第3話恋敵②
3話です
続きです
家に到着した少女は自分の部屋のベッドを目指して一目散に駆ける
そしてベッドにふてぶてしくダイブ
枕を手に取り顔を押し付け言葉にならない言葉を叫んだ
我に返ったのか枕から顔を外し、仰向けになる
『まじでなんなのあいつ…』
幼なじみの何を考えているか分からない真剣な表情が頭をよぎる
『シフォンケーキと付き合ってるって…
そういえばあいつシフォンケーキ好きだったな
いやいや、そういうことじゃないでしょ』
危うく納得しそうになってしまった
少女はそんなことをつぶやきながら、立ち上がりキッチンに向かう
こうなったらやけ食いだ
思いを踏みにじられた苦しみは暴飲暴食でしか満たせない
冷蔵庫を開けると、そこは幻想郷だ
カカオの匂いが部屋いっぱいに広がる
そんな時、間の悪い男がやってきた
「ピンポーン」
『おーい、居るか?』
『詩帆戟…』
まるで親の仇を見るような目でインターホンに写った男を見つめる
一体なんの用事だろうか
どうせろくなことでは無い、居留守を使おうか悩んでいる時男は手に提げた紙袋の中身をインターホンのカメラに向かって見せつける
「ガチャ」
『お!居たのか』
ドアが半分ほど開き少女が顔だけをのぞかせる
『なに…?』
絵に描いたようなふてぶてしい態度
だが、陰キャの男にそれを読み取れというのは酷だろう
『話がある』
そう言って男は紙袋を突き出してくる
『お前、ガトーショコラ好きだっただろ?』
(覚えてたのか…
でも…)
少女の頭に幼き日の思い出が蘇る
『はぁ?別に好きじゃないし』
『嘘だな』
男は、見破ってやったぜといいたげな表情でこちらを見る
『あんた何言ってんの?』
『お前のガトーショコラへの思いはそんなものじゃなかった
そんなたった数年で変わるようなものじゃなかっただろ!』
『なっ、』
『俺は、お前のことを同類だと思ってる
昔も、今も!
お前も聞こえるんだろう?声が!!!』
少女はハッとしたような顔をする
(もしかしてこいつも…)
『俺も聞こえる
今だって聞こえる
お前はどうなんだ!?』
『な、何言って…!』
『また自分に嘘をつくのか?』
少女は、自分と男のスタイルを見比べる
愛に真摯に向き合い続けた男(デブな男)とそれを拒んだ女(スレンダーな女)
彼女の目にはそれ以外の情報は流れてこない
『俺は、シフォンケーキの声が聞こえてそれに応えた
お前も応えるべきなんじゃないのか!』
決定的だった
その言葉は彼女のこれまで踏みとどまってきた一線を超えるのに決定的すぎた
『き、聞こえる!
聞こえるわよ!
ガトーショコラの声が…』
『あぁ
知ってるさ』
『でも…
私…』
『大丈夫
受け入れるんだ
お前の愛は…』
男がまたもや痛い決めゼリフを言おうとした
だが…
(おいおい、俺抜きでハナシしてんじゃねえよ)
それはガトーショコラの声だった
『が、ガトーショコラくん…』
『これがガトーショコラの声…』
(緒恋良…
俺はお前が好きだっ
お前は俺の事どう思ってるんだ)
『わ、私もガトーショコラくんのこと好き…』
『なら…』
『あんたは黙ってて!』
詩帆戟は、理不尽だと思った
(緒恋良
もう一度言う
俺はお前が好きだ
俺はお前に俺だけを見ていて欲しい)
その言葉で少女の覚悟は決まった
ガトーショコラと一生添い遂げる
その覚悟だ
『私もガトーショコラくんのことが大好き
だから、つ、付き合って欲しい』
(わかった
お前の気持ち受け止めてやる
よろしくな)
そんなこんなで話はまとまり、少女は男の手にあった紙袋を奪い取り家の中に入っていってしまった
『取り残された…』
取り残されたのは男1人…
いや
(戟くんには私がいるじゃない♡)
そうだなと男は笑い帰路に着くのだった
後日、断片的に話を聞き良いように解釈した近隣住民により2人は付き合っているという噂がながれるのはまた別のお話
4話は、新キャラが2人出てくると思います。(予定)