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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第四十三話 これから

 台所に飾られたラクリマは二つに増えていた。セイレーンのものと、エルフのもの。異世界生活から半年が経過したが、順調ではないだろうか。俺は帰ってくると、息巻いてヴィータにラクリマの件を話した。


 タチバナハウスの軒先では目下、フェイチキ販売が続いている。今日は早めに店仕舞いすると告知してある。直に仕事を終えたラフィリアがやってくるだろう。

 アネシスは非番なのだが、アサーガに戻る道中「大事な話がある」と電話をすると、夕方には顔を出す約束をしてくれた。今日はサモは来ていなかったが、電話したらフィガから来てくれるようだった。全員が揃ったら話すとしよう。


「タチバナ、終わったわよー」


「おお、ありがとう。お疲れさーん!」


 ふと気になった事がある。俺の携帯電話の電話帳には現在、数人のデータが登録されている。ババ様、和田君、ラフィリア、アネシス、それからサモ。

 携帯電話自体、そこまで高価なものではなく、一般家庭に普及していると言っていい。獣人達も利用しているらしい。便利だからね。

 ただ……サモが持っていると知った時、俺は驚いたんだよね。あのおっさん、パンツしか穿いてないでしょ。普段、パンツの中に入れているって事……?


 ポケットもないし、鞄も持っていないし。もし家に置きっぱなしだとしたら、それは最早『子機』だ。でも、外出先で電話を掛けているっぽいんだよなぁ……。


「お邪魔しまーす!」


 揚々と入ってきたのはアネシスだった。後はサモの到着を待つとしよう。

 ラフィリアとヴィータは、エルフのラクリマを見つけてはしゃいでいた。すごい、すごいと目を丸くするラフィリア。

 フッ……それ程でもある、かな。アネシスもラクリマを見やると興奮していた。、


「「イエーイ!」」


 アネシスがラフィリアとハイタッチを交わす。その尻尾はふりふりと左右に揺れていて、実に可愛らしい。

 この二人は最近、とても仲良くなったな……。女の子が増えて、人外娘が増えて……俺は嬉しくて泣きそうだ。

 色々あったけど、努力が報われたんだろうな。

 俺が感傷に浸っていると玄関のドアが再び開いた。現れたのはトランクス男、サモだ。


「遅くなったすよ。いやー、最近は肌寒くて、あっしには厳しい……皆サン、どうしたすか?」


 と、途端に静まり返る女子一同。一様にそそくさと着席を開始した。


 テンションの下がり具合が露骨過ぎる……。どうやらサモはあまり好かれていないらしい。まぁ……年齢と格好がね。でも、呪われているんだから仕方がない。


「皆、集まってくれてありがとう。大事な話ってのは、他でもない。……これだ」


 タチバナハウスのテーブルに集まったのはヴィータ、ラフィリア、アネシス、サモ……それから俺の五人だ。

 俺はラクリマをテーブルに置いて、全員を見た。皆、真剣に俺の話を聞いてくれていた。


「二つ目を無事、エルフの族長から譲り受けた。そこでイレギュラーが一つあったんだけど……交換条件の為に稼いだ五千万、なんと四千万以上余ってしまった」


「タチバナサン、どういう事すか?」


 眉根を寄せるサモ。他の皆も、理解出来ていないようだった。

 ラフィリアは動じていない。何となく察しているようである。


「エルフの族長が条件を変更してきたんだよ。やっぱり百二十万でいい、って」


「百二十万!? って事は……四千八百万ぐらい余ったって事!?」


 俺が説明したら、ラフィリアが驚きの声を上げた。俺は首肯すると、話を続ける。


「そう。本来ならエルフからラクリマをゲットした後、生活が困窮する筈だった。五千万ターラを失うわけだからね。フェイチキの販売も続けていかなきゃ、生活も出来なかっただろう。

 だけど、その必要がなくなった。つまり――」


「た、畳むの……?」


 ラフィリアが訝しげに尋ねる。


「いや、畳まない。店は続ける。でも、土日は休みにして、営業時間も短くする」


「あたし、クビになるかと思いましたよ」


 話を聞いていたアネシスが胸を撫で下ろした。俺は「まさか」と笑う。

 彼女は働く場所を探していた。急に解雇されれば困るだろう。

 それに……自分から雇っておいて用が済んだらクビだなんて、そんなのは身勝手だと俺は思う。今後、収入源はあった方がいいだろうし、フェイチキの販売は続けてもいいだろう。あくまでラクリマ探索を主眼に置いて、の話だけど。

 フィガの町の二号店は塚さんに完全に任せてしまってもいいかもな。


「四千万ターラは貯金する。何かあった時の為に。目的は達成できた訳だけど、これからも店は続けていくから。……話は以上。シフトの希望とかあれば、出しといてね」


 そう告げると、ラフィリア、アネシスが立ち上がる。ヴィータもお腹を空かせたようだ。話し合いは終了である。


「それじゃ、残りのラクリマ探索、油断せずに邁進していきますか――サモと俺は作戦会議だな」


「了解すよ」


 夕飯を作りながら俺とサモは居残り、どの種族がラクリマを持っているか、互いに意見を述べ合った。そうして夜は更けていき、日付が変わる頃にはお互い床へと就いた。帰る足がないとの事で、サモはこの日はタチバナハウスに泊っていく。

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