龍に会う旅 第33話
「おぉ〜ここが、ダッシュで有名な商店街ですか」
クロリアは目をキラキラさせながら商店街を見渡す、俺の住んでいる国【ダッシュ・メテオライト】を
そのダッシュにある、王宮へと続く道にある有名な商店街、俺達はそこに買い物をしに来ていた。
クロリアを連れて行くつもりはなかったのだが、あのマグロ解体場みたいな俺の家に居るのか可哀想だったので連れてきた。
本人が喜んでるようでよかった。
「すごい、見たことない物ばかりです」
「そりゃ記憶消えてるからな」
「そうなんですけど、その…なんですかね、とても感動していると言いますか」
「感動ね…」
正直に言って、俺からしたら日常で当たり前の光景だから、感動もクソもないんだが、やっぱり初めて見たら感動する物なのかね。
俺もエルフの里行った時感動したし。
「ね、猫が立ってます、あれはなんなんですか!!」
そう言いながら二足歩行で服着て歩く1.5mの猫を腕を上下に振りながら指さす。
「猫族だな、人間の力を持つ猫だ、ほぼ魔物だが友好的だからこの街にいる」
「あの岩の集まりみたいな方は!!」
「それは石と一体化した猿が……」
「あの片腕が武器な方は!!」
「アーマドヒューマン、体の一部が武器で…」
「あの!!虹色に輝いてる人は!!!」
「アレは……なんだあいつ」
クロリアは楽しそうに跳ねながら人を指さす。
うーん、ここは注意するべきかな、でもなんか楽しそうだし、注意するのも少しな気がひけるな。
「本当にすごい景色、いろんな種族が当たり前のように共存している」
「そんなに珍しいかな」
「私種族に関してはギルドラさんに口頭で軽く教えられただけで、詳しくは聞いてないんです
だから、自分とは違う姿をしているのに、それを受け入れ一緒に暮らしてる、それがすごいと思ったんです」
「…そうか、確かによくよく考えたら変かもな、差別とかまだ起こってるけど、実際大きな争いは起きてないし」
「みんな平和が好きなんですよ」
「一理あるな、無駄に争い起こしても何にもならない」
「平和が一番ですよ
そう言えば、なんでしたっけ?明日行く【黄金龍帝】でしたっけ、そこはどんな場所なんですか」
話がいきなり変わったな。
「名前の通り、全てが金で出来た王国だよ」
「全て?あ、もしかして壁が金色なんですか、贅沢な国なんですね」
「そうだな、壁・床・地面に木に水、家畜に国民、ありとあらゆる物が金でできてる」
「…え?どういう事ですか、もしかして体が金でできてる種族とかですか?」
「いやそうじゃない」
これ…説明するのか、若干面倒くさいし長くなるし所々曖昧だから話したくなかったんだが仕方ない。
出来るだけ省略して話すか。
「とある所にだな、ミダス王…いやミダース王だったけ、まぁどっちでもいいか、そんな王様が居たんだと」
「そうなんですね」
「で、その王様のブドウ畑に、野山の神が酔っ払って来たことがあった、そして王様はその神を家まで送り届けた」
「神様…ですか?本当に居るんですね、私見た事ないですけど」
「いや、これただの神話だから、実際に居るかはわかってない」
「そうなんですね、本当に居るなら1度見てみたいです、ですけど神話とその【黄金龍帝】は何の関わりがあるんですか」
「大人しく話を聞いてればわかる」
「あ、すみませんお口チャックですね」
そう言うとクロリアは口を閉じ手を当て、喋らないようにした。
なんだろう…見た目の年代的に同い年だから、それなりにドギマギしてしまう、ただ年齢絶対に2倍以上離れてるからな。
そこら辺は頭の片隅にでも入れておこう。
「で、神は王の親切を大変嬉しく思い、お礼として王の願いをなんでも叶える、と約束した」
「な、なんでもですか」
「そう、で宝物や宝石とかが好きだった王は、神にこう頼んだそうだ『触れた物を金に変えてしまう力が欲しい』と」
強欲な王様だな、まぁ人助けするだけマシだろうし、世界征服、とか願われるより幾分かマシ。
しかし、なんでも願いを叶えるか…俺なら美味しい物を腹一杯になるまで食べたいかな?
