかし、だからこそ、

 強制や管理は逆効果です」


 沈黙。


 侯爵は、深く息を吐いた。


「我が家で、正式に預かるか」


 それは、質問ではなかった。


「はい」


 リアナは、静かに頷く。


「研究対象などではなく、

 “生活の中で育つ能力”の開花を目的として」


 侯爵は、少しだけ口元を緩めた。


「お前らしい判断だ」



 夕方。


 ミレイユは、呼ばれて応接室にいた。


 緊張は、ある。

 だが、逃げ場も用意されていることも分かっている。


 侯爵は、彼女をじっと見た。


 威圧はない。

 評価もない。


「ミレイユ嬢」


「……はい」


「安心しなさい」


 最初の言葉が、それだった。


「君の力は、

 危険なものではない」


 胸の奥が、きゅっと鳴る。


「むしろ、

 大切に育んでいくべきものだ」


 リアナが、隣で言った。


「ここでは、

 何かを求められることはないわ」


「成長も、発現も、

 急がなくていい」


 ミレイユは、言葉を探し、

 やっと、口を開いた。


「…でも、私…

 …何をすれば良いか…お役に…」


 侯爵は、首を横に振った。


「いいや」


「君はしっかりと生きなさい。

 生きているだけで良いと言うことを知りなさい」


 それだけだった。


 ミレイユの視界が、

 少し滲む。


 命令ではない。

 期待でもない。


 許可だった。


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― 新着の感想 ―
娘のやる事を信じて認め、同じ方針でミレイユにも接しられる公爵凄いなぁ。恐らくは(書かれていない)思惑はあるのだろうけど、結果的には息子の婚約も能力発現前にちゃんと解消しているし、素敵な大人だと思いまし…
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