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運命は僕に微笑む  作者: 安芸
第四章 赤い薔薇結びの祭り
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四 不器用なひと

 昔見たテレビで、飛行機の乗客に一本ずつ薔薇を預け、降りるときに、自分の婚約者に渡してもらい、最後の一本を自分が渡してプロポーズ、という実話がありました。もちろん、オーケー。いい話です。

       

 円形劇場の最終演目は舞踊であった。

 天候に恵まれたことと、演目内容が多岐に渡っていたこと、実力派が揃い踏みし、かつ、無料であったおかげで、客席は朝からずっと満席の状態である。

 宮廷舞姫として客演に呼ばれたルカは、満員の観客の前で見事に踊りきった。

 惜しみない拍手喝采、声援を浴び、深々と一礼する。

 名が叫ばれ、中には、愛の告白までするものがいる。

 熱烈な支持者がついていてくれることはありがたい――と胸を熱くさせてところで、声に聴き覚えのあるような気がする。

 よく聞くと、すごいことを言われているようだ。


「ルカー。好きですー。結婚してほしいですー。どうか僕の奥さんになってくださーい……」

 

 ふと顔を上げて、舞台正面奥の方に、知り合いの姿を見つけて固まった。

 ルカは、花道に設置された階段すら使わず、文字通り舞台を飛び降りて客席を突っ切った。


「あんた、なにやってるの」

「なにって、ルカの舞台を見に来たんだけど。あと求婚かなあ」

 

 へらっと笑ったのはスライエンだ。だが、


「だってあんた、今頃音楽堂で独唱があるはず――そろそろ出番でしょう!」

「走っていけば間に合うと思うけど」

「鈍足のくせになに言ってるのよっ。信じられない、もう。さっさと行きなさい!」

「え、だって返事をまだ――」

「いいから早く行きなさい!」

「ううう。また失敗か。なんでいつも怒られるかなあ……」

 

 ぶつぶつ泣き言を漏らすスライエンを劇場から叩き出して、ルカは自らの失態を悟った。

 恐る恐る振り返る。

 注視の的。

 そしてどっと弾ける笑い声。

 劇場が揺れた。

 やんやとからかわれ、詮索され、しばらくは噂の的になるに違いない。

 ルカはスライエンの浅慮をばかばかばかと滅茶苦茶に繰り返し罵りながらも、自分の出番が近いにもかかわらず、わざわざ足を運んでくれた気持ちは素直に嬉しいと思った。

 そこではたと気づき、慌てて楽屋に飛び込み着替える。

 急げばスライエンの出番に、最後の一曲くらいなら間に合うかもしれない。


 今回はちょっぴり短いですね。

 進展しづらい二人です。


 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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