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占い師 サーティーン 第35話

「さて、これぐらいでいいか」


「あなた…随分買うのね」


「まあな、長旅の予想だしな」


 俺は数分ぐらい迷いながら、たまたま立ち寄った占い屋で、旅に良さそうな道具を買い、そろそろ立ち去ろうと思っていた。


 しかし、本当にここは占い屋か、武器とか魔術書とか専門店よりあるぞ。


「気に入ってもらえて光栄ね、ちょくちょく新商品は入荷するから、暇だったら来なさい」


「そうするよ、おいクロリアそろそろ出るぞ、次は馬車を買わないといけないしな」


「すみませんこの本が良いところで、終わってからでいいですか」


「なに立ち読みしてるんだよ、まぁ気に入ったらな買っとくよ」


「はいはい、では本代も追加しておくわね」


 そう言いながらレシートに本代を追加する。


「あまり急がなくてもいいぞ」


「あ、わかりました、本進めてくださって、ありがとうございますタナトスさん」


 そう言えばあの怪物タナトスって名前なのか、死を司る神と同じ名前をつけるなんて、親はどんな神経をしているんだ。


 まず、あれの親は居るのか。


「それ、全部聞こえているのだけど」


「思っただけだ、と言うか君とアレの関係はなんなんだ」


「さあ、なんだったかしら、それよりここは占い屋よ、せめて帰るなら占って」


「そこの所はちゃんとしてるんだな、いくら取るんだ」


「初回様で沢山買ってくれたし、今回はタダでいいわ」


「タダにいいのか」


「タダという言葉に釣られやすい日本人、さて…」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


 プロトはポケットからタロットカードを取り出し、それをパチパチと激しい音が出るほど高速でシャッフルする。


 …いやシャッフルかあれ、なんか俺が知らないシャッフルの仕方、と言うかうるさいなこのシャッフル音。


「よいしょっと」


 バラァァァァアアア


 プロトは激しいシャッフルをやめて、近くにあるテーブルの上にカードを裏向き扇形に広げる。


「この21枚のカードから1つ選びなさい」


「タロット占いね、占う内容でカードの内容も変わるんじゃなかったか」


「よく知ってるわね、お客様が言う通り、占う内容で変わってくるわ」


「どんなのがあるんだ」


「禁断の恋や恋愛運、結婚運に仕事運、他にもパートナーの浮気願望とかね」


 そう言うとプロトの目がキラリと光った、浮気願望ってクロリアにあるわけないだろ、記憶喪失のやつが


 まず浮気どころか、好きって感情すら知らないぞあいつは。


「それは残念、私小説よりもキバみたいな昼ドラが好きなの」


「昼ドラ?何言ってんだ」


「こほん、で何で占うの」


「だったら仕事運か」


「そうね、占えたらね」


「は?」


「私タロット占い関しては齧った程度なの、まずやり方も間違えてるしね」


 だったらなんなんだよこれ、やり方間違ってるならやり直せよ。


 それに、齧った程度で普通占い屋開く気になるかよ、まずよくそれでやっていけると思ったな。


「文句はやめて、地味に傷つくの、さあ早く選びなさい」


「俺から見て1番左で」


「分かりました」


ペリ


 プロトは1番左のカードをめくる、そのカードにはボロボロな服で少ない荷物を持つ、崖の上にいる男と、その男に警告をつける犬と、真っ白な太陽が描かれていた。


 the foolと書かれているな。


  foolは馬鹿者、愚か者、あほ、まぬけ、って意味だよな、もしかしてこのカードってバカにする系のやつか。


「0番 愚者 ザフール の正位置ね」


「正位置?あ〜向きが変わると意味も変わるんだったか」


「心の底本能に従う事ね、あと本当の自分のスタート地点に立つ事ね」


「スタート地点?どう言う意味だ」


「それを言ったら意味ないんじゃない、自分で気づかないと

だって誰のためでもない、1度きりの人生なんだし、このカードもそれを意味している」


 人生相談が占いの醍醐味なんじゃないのか、まぁ別にこの子は適当にやってそうだし、深く考えなくてもいいか。


「少しは気に留めてなさいよ」


「気に留めると言ってもな、スタート地点ってどうせイリーザだろ、今頃戻るのもアレだしな」


「どう捉えるかはあなた次第よ、ねぇ春樹あなたが私の知ってる未来を変えれるか興味があるわ」


 何言ってんだこいつ。


「すみませんマックスさん、本が面白くて」


 プロトの不気味がっていると、本を読み終わったクロリアが俺の元に帰ってきた。


「ああ、別にいいよ」


「その本、お気に召したかしら」


「はい凄い面白いです」


「ふふ良かった良かった、もう用事はないのでしょう、だったら馬車でも買いに行くといい」


「そうするよ、行くぞクロリア」


「は、はい」


「良き旅を」


 俺は料金を払い、占い屋を去った。

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