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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第四十二話 二つ目のラクリマをゲット

 俺はその日、エルフの村を訪れた。以前はラフィリアと一緒に来た。フォルジュの村だ。

 歩いていて、視線は感じない。この前訪れた時は、舐るような視線がまとわりついた。同時に、俺を軽蔑するかのようなエルフの顔もあった。だが、今日は感じない。


 一件の平屋の前まで来た俺は、深呼吸してインターホンを押す。家主に入るように言われ、俺は扉を開けた。


 中に入ると、エルフの族長……ラフィリアの祖父だったか。その人が鎮座してこちらを見据えていた。族長は俺を見ると「おめでとう」と開口一番に言った。俺は頭を下げて会釈する。どうやら、五千万ターラを集めたのは知っていたようだ。


「タチバナ君、わしは君を見くびっておった」


 手を叩いて、賞賛を送る族長。横で待機する眼鏡の秘書エルフも、同様に拍手を送った。


「皆のお陰ですよ。ラフィリアにも、助けられてますし」


「ホホッ……地球出身じゃったな。元居た世界の額だとおよそ二十二億円、じゃったかの?」


「ええ、そうですね。五千万円だと思ってたら、五千万ターラで。……集めるのに苦労しましたよ」


 でも集めました、と俺は付け加える。やり切った。到底不可能な大金を、僅か半年で集めて見せた。胸を張っていい事だ。


「……はて、五千万円は、ターラだと幾らじゃ」


「はっ、約百十三万、六千四百ターラですね」


 族長は何やら秘書とひそひそと話し合っていた。円とターラの計算をしているようだ。

 秘書は電卓も用いずに暗算をしてみせる。族長はこちらに向き直ると、口を開いた。


「タチバナ君、取引条件を変更じゃ」


「なんですと?」


「百二十万ターラでよい」


「……は?」


 えーと、つまり、まけてくれるって事か。急にどうした。訳が分からない。一体どういう事だってばよ。

 混乱する俺を他所に、族長はゆっくりと続けた。


「稼いだ額は君が努力し、足掻き、得たものじゃ。それを頂戴するわけにはいかん。それに思ったのじゃ」


 孫娘が真面目に働く姿を見て、エルフは変わらねばなるまいと――と、語気を弱めて族長は語る。


 孫娘、つまりラフィリアは人間の事が嫌いではなかった。だから一族の間では変わり者だ、と爪弾きにされていたようだった。俺は族長から聞き、初めて知った。

 エルフの借金の成り立ちは、俺も知っていた。働いて金を得るのもバカらしい。放っておけばいい事を、相手にしなければいい事を看過できず、一歩下がらず、エルフは好き勝手に生きてきたからだ。その結果莫大な借金を抱えてしまった。だが、返済に掛かる労力や金を自らの尺度で天秤に掛けてしまった。

 そこにやってきた俺は、何とも都合が良かっただろう。だが、俺や、ラフィリア達が汗水垂らして働く姿を見て、考え方を改めたようだった。


「短期間で大金を得る事もできるとな。それはアイデア次第だと、君を見ていて、よーく分かった」


「いや、本当、運が良かったのと皆のお陰です」


「謙遜せんでよい。試すような事をして、悪かったのう。ヒューマンはあまり好きではない。じゃが……お主のような若者が居るという事は、覚えておこうかの」


 族長は畏まると、頭を垂れた。秘書エルフも起立したまま、腰を折って謝罪した。


「サイチェン」


「……はっ」


 サイチェンと呼ばれた眼鏡エルフは一度どこかに消えると、別の部屋からオレンジ色の玉石を運んできた。……グランド・ラクリマである。


「エルフのグランド・ラクリマです」


 そう告げると、秘書エルフは俺に手渡す。俺は礼を述べて受け取った。

 形、大きさ。全てがセイレーンの族長から貰い受けたラクリマと一緒だった。


「最早、我々にとっては過去の遺産です。タチバナ殿、どうかお好きにお使いください」


 秘書エルフは柔らかい口調で言った。過去の遺産、か。きっと、オレンジ色の道着を着た勇者がエルフにこれを授けて行ったのだろう。


 俺はエルフの村に別れを告げ、岐路に着いた。道中思った。エルフ達の俺を見る目が変わったのは、俺を認めてくれたからではないだろうか。

 人間の事は嫌いだろう。だけど、タチバナという男はガッツのあるナイスガイだ、と。そう理解してくれたのだと思った。


 二個目のラクリマをゲット。俺の足取りは軽い。なんせ……必要条件だったから五千万ターラを稼いだけど、四千万ターラ以上余ったのだ。二十億円の貯金がある。……つまり、億万長者だ。


 ふと、ラクリマを丸裸で持って帰るのもどうかと思い、ハーピィ便で家まで送る事も考えた。だが、配送中の落下や紛失が心配なので、自分の手で持って帰る。だが……足取りは軽い。軽やかだ。

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