…小さいな俺の願い。
「神は王の願いを叶え、王が言った能力を与えた、その能力が本当か試すために、適当に木に触れると、その木は金に変わった
王はその事に大変喜び、どんどん金に変えていった」
「触れた物を金にする…かなり強い能力ですね、マックスさんに比べると」
「ギグッ」
「それに、いくら助けてもらったお礼とは言え、神様はサービスしすぎじゃないですか」
「いや、俺の能力よりましたけど、弱いよこの能力は」
「どう言う事ですか、私には強い能力だと思いますけど」
「触れた物を金に変えるんだぞ、そんな状態でどう食事するんだ」
「あ」
「王はその能力のせいで食事が出来なくなった、ブドウに触れれば金になり、肉に触れば金になる
挙げ句の果てには水を飲もうにも、水が舌に触れた瞬間、その水はドロドロの金に変わる」
「自分の能力で自分の生活を脅かされる羽目になるなんて」
「もちろん、ベッドも金になるから固く眠れない、そうなれば好きだった金も自然に嫌いになる」
「で、その後はどうなったんです」
「国によって違うが…俺が知ってるのは、その能力が暴走して、自分の国全てが金に変わった」
「もしかしてその国が【黄金龍帝】ですか、その後は…」
「その後は、全てが金になった国で王が嘆き悲しんでいると、そこに神が現れたこう言う
『その力、消したいのならば、パクトーロス川に行け、その川なら力を飲み込んでくれるだろう』
神の指示通り王は川に行くと、王の能力が川に移ったとさ、ちゃんちゃん」
「なるほど」
さっきの話は全て神話、だが実際に黄金でできた国はあるし、パクトーロス川もある、神は信じてないが、神話に出た場所はある。
なんだったか、ノアの大洪水とかも実際にその大洪水が起きた跡も至る所にあるらしいしな。
「…で、その国で何をするんです、国の人も居ないのに……もしかして、その金を売るつもりですか」
「そうじゃねぇよ、そこに行く目的はお前の記憶だ」
「私の記憶?」
「この話は金色の国とか関係なく、重要なのはどんな願いも叶えられる存在が居ることだ」
「もしかしてその存在に私の記憶をですか」
「ああ」
「ですけど神話ですよね、作られた話……」
「俺も神は信じてない方だが、実際に黄金の国はあるしな、少なからず調べる価値はある」
「な、なるほど…」
正直なところ、その情報が手に入るかどうか、怪しいところだ、だが今はやる事もなければ、依頼もない、時間だけが無駄にある。
なら無駄にある時間を使って、無駄に時間のかかる調査をした方がいい。
それに前々から気になってたし。
「……あれ?クロリア」
俺が少し考えながら歩いていたからか、俺の横に居たクロリアがいつの間にか居なくなっていた。
「あいつどこ行った、少し目を離した間にどこかに行きやがって」
まるで子供みたいだな。
俺も子供の時も親はこんな感じだったんかね、そう言えば子供の時って、どんな感じだったけ、よく思い出せないな。
子供の時の記憶ってそんな物か。
「クロリア、どこだ」
俺はクロリアの名前を呼びながら、探していると、思ったよりも近くに居た、なんなら5mぐらいの距離に居た。
「あ、すみません、少し気になった店があって…」
「別にいいけど気になった店?」
「はいここなんですけど…」
占い屋…サーティーン……
店の外観は占い屋、と言うよりも質屋のような感じだ、そしてその店の窓から謎の煙が上がってる。
しかし…こんな店あったか、俺もこの商店街はよく使うけど、こんな店あった記憶がない、もしかして新しくオープンしたのかな。
「気になるなら入ろうか」
「え?いいんですか」
「時間はあるし、新しくオープンしたなら、お金落としてあげないとな」
「ありがとうございます、私のわがままに」
「そう言うのいいって、もう仲間なんだしさ」
「仲間…」
「さ、とっとと入るぞ」




