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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第五十六話 いざ、夏の海へ

 無駄遣い、衝動買い、豪遊。多々あって、我が家の資産はかな~り減っていた。

 大火に包まれたタチバナハウスのリフォームに九十万ターラ掛かったわけだが、これは、まぁ払える。

 国選大工という肩書き。9LDK+Sという豪華な邸宅。そのリフォームでこの金額なら……安いのだろうか。分からない。だが予測の範囲内ではあった。ただ……今後の生活は地に足付けていきたいなと思いました。


 本当かどうか知らないけど、出自が貧乏だと、大人になった時に金遣いが荒くなるという。エルフのラクリマを交換する条件として稼いだ四千万ターラは、大豪遊を重ねるうちに蕩尽していった。分かりやすく地球のレートで換算すると、十億円以上あった総資産が、今は一億円ほどしかないのだ。

 人が生涯、生まれてから死ぬまでに必要とする額は数億円という話を聞いた事がある。生活費の他、学費、結婚、住宅の購入、子育て、親の介護……エトセトラ。人生には数多のイベントが付き物であり、金が掛かる。

 正直、今の俺の貯金では、少し雲行きが怪しくなったのだ。

 異世界という謎多き土俵で、俺はどれだけの金が必要なのか、その相場を理解できていない。

 それに、うちにはよく食べるドラゴン娘が居る。なんたって、食べ盛りだ。子供が三人は居ると仮定した方がいい……。


 それと、忘れてはいけないのが、ラクリマ捜索だ。俺の真の目的はこの体を元に戻す事であって、その為の手段、生活の安定の為にフェイバリットチキンの販売サービス・展開がある。目的と手段を履き違えてはならない。俺は店をまたラフィリアやアネシスに任せ、ラクリマ捜索を再開する事にした。


 数日前にサモと話した際、魚人がラクリマを持っているという事が新たに判明した。色々な文献を(パンイチで)漁っていた男だ。その知見には目を見張るものがある。

 次の行き先は海だが、アサーガに海はない。ただし以前フィガの町を訪れた時、名所として海がある事は確認済みだ。なので、今日は一先ずそこへ行ってみようと思う。


「ヴィータ、夜には帰ってくるつもりだから、皆によろしく」


「いってらっしゃいですー。あ、お土産は海の幸が良いです」


 俺はヴィータに別れを告げると旅立った。前回の火事以降、ヴィータが少し大人になった気がするのだ。「こうすれば、こうなるだろう」という予測をしてからの実行。あと、言動に他者への気遣いを感じる。……ちょっとだけだが。

 彼女は過去の失敗を教訓に、日々邁進しているのだろう。そんな様相が態度から見て取れる。家の事はある程度、任せても大丈夫だと俺は思っている。

 タチバナハウスを出立した俺は、アサーガから電車に乗り込み、西へ。目指すはフィガの海だ。


 暫くしてフィガの駅に付くと、色黒の中年男性が出迎えてくれた。サモである。平常通り、パンイチだ。時期は夏だからそんなに違和感はないのだが、駅員が緑の窓口から凝視していた。


「タチバナサン、遅いすよ。待ち合わせ時間、五分も過ぎてる!」


「あれ、そうだった?」


 俺にとっては五分くらいは誤差なのだが……。急に便意を催したので、一本後の電車に乗ったのは内緒だ。電車が遅延した事にしよう。

 適当にあしらった俺はサモに本日のプランを聞いた。サモはフィガの町に滞在している。俺よりも詳しいし、今回は頼り甲斐があるというもの。


「アロファーガは大陸す。海に囲まれてて、この町はフィガ海に面してるす」


 フィガ海か。瀬戸内海とか地中海とか、そんな感じだろうか。

 俺はふーん、と鼻で返事をした。


 元々この世界の海に関しては考察していた事がある。どうやら地球同様、大陸を海に囲まれているようである。フェイチキ販売で空路を思いついた時、海路も当然視野に入れていた。だが、ハーピィ個人で空輸するのと比べて、船では配達に時間が掛かってしまう。そうすれば、折角の揚げたてのフェイチキも冷めてしまう。なので、当初の想定では船乗りや港町、湾岸部分の人達に食べてもらえれば及第点であった。それ故、フィガの町に二号店を進出できたのは僥倖と言えよう。

 海の種族がラクリマを持っているという予測も、勿論推測はしていた。


「海に居るのは魚人。主に、マーマンす。マーマンが男、マーメイドは女す」


「えっ、女の魚人も居るの?」


「? そうすね。おとぎ話で出てくる人魚なんかは、マーメイド。つまり女の魚人す」


 そう聞いて俺は想像力を働かせる。知恵袋とかペディアとかで調べてはいたが、そうか……そうだよな。

 魚人、つまり人外だ。女の魚人って事は人外娘だな。是非見てみたい。下半身はやはり魚なのだろうか。どんな形、してはるんやろ?

 魚の場合は体外受精と言って、基本的に生殖器のようなものはない。サメは違った覚えがあるが、魚人は一体どうなっているのだろう。半分は人間だから……おっと、いかんいかん。

 しかし、俄然やる気が出てきたな。よし、先を急ぐぞ。


「タチバナサン、走ると危ないすよ!」


 俺の後を慌ててサモが追ってくる。バカ野郎、一刻も早く呪いを解きたいのは俺もサモも一緒だ。時は有限。ゆっくりなんてしていられるか。

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