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旅は下準備が2番目に楽しい 第32話

  〈〈ギルド管理局〉〉


「なるほど、ギルドイリーザを離れ、独自のギルドを作りたいと」


「そうなんだけどさ、俺書類の作り方とか、詳しく知らないしさ、少し教えてくれない、これあげるから」


 俺はお土産に貰ってきた、エルフ里の仮面を机の上に置く。


 それを若干興味ありそうな表情をさせながら、カノンさんは目の前の書類をまとめる。


 あの熱い握手の後、正式にクロリアが仲間に加わったが…俺が所属していたギルドを追い出された事もあり


 現在無所属の俺は仲間が増えたとか、それどころの騒ぎじゃなかった。


「あ、あのですね、ギルドは会社みたいなものなんですよ、マックスさんが言ってる事は会社建てたい、と言ってるようなもので…」


「それはわかってる、だから聞きにきたんだ、だってギルドに所属してなかったら、依頼を受けづらい所あるじゃん」


「それは…まぁ、たしかにありますね、なら他のギルドに所属するのはダメなんですか」 


「いや、できる限り自由にやらせた方が伸びるかなって……」


「先生みたいなこと言ってる、そんなに気に入ったんですか、記憶喪失のエルフが」


「そうだな、あいつの仲間に認められる力を手に入れる、その目的を手伝いたいしな」


「マックスさん…」


「……あと所属しちゃうと5人ぐらい新キャラ追加+それの話を進めないといけないのが、めんどくさいとか……」


「…な、なるほど」


 そう苦笑いを浮かべ、一呼吸した後に口を開いた。


「マックスさんならギルドを作れると思いますけど……ただ今はちょっと……」


「何かあるんですか」


「エルフの里関連の書類が終わってなくてですね…大変なんですよ」


「そんなに大変なら手伝おうか」


「いや、信頼できないんでいいです」


「そ、そう…なんかごめんね」


「あ、別にマックスさんか信頼できない、って話じゃないですよ、実力は理解してます

ただ…単純に他の人に仕事を任せられないんですよ、自分でやった方が安心できると言いますか……」


 前々から思ってたけど、カノンさんって職人肌だよな、正確に言うと職人肌と言うより社畜肌かな。


 いつも仕事してるし、休日にすら勝手に仕事してるとか聞いたことがあるし……大丈夫か。


「なのでギルドを作りたいなら、1ヶ月ぐらい待ってくれませんか」


「え?そんなに時間がかかるの」


「仕方ないですよ、忙しいんですから」


 まぁ、文句は言えないか、普通に忙しそうだし、しかし…1ヶ月も待つのか。


「別に所属してなくても依頼は受けれますから、そこまで無理にギルドを作ろうとしなくとも」


「だけど、受けれる依頼は小さいし、受けれない日があるだろ」


「そうですけど…あの…別にエックスさんとは仲悪いわけじゃないんですよね」


※エックス、ギルドイリーザのリーダー事、本名ではない。


 リーダーと俺の仲か…別にそこまで悪いと思った事はない、クビにされたけど、それとこれとは別の話だし。


 まず、クビの件に関しては、俺の実力不足だし、仲に関しては問題はないはずだ、仲が悪かったら一緒に話してない。


「そうだと思うよ、リーダーも『死んでも良いなら再雇用しようか』って言ってたし」


「なら、エックスさんの下請けギルド、なんて手もありますよ」


 下請け…なんかまるで工事現場みたいだな。


「正確には派生、いや傘下いや…支配下と言いますかね、そんな感じのギルドを作るなら、以外と簡単ですよ」


「そう…なの?」


「はい、用は別部隊を作るみたいなものですから、エックスさんの許可さえ有れば、結構簡単に作れますよ」


「リーダーの許可か…」


 確かリーダーは今魔王の調査を単独で行ってるんだったか、と言うかリーダーが不在って大丈夫なのか、それにどっちにしろ数日はかかるのか。


 クビになってイリーザを離れたのに、結局イリーザの傘下かよ。

 別にいいけど……


「そう言えば聞くのもアレですけど、旅行どうでしたか」


「本当にアレだね、いや旅行もクソもないよ、だって崩壊したし」


「そうですよね、私個人的に臓器移植が気になってるんですけど、どうだったんです」


 凄い子供のようなキラキラした目で俺を見るな、まぁ気持ちはわからなくもないが…正直に言ってあまり覚えてない。


 と言うか人の臓器なんて見てて楽しいものじゃないし、グロい…だから目を瞑って記憶削除に集中してた。


