表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/37

先手必勝! 兎追いしかの原、かばね築くかの丘

※このおはなしには、ちょっぴりきけんなシーンがふくまれています。

 かわいいうさぎさんたちがたいへんなことになるので、

 小さいおともだちは、おうちのひとといっしょによんでね!


 覚悟はきまりましたか?

 あとは自己責任ですよ?


 【はい】 ← 選択肢は動かない!

 【いいえ】


それでは、地獄へようこそ――――――――――――――――――――――――



 ある森を抜けた先、草原――


 雲一つない、気持ちの良い青空が広がっていました。

 一面に広がる緑の絨毯に、小さな花々が賑やかに咲いてました。


 そんなところに、ぽつんと一匹、白いウサギさんが座っていました。


 ふわふわの毛並み。

 きょとんとした赤いおめめ。

 ぴくぴく動く、ちいさなお鼻。


 ふんわり丸いお耳は、春風にふわふわ揺れて。

 ころころと小さな身体は、まるで雪玉みたいに真っ白です。


 わぁ、かわいいなぁ。


 おててをすり合わせるしぐさなんか、

 まるで絵本の中から飛び出してきたみたいでした。


 そしてウサギさんが――


 ぴょん、ぴょん、ぴょんぴょこぴょん。


 可愛らしくこちらに跳ねて来るんだ。


 人慣れしてるんだな、可愛いなぁ。


 などと思っていると――  


 拳吾郎さんが――


「先手必勝じゃあッ!」


 いきなり飛び出し、ドガァン!!


 全開喧嘩キックをかまされたウサギさんは、くるくると回転しながら、空高く吹き飛んでいきました……


 えっ、えええええええ!? な、なにこの仕打ち!?

 あんなかわいいウサギさんを……


 ぼくが絶句していると、

 勇者さまはすっと目を細め、静かに言いました。


「見事なり」


 えぇぇぇぇ!? 褒めるところなのっ!?


 そんなぼくの心の叫びもむなしく、

 草原には、ただ春の風がそよぐばかりでした。


 ぼくは、空の青さがやけに憎たらしく思いながら、

 おっきなため息をひとつ、つくのですが――


 勇者さまは、こうも言うのです。


「あれは恐怖の首狩りウサギなり。

 笑みの裏に牙を隠し、柔らかき毛皮に毒を宿す、魔物」


 ええ、アレって……魔物だったんだ……

 あ、でも、まてよ、勇者さまがそう言うなら……

 

 ぴょこん!


 え…………ッ!?

 

 すこし灰色がかったウサギさんだ!

 こんがり茶色のウサギさんも!

 さらには真っ黒なウサギさんまで!

 

 いろんな色のウサギさんたちが、どんどんどんどん、草原に湧いてきました。


 ふわふわの毛並み。

 きょとんとした赤いおめめ。

 ぴくぴく動く、ちいさなお鼻。


 でも、そいつらは、見た目はとても可愛いのに……

 よくよく見ると……


 目に『首寄こせ、首置いてけ』みたいな――

 『殺意の色』が、ありありと浮かんでました(涙)


 ぴょん、ぴょんぴょんぴょん――!

 うわわ、迫ってくるぅぅぅぅぅぅ!

 

「兄弟、油断しとったら、首、モゲてまうで……!」


「諒――この世に、無垢なる敵など存在せず。

 武を知る者、万象に備え、常に心砥ぐべし」

 

(戦闘シーンは自主規制されました)


 そして、当然――


 首のないウサギ。

 胴体がねじれたウサギ。

 半分にへしゃげたウサギ。


 積みあがった、死屍累々。

 牧歌的な草原は、まるで、昔語りの軍記物に出てくる、

 もの悲しい“ハンバーグのヒル”になってしまいました。


 なんでウサギだけで丘ができるのさっ!?

 あと、拳吾郎さん、拳に付いた血を嬉しそうに舐めないで……

 

 だけど、ぼくはこう思いました。

 見た目にだまされてはいけないのだと。

 大変、得難い教訓でした。


 そして、こうも思うのです。


(……こんなおはなし、子どもに読ませちゃ絶対ダメだよ!!!)


 返り血と脂にベットリまみれながら、ぼくは切実に、そう願ったのです。


 なお、今回も斧吾郎……いえ、斧ちゃんは、使われませんでした。

 泣かないで、斧ちゃん……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