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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第四十七話 有頂天

 ――宝くじが当たったら、どうしますか。そんな質問をよく耳にするが、大抵の場合は皆、こう思うのだ。――当たりっこない、ってね。

 だが、本当に当たったらどうするだろうか。俺はその回答を持っていなかった。何故なら宝くじで数億円が当たるのは、飛行機が落ちる確率ぐらい低いからだ。その確率、十万分の一以下とされている。

 俺は真の意味での、質問の本質を理解していなかった。当たったらどうするべきか。

 用意周到に計画を練っておくのだ。準備が出来ていなければ、誤った選択をしてしまう可能性がある。それはとても勿体無い事だ。つまり、この問いに対する回答を持っておく事で、当選後のバラ色の人生、その初速が決まる。スタートダッシュを決めて、順風満帆に、残りの人生を謳歌するべきだ。


「あー、外れたか! もっかい!」


「あの、大丈夫ですか。……もう、二百枚目ですけど」


 販売員が心配そうに尋ねる。既に二百枚も擦ってしまったようだ。一枚で五ターラだから、千ターラの損失である。

 俺は今、アサーガの宝くじ売り場に居る。目的は情報収集だ。……この宝くじ売り場が気になったのと、ラクリマについての情報を得る為、宝くじを引いている。大丈夫だ、問題ない。金ならある。


 正直に言う。浮かれるな、なんて無理だ。

 大量の金が手に入ったら、人はどうなるか。答えは“浮かれる”だ。当たってはいないが、当選金額並みの資産を持つ俺が言うんだから間違いない。そもそも文句があるなら当ててから言ってほしいものだ。君に当てられるか? え? どうなんだ?


 ちなみに販売員の女性に「グランド・ラクリマってご存じですか」って聞いたら「知りません」との事だ。

 ……ふぅ、このあたりにして、次の情報収集へと向かうか。


 宝くじには当たらなかったが、既に当たっているようなものだ。高々千ターラぐらい……今日一日で、凄い金額を既に使っている気がしなくもないが、日本のことわざには、こんな言葉がある――案ずるより産むが易し。


「さて、人が集まる所と言えば……おや、あれは」


 歩いていて、ふと喫茶店の店内を見やった。ガラス越しだが、知っている人物が中に居たのだ。

 金髪のショートカットに緑を基調とした服装。それから抱き締めたくなるような華奢な体のエロ……エルフ。そう、ラフィリアだ。

 しかし、シックスセンスという奴だろうか。俺が下卑た笑みを浮かべて眺めていると、彼女はこちらに気付いたようである。振り返って「ヒィ!」という短い悲鳴を上げた。


「奇遇だな」


「な、なによ! 気持ち悪いわね!」


 バレてしまっては仕方ない。俺は店内に足を踏み入れ、ラフィリアに話しかけた。

 ここは確か……エクセリオンカフェだったか。前に一度来た事がある。料金設定も高めだったような。

 まぁ、今の俺には安すぎるくらいだけどな。


「偶然を装って、アタシに何の用?」


「いや、偶然なんだけど……そうだ、何か奢るよ」


 何故だろう。何故だか分からないが、今日は気分が良い。高揚しっぱなしだ。警戒心を中々解かない貧民のエルフに、この俺が何かを恵んであげようじゃないか。

 というのは冗談で、日頃フェイチキ販売の売り子をしてくれている。御礼をしたいと思った。


「えー……怪しい。気持ち悪いわね。でも、じゃあ、どうしようかな」


 ラフィリアはテーブルの上のメニューに視線を落とした。うーん、と唸り、睨めっこ状態となっている。どことなく嬉しそうであり、少女然とした表情に俺は思わず唾を飲んだ。窓から差し込む光を反射して輝く金髪。見入ってしまう。

 俺には見える。ラフィリアの好感度ゲージがぐーんと上昇していく様が。これは奢る甲斐があるというもの。ただ、会話する度に気持ち悪いと言うのはやめるんだ。外見の事もあって、地味に傷つくからな。


 彼女は今テーブルに両肘を乗せているのだが、そうすると胸のラインが強調されて……季節は夏。少しはだけたシャツの襟元から小さなヨシモト∞(無限大)ホールが見えそうだ。小さいのに無限大とはこれ如何に。いや、可能性的な意味で言えば、そりゃあ無限大ですけども。


「何見ているのよ……まぁいいわ。じゃあ、このコール・オブ・ザ・マウンテンで」


 本当かどうか分からないが、女子は案外視線に気付いているという噂もある。俺も最初、そんなバカな、と思った。だが、状況を鑑みるとあながち嘘ではないのかもしれない。まぁ、エルフだし、感覚は鋭いのかな。

 俺が店内を見渡すと、店員の女の子と目が合う。すぐに注文を伺いに来てくれたので、俺の分も含めて早速注文していく。どうやらラフィリアが頼んだのは巨大パフェのようだ。SNSに写真をアップすれば、皆がいいねしてくれるだろう。


「このコール・オブ・ザ・マウンテンとアイス宇治抹茶ラテ、ホイップクリーム付きで」


「ご注文は以上でよろしいですか?」


「うん。あ、あと、これ。チップあげる」


 俺は財布から数枚のターラを取り出すと、女性店員に手渡した。一度やってみたかったんだよね。

 受け取った女性は目を丸くし、驚いているようだった。困惑した素振りも見せていたが、御礼を述べると足早に店の奥へと消えていった。

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