そうだ旅行に行こう 第2話
〈〈ギルド管理局〉〉
クビになった俺は、とりあえず1人でもできる依頼を探すため、ギルド管理局に足を踏み入れた。
「こい!!俺は賭けるぜ」
「いいのか、俺の手札はロイヤルストレートフラッシュ、かもしれないぜ」
「そんかハッタリ聞くかよ、俺は昨日の稼ぎ全額賭けてやる」
まだ日が登ったばかりの早朝だと言うのに、ギルド管理局には酒を飲んで酔っ払っている輩が20人ぐらい居た。
中には賭けポーカーで全額賭けてる奴もいる。
気のせいか、あいつ3日前も全額かけて負けてた気がするんだが…
「さあ!!こい、俺の手札はA3枚のスリーカードだ」
「悪いな、フルハウスだ、お前の稼ぎ全額もらい」
「あ"あ"あ"ア"ア"ア"!!!」
ほら負けた、と言うかここで賭けポーカーするなよ。
ギルド管理局、酒とか食べ物とか売ってるが、一応国が経営している施設なんだけどな、そんな所で普通賭け事するか。
まぁ、別に俺には関係ないからいいけど、それに俺は依頼を受けにきたんだ、食事をしにきたわけじゃない。
「クソがァァ!!俺の金が!!」
「ただのスリーカードで全額賭けるからだぜ、うほぉお、マジで大量」
「あぁぁぁぁ(涙目)」
「いい大人が泣くなよ、あ、よう!マックス、エックスは一緒じゃないのか」
「俺とあいつはコンビじゃない、と言うか朝っぱらから酒を飲むな、酒臭え」
「お前も飲まなぇか、丁度ザルから奪い取ったからな」
「今日はいい」
俺は雑に絡んできた酔っ払いを交わしながら、受付エリアまで歩く。
この世界には魔物と言う、魔力を基礎に生きている生命体がいる、その生命体を倒すのが俺達の仕事。
元々魔物は数が少なく珍しい存在だったらしいが
突如この世界に6体の魔王が現れてから、その常識が変わり。
元々いた魔物の数が増加した、その影響でその魔物を倒す仕事が増え、今やそれが当たり前になってる。
「すごい時代になった物だ、昔は…昔は………ダメだなこりゃ、昔のことが思い出せない、老化進んでるのかな…
最近、腰も痛くなってきたし、耳が遠くなってきたしな、もうそろそろ引退でも考えるか」
こんな独り言も周りが騒がしいからか、自分の声が小さく聞こえる、とりあえず受付嬢のカノンさんの元に行くか。
「おはようカノンさん」
「あ、おはようございますマックスさん」
そう言いながら俺に爽やかな挨拶をくれるのは、受付嬢のカノンさんだ。
かなり明るい性格で、緑の髪色をする自然系の女性、少し天然ぽい所もあるけど、仕事も真面目にこなすらしく、スーパーエリート
俺の予想だと、多分いつかは偉い人になると思う、俺とは違ってね。
「今日は…皆さんは一緒じゃないんですね」
「あ〜ちょっとクビになってね、パーティーから追放された」
そう言うと、カノンさんは少し驚いたような表情を一瞬見せた。
「え?追い出されたんですか、マックスさんほどの実力者を」
「…まぁ…そうだね、やっぱりZランクの依頼は俺には早かったらしい」
「Zランクなんて龍と戦えるぐらいの実力ですよ、逆にそんなパーティーに4年間も入れただけでもすごいですよ」
「そうかね」
「そうですよ、普通はSがいい所ですよ」
あまりランクにはこだわらないが、周りから見れば凄い存在なんだろうな、ランクだけ見れば。
「あ、ところでカノンさん…1日だけでも泊めてくれない、俺の住んでた所あいつらの私有地で追い出されてさ」
「マックスさん…家ありませんでしたか?」
「あるはあるけどさ、元々の家は埃まみれで、掃除は時間かかるからさ」
「家に泊まるとかは別料金なので…」
別料金払えばいけるよかよ。
別に払う気ないけど。
「流石にあの埃まみれのベッド眠ったら病気になりそうだし、あとGが出そう」
「それは困りましたね、ですけどムーンさん普通にお金ありますよね、高級な装備を買ったりしてないみたいですし」
「いや…あるけどね、宿に泊まるとなると高いし、ずっとは居られないだろ」
「なんか…よくわかりませんけど……」
「なんでわからないんだよ」
宿に泊まるか、それもいいけど、なんか違うんだよな。
それにいずれは掃除しないといけないけど、掃除嫌いなんだよ。
「あの、お金があるなら、一度旅行に行ってみたらどうです」
「旅行?」
「一度モンスターの事を忘れて、ゆっくり観光でもなさったらどうです
ここ最近…マックスさん魔術を覚えるのを頑張ってましたし、そのご褒美も兼ねて」
「旅行か……一緒に行く」
「お断りします、普通に仕事があるので」
「はいはい、旅行か…どうせなら一二個ぐらい依頼をした方がいいかな、カノンさん旅行のついでになる都合の良い依頼ってある」
「旅行に行くならゆっくり休んでくださいよ」
「いやいや、疲れた後に入る温泉と料理が最高なんだよ」
「それはわかる気がします、旅行ついでの依頼なら…森林調査系の依頼がいいんじゃないんですか、今だと…」
カノンさんはそう言うと机の下に潜り、数枚の依頼書を取り出し、机の上に置いた。
いつもながら色んな依頼があるな、どうせなら…行ったことのない場所に行きたいな……
「…そう言えば、エルフの里に行ったことなかったな」
「エルフの里…ですか、エルフは自然の化身とも呼ばれる種族ですよね、私もちょくちょく見ますよ
基本的に温厚ですけど、掟を破ると怖いとか、行くなら気をつけた方がいいですよ」
「俺がルールを破るやつだと思う」
「思いませんよ、ここは気分転換の旅行をにはいい場所だと思いますよ
一緒に行きたいところですけど、私はマックスさんがお楽しみしている間に、マックスさんの家に清掃員の人を派遣しときますよ」
ほら…やっぱり有能、彼女には俺みたいに追放されるような未来じゃなく、いい未来を歩んで欲しい物だ。
「さて…荷物は豚の骨付きばら肉に取られたし、準備もいらないか」
「…豚の骨付きばら肉?あぁ〜もしかして、スペアさんですか」
「あいつに部屋の物取られちゃってさ」
「もしかしてクビになったのスペアさんの嫌がらせですか」
「確信はないけど多分」
「あの性格を直すためにイリーザに入れられたのに、より性格が悪くなってる気がします」
「できれば別のギルドに引き取って欲しかった」
「エックスさんにも考えがあるんですよ、所で…部屋の物が取られたって大丈夫なんですか」
「別に収納魔法である程度の物は持ってるから、問題はないけど」
「そう…なんですね、ですけど部屋の物取られるなんて不幸ですね、やっぱり一度リラックスが必要かと」
「うん、ちょっとリラックスしてくるよ」
俺は大きく伸びをすると、色々な手続きを終わらせギルド管理局を出て、馬車広場に向かい、エルフの里行きの馬車に乗り込む。
そう言えば俺、移動用の馬車を買おうとしてた時期あったな、結局買わずに終わったけど、買っておいた方がよかったかな。
…いや、ダメだ馬小屋無い、馬は諦めて馬車で我慢しよう。
第2話、どうでしたでしょうか。
今のところ21話のストックがあるんですが、一気に投稿するとヤバいので、ちょくちょく小出しにしていこうかと思います。




