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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第四十五話 光明

 久々に熟睡できた気がする。目を覚ますと、午前八時だった。平時だったら起床時間はとうに過ぎている。今日はフェイチキ販売は休みであり、それに深夜までサモと話し合っていたから、これでも早起きなのだ。決して惰眠を貪っていたわけではない。睡眠時間は六時間。時は有限。無駄にせず、大事に使っていきたい。もう一眠りしても良いのだが……迷っていた折、腹の虫が鳴る。


「うーん、起きるか」


 洗面所で顔を洗い、それからリビングに行く。俺はまずキッチンに向かい、吊るしてあった一房のバナナから、一本だけを千切り取った。

 ちなみにサモの姿はない。始発の電車でフィガの町に帰ると聞いているので、朝一番で帰ったようだ。


 快眠だったのは、きっと心の憂いがなくなったからだろう。金もある。安定した収入源もある。そしてラクリマも二つ。皮算用ではあるが、二十五パーセント以上のラクリマが揃った事になる。俺はバナナを齧りながら、昨日サモと話し合った内容を思い出す。激しい討論が、走馬灯のように思い出される。――サモ、なんでパンイチなの? ――タチバナサン、呪いって言ったすよ? ――ちょっと脱いでみてよ、ほら、ほら! ――タチバナサン、だめよ! サモ死んじゃう! 呪いホント!


 開始直後は良い意見交換だったと思う。大手企業では主流のブレインストーミングを踏襲し、他愛のない雑談も交えていた。

 だが、一時間が経過したあたりだろうか。二人とも酒を飲み始めたのが悪手だった。というのも、隣の部屋ではヴィータ、ラフィリア、アネシスの三人が女子会を開いていたらしく、楽しそうな笑い声が聞こえてくるのだ。

 壁から漏れてくる音は小さい。気にするな、立花仁……あの日、あのとき読んだ週刊少年ジャンプが俺にくれたものはなんだ。友情、努力、勝利。それだけではない。忍耐強さ、我慢する大切さを教えようとしてくれていたではないか!

 だが、ふと気づいたのだ。何で俺は歳も一回り、二回りくらい上のおっさんと、こんな夜更けまで語り合っているんだろう――。


 心の中の俺の天使は呆気なく、陥落してしまう。「サモ、酒飲まない?」。そう言ってからの迷走は早かった。“次のラクリマはどこにあるのか議論RTA”、最速記録が爆誕した瞬間だ。


 俺は酒の飲み方が分からない。だってまだ二十歳になったばかりで、友達と飲んだ事くらいしかないのだ。だる絡みをしてしまうかもしれないし、酒の勢いで相手を不快にさせてしまうかもしれない。そんな、サモからしたらクソガキの俺に絡まれて、サモは心底迷惑そうだったな……。

 アロファーガ産のチューハイと思しき〈ストロンゲストゼロ〉を三杯飲んだあたりから記憶がない。サモはウィスキーをロックで飲んでいた。

 ちなみに氷は冷凍庫にあるものを使った。一応軒先で飲食系の店舗を運営しているのだ。クラッシュアイスもあれば、イカしたグラスだってある。


 話が逸れた。ラクリマについて昨晩、サモと情報交換をしたのだが、議論は深夜二時近くまで続いた。


 大昔、勇者が族長に託した秘宝、グランド・ラクリマ。その有力な情報がサモから得られた。

 俺の見立てでは、託されるには最低限、話が通じる種族だと思っていた。つまり人語を介する人外達であり、知能がある。これに関して、サモの見解も一致している。

 判明している種族は獣人、竜人、有翼人、エルフの四種族。有翼人とエルフからは入手済みだ。

 どうやら、その他に魚人族もラクリマを持っているらしい。次の行き先は……海という事だな。


 ババ様曰く、竜人、すなわちドラゴニュートも持っているらしい。だが、これは後回しでも良いと考えていた。

 大きないびきを立てて寝ている竜人を俺は知っている。昨夜の女子会ではしゃぎ過ぎて、疲れたのだろう。いつもよりお寝坊だ。

 二つ目のラクリマをゲットして有頂天になっているのは、どうやら俺だけではないって事だな。

 さておき、同じ竜人族なのだから、彼女から手掛かりが得られる公算は高い。


 残る二つの種族に関してだが、勇者側の勢力に加担している種族と考えると、魔族は違うと思われる。この世界にも、鬼や悪魔、魔王といった種族が存在し、彼らは人間に害を為す勢力らしい。

 サモが言うには、魔族の最上位に位置する輩、“魔王種”には気を付けろ、との事だ。確認されているだけでも三体、アスタロト、ルシファー、ベルゼビュートなど……殺戮を繰り返し、単騎で国一つを落とせると噂される程、超常的な存在だ。出会って基本は即死、逃げられればラッキー、らしい。

 まぁ、そんなヤバイ奴等に出会う事もないだろうけど。


 そういった危険因子が存在する為、ラクリマを託されているのは、強い種族なんじゃないかと思う。

 強い種族、強い種族……どいつが一番強いんだ?


「まるでどっかの戦闘民族みたいだ……」


 俺はそう呟きながら、バナナの皮を台所のゴミ箱に捨てた。

 それからオーブンでトーストを二枚焼いて、表面にマーガリン、いちごジャムを塗る。一枚はヴィータの分だ。腹ごしらえはこんなもんでいいだろう。

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