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ダブり集

最後の一撃

作者: 神村 律子

 彼の命は尽きようとしていた。


 余命幾許もない。まだこれからという時。


 あまりに儚い一生。あまりに残酷な運命。


 短過ぎる。何も成し遂げてはいない。


 本当に終わってしまうのか? これでおしまいなのか?


 悲しいまでに潔い存在。狂おしい程美しい生き様。


 彼はそれでも力の限り生きる事を諦めていない。


 周囲が応援してくれる事もない。


 誰も助けてくれない。仲間は次々に倒れた。


 皆、命を散らした。彼より先に力尽きた。


 しかし彼は生きる。


 生きるのだ。生き延びるのだ。


 最後の抵抗になるかも知れない足掻き。


 彼は渾身の力を振り絞り、生への渇望を表現する。


 まだ俺は生きている。生きているんだ! 生きているぞ!


 死んではいない。死んではいない! 


 生きているんだ! 生きているんだぞ!


 大声で叫ぼうにも、すでにそれは叶わない。


 彼は声を出せない。そんな余力はすでにない。


 うおおおおっ! ぬおおおおっ!


 足掻く。足掻く、足掻く、足掻くっ!


 しかしそれも遂に終焉の時を迎える。


 ドスッ……。


 鈍い音がする。


 まさに最後の一撃。


 彼の命は尽きた。とうとう終わってしまったのだ。


 でも悔いはないだろう。


 彼は精一杯抵抗したのだから。


 死に対して。




 そして、無情な言葉が響く。


「はい、鯵の活け造りお待ち」

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ無情…(T_T) 鯵が食べられなくなりそうです…;; 嘘だけどw シュールな笑いをありがとうございました。
2011/04/15 22:31 退会済み
管理
[良い点] テンポが良く、オチもすとんと落ちていて面白かった。 いい意味で古典落語みたいな感じですね。 [一言] 面白かった分、鯵が食べにくくなりそうです(笑)。
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