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とても困っている董卓さん  作者: 神奈いです
第3章 あいつらが反乱軍でワシは皇帝を擁しているから官軍だぞ!

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第11話 連戦連勝して出世しても何も改善しない

 漢の孝献皇帝 初平元年 


 董卓はずっと兵を率いて洛陽にいる。


 北に王匡を破った。東に曹操を破った。


 

 南の孫堅が、南陽郡の魯陽から北進して、河南尹の梁県の東に入った。


「小童めが」


 董卓は即座に内線作戦を継続し、南に全軍を振り分けた。

 北の袁紹は曹操と揉めており、東の連合軍は解散してしまっている。


 董卓は何も心配せずに全力を孫堅にたたきつけることができた。



 徴兵したばかりの素人をかき集めただけの関東の諸侯とは違い、孫堅軍の中核となっている兵は長沙の反乱鎮圧からずっと率いている精鋭である。さらに潁川太守(氏名不明)も軍を率いて援軍として参加していた。

 孫堅としても簡単には負けないと自信を持っていた。


「孫堅軍は整然と士気が高く訓練も行き届いております」

「そうであろうな」


 董卓は部下の報告を受けて頷いた。


 この前、孫堅が着陣したばかりの時に、董卓は軽騎兵を派遣して孫堅の陣を偵察させたことがあった。


 孫堅は陣の中で酒盛りをしていたが、兵を落ち着かせ、逆に董卓軍の騎兵を睨み返してきた。董卓軍の軽騎兵は孫堅の陣が乱れないので、攻めることができず手をこまねいて引き返さざるを得なかった。

 それを見て孫堅はゆっくり兵を退かせ、衝突を避けた。しかし陣は全く乱れることがなく攻撃の隙は無かった。



(あの練度だ。我らが全軍で攻めたとしても上手くは行かなかろうな)


 董卓は作戦を考えるために、陣の先頭にたって、孫堅軍の陣立てを直接確認することにした。


「……ううむ、さすがは孫堅。布陣に隙が無いわい」


 今までの王匡や曹操の軍は控えめに言っても素人だったので楽勝だったが、この陣を攻め立てる手段が董卓には思いつかなかった。


「直接攻撃は避けたいが……む?なんだあの陣地は?」


 董卓が敵陣を眺めながら、馬を進ませていると、急に陣立てもバラバラで、旗の立て方も弱弱しい陣が目に見えた。


「閣下、あれは潁川太守の軍です」

「……なるほど」




 翌日、董卓は精鋭の騎兵をまとめて徐栄に任せ、潁川太守の軍を集中して攻め立てた。


 羌族や匈奴の軽騎兵が騎射を行うと、盾もロクにつかえない潁川軍の兵がバタバタと倒れていく。


「いや、さすがにもう少し訓練せんのか!農民をそのまま連れてくるとは!」


 漢代の軍は、分業制である。だいたい伍という五人一組であり、盾持ちは一人、鎧を着ているのも一人、長柄武器も一人、弓も一人などと分業をしている。つまり鎧を着ていない兵の防具は布の服である。これは盾持ちと鎧を着た兵が前に立ち、後ろから長柄と弓で支援をするという分業をきちんとして、初めて機能する軍隊なのである。


 つまり、訓練をしていないと矢を盾で防ぐことすらできない。


 盾に守ってもらえない長柄や弓兵が倒れたところで、徐栄率いる鉄騎(重装槍騎兵)が敵陣に突っ込むと、盾兵や鎧兵が次に次になぎ倒されていった。


「潁川太守、討ち取ったりー!」


 徐栄の勝どきがあたりに響き、敵軍は総崩れになった。


 孫堅軍は崩れかけた潁川軍を支援するために陣形を変更して深入りしており機敏に動くことができない。


「今じゃ、包囲いたせ!」


 董卓軍の精鋭はそれを見逃さない。両翼の歩兵を鶴の翼のように横に広げ、一気に孫堅軍を潁川軍ごと包み込んだ。


 完全に包囲したため、あっという間に皆殺しにできると踏んだが、歩兵同士の戦いになると孫堅軍が粘る。


「む……崩れんな?!」


 孫堅の兵は長沙の歩兵である。昔から江南の歩兵は剽悍で死を恐れないとして強兵とされている。そして孫堅が長年訓練してきた精鋭である。包囲されたぐらいで恐れはせず、むしろ董卓の涼州と并州の歩兵をガンガン攻め立て始めた。


「徐栄に背後から突撃させよ!」


(孫堅はここで倒してしまわないとまずい)


 袁紹はやる気がないし、関東の兵は弱い。しかし孫堅と孫堅の兵は強い。

 董卓は歩兵だけでなく、騎兵もすべて投入して、勝負をかけた。



「孫堅の赤頭巾を見つけました!」

「追えっ!追って殺せ!」


 孫堅は粋な男であり、常に目立つ真っ赤に染めた頭巾を見せびらかしていた。

 戦陣でも非常に目立つため、赤い頭巾が逃げ出したのを見て董卓の騎兵が一斉に追い始めた。


 しかし、孫堅は頭巾を外し、別の方角から逃げおおせている。その数たったの十数騎。


 孫堅軍は壊滅したが、孫堅は逃げ切ることに成功した。



 ― ― ― ― ―


 

 董卓は反董卓連合軍に勝って連戦連勝。


 ついに北も東も南もすべての敵軍に勝利を収めることができた。



 年が明けて漢の孝献皇帝 初平二年(西暦191年)

 董卓はいまだ長安に行かず、洛陽に陣を構えている。


 昨年からの連戦連勝を祝して、董卓は朝廷から「太師」の官位を授かった。太傅と同じく、皇帝の教育を受け持ち、また皇帝が幼少の際は政務を担当する役職である。つまり摂政だ。


 大変にめでたいことではあるが、董卓の顔色は良くない。


 大勝利を収めたならば、それこそ反董卓連合軍に対して攻撃を仕掛ければよい。

 しかし、連戦に次ぐ連戦、しかも孫堅の長沙兵との激戦を経て、董卓の精鋭の涼州兵・并州兵が大幅に減ってしまっていた。

 歩兵は何進の元部下で補充しているが、質は大幅に落ちる。


 朝廷に徴兵を阻止されたのが地味に効いてきている。

 こうなればどこかから訓練をした兵を持ってくるしかない。

 

 そんな都合の良い兵がいるのだろうか。



 いる、長安近郊の右扶風に皇甫嵩が兵3万を率いて、馬騰・韓遂を睨んで駐屯している。その兵を奪わなければいけない。


 董卓はさっそく皇甫嵩を殺して兵を奪うように長安に指示をだした。

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