 まず、途中で気絶したからな。


「で、なんで移植になったんですか、聞いた話によると、最初は木が突き刺さっていて、抜くだけだったとか」


「あ〜それは…確かな、デストサイトが現れた事で刺さって木が肺にくいこんだから、移植しないとダメになったんだ」


「土壇場でよくやりすね、もしかしなくてもそのお医者様、この世界で1番の技術者だったんじゃ…」


「まぁ、そうだろうね」


「あのマックスさん、サインとか持ってたりしないんですか」


「あ…貰ってない」


「なんでぇですか」


 なんでと言われてもな、正直に言ってサインとか貰ってどうするよ、高値で売れるわけでもないし、後世に残るわけでもないし。


 それに…またいつか会うんだし、貰うならその時にでも貰えばいい。


「そう言えばだけどさ、カノンさん…2回目だけどさ、ちょっと家に泊めてもらえません」


「別にいいですけど」


「やっぱりダメですよね……ってえ!?いいんだ」


「まぁ、私この1週間は仕事三昧で家に帰れないですし、盗んだ形跡があれば通報するだけですから」


「あ、そう言う感じですか」


「所で…なんで自分の家じゃないんです」


「それには2つ深い理由がありまして……」


「2つもあるんですか」


「はい、1つ目はベッドを今クロリアが使ってる事

2つ目が想像以上に荒れてるんですよ、収納魔法(アナザースペース)の出入り口だったせいで」


「あ〜あ…なるほど」


「床に眠ろうとしても、眠るスペースかないほど荒れてる

そのせいで椅子の上でしか眠れてない、もう体がバキバキなんですよ」


「それに関しては自分で掃除してくださいよ、今どの業界も忙しいですから」


「わかってるんだけどさ、地震でも起きたのかってぐらい荒れてる、もう帰ってきた時驚いたね」


「そんなに酷いんですか」


「うん、酷いったらありゃしない」


 魚でも解体したんか、って思うぐらいの血が床と壁についてたし、服とかも何着かなくなってたし、なんならドア破壊されてたからな。


 その辺の修理代とかは後々出るって連絡きたけど、出るの凄い後になりそうだな、と言うかなんでドア破壊した。


 服に関しては、血の止血に使用した、と言われたけど、ドアに関しては破壊しなくてもよかっただろ。


「大変なんですね、と言うかベッドを買えばいいんじゃないんですか」


「そう言えば…そうだな、買えばいいのか」


「しっかりしてくださいよ」


 これを気に足りない物を色々買っておくか、服も足りなくなったし、食材とかも買っておくか。


「ありがとう、今やることが決まったよ」


「それはよかったです、そう言えばこの先どうするんですか」


「この先?」


「一応依頼は受けれますよ、その…クロリアさんでしたっけ、彼女の特訓をするのか、それとも実戦で鍛えるのか」


「いや、少し黄金龍帝を調べようと思う」


 黄金龍帝、なんか生物の二つ名にも見えなくないが国?の名前だ、いや…人が住んでないから国だった物、と言った方がいいか


 昔は人が住んでいたとされるが、突然国民全てが金に変わり、今では生物が住めないと言われている国。


 気になってはいたが、遠いから行っていなかった。


「え?あそこをですか」


「クロリアの記憶を取り戻す手がかりがあるかもしれないからな、ちょっと行こうと思う」


「あそこ結構遠いですよね、そこ行きの馬車も出ないですし」


「だから馬車買おうかなって、それなりの長旅を想定して、この数日で色々買っておこうかと」


「長旅ですか、マックスさんは始めてですよね、そう言うの」


「まあ…そうだな」


「マックスさんなら…大丈夫だと思いますけど、気をつけてくださいね、長旅は何が起こるかわかりませんから」


「ああ、十分に気をつけるつもりだよ、今日はその報告をちょっとな、帰ってこなかった時の保険と言うか…」


「突然行方不明になられても困るだですからね、そう報告してくれるだけでも嬉しいですよ、この街行方不者多いですから」


「謎にな」


 聞くことも聞いたし、そろそろ帰るか、普通に忙しそうだし、これ以上邪魔しちゃ悪いな、うん…帰るか。


「じゃあ俺帰るは、忙しいのにごめんな」


「いいですよ、人と話すこと好きですし、しかし…長旅ですか、頼みたい事があったんですけど、別の機会にでも」


「ああ、そうしてくれ、その…時間使わせて悪かった、頑張ってくれよ」


 俺はそう言いギルド管理局を出た。

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