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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第二章 前門の虎後門の狼
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第四十一話 ラクリマを巡る争いが勃発!?

「とりあえず、トランクスにしてくれない?」


「あっしはブリーフ派、なんす」


「でも見た目がさ……勘弁してくれよ。俺のあげるからさ!」


 俺は寝室から自分のトランクスを持ってくると、手渡した。

 何が悲しくて異世界で白ブリーフ一丁のおっさんと食卓を囲まなきゃならないのか。


 サモは気が乗らないようだったが、穿き替えるようだ。ブリーフを脱ぐとフルチンになった。居間で突然着替えだすものだから、俺はヴィータの目を手で塞いでおく。文化の違いだろうか。少女の前だという事を理解しているのだろうか。


 サモはそれから、転生の真実とやらを語り出す。曰く――人が死ぬと天界に行く。その際天使によって断罪されるらしい。生前の行いによって行き先が異なるのだが、サモや俺は転生となった。だが、悪い事をした人間には重いペナルティが科せられるようだ。


「あっしは古い書物を読み漁り、各地を回って、色んな種族に聞きました。長生きしている種族も多いす。調べ上げたので間違いないすよ」


 その格好で各地を回ったのだろうか。パンイチのヒューマンに来られる種族も地獄だ。まして、サモは押しが強い。強引に家に入ろうとする所から推察できるように、色んな種族の住処に押しかけ、詰問していったのではなかろうか。


 真実かどうか定かではない。それに、俺の呪いは下半身が鳥みたいになるという症状だったが、関節も正常になり、今では快方に向かっている。

 重症化していったサモとは違うような気がするんだけど……。


「……成程ね。分かった。まぁ、その呪いを解く為に、俺はラクリマを探しているんだけど」


 そこの竜人と一緒にね、と付け足して、ヴィータを指差した。

 ヴィータはまだドアの隙間からこちらを睨んだままだ。年頃の娘の前に白ブリーフのおっさんが現れたのだ。警戒するのは無理もない。


「ラクリマ、ひょっとして〈グランド・ラクリマ〉? あっしも聞いた事があるす……」


「そう、それ。各種族の長が持っているヤツ」


「七つ集めれば願いが叶う、という? ……ハハ、タチバナサン、あれは言い伝えですよ!」


 サモが笑った。彼は色黒なので、笑うと白い歯が際立っていた。「ファンタジー、ファンタジー!」と言って、腹を抱えて笑うサモ。どうやら信じていないようなので、実物を見せる事にしよう。

 俺は立ち上がって、台所に飾ってあったラクリマを持ってきた。それを机の上にごろん、と置いた。


「アメイジング……」


 そう呟くと、サモは黙り込んでしまった。真剣な眼差しでラクリマを見つめ、真贋を確かめているようだ。


「あと六個だな。これはセイレーンの族長から貰ったヤツだよ」


「おお、セイレーン……あっしが会いに行くと、石や枝を投げつけてきたのに……!」


 うん、それは格好の問題じゃないかな……。その姿ではまともに話を聞いてくれないんじゃないかな。セイレーンの住処には一度行ったけど、そういえば女性が多かった気もするし。

 さておき、半信半疑だったサモも、実物を目にして納得したようだ。彼は腕を組んで難しい顔をすると、口を開いた。


「決めた。あっしもラクリマを見つけて、呪いを解くす」


「いや……それなんだけど、願いは一個しか叶わないんだ」


「……」


 俺がそう言うと、サモは口を閉じた。と同時に、空気が張り詰めていくのを感じる。


「タチバナサンはもう願い、叶ったでしょ」


「いや、叶ってねーよ!」


 さっきまで「このままだと大変な事になる」とか言っていたじゃねーか。だったら俺だって呪いを解くわ。勝手に決めつけるなよ。


「わ、わたしも忘れてもらっちゃ困るですー! 願いを叶えるのはわたしですー!」


 そこにヴィータが交ざってきた。机に手を突くと、俺達と視線を交差させる。バチバチ、という火花が見えそうだ。

 ここに、ラクリマを巡って三つ巴の戦いが勃発した。俺は下半身を治す為。サモはパンイチの呪いを解く為。そしてヴィータはたらふく食べる為。……三者三様の願いが交錯する。


「タチバナサン、ヴィータサン、休戦協定を結びませんか?」


 沈黙を破ったのはサモだ。彼は椅子に背中を預けると、リラックスした様子で語った。


「あっしが恐れているのは、呪いによる死亡す。今後、もし症状が深刻になって今すぐパンツを脱がないと死ぬとか。タチバナサンの体が重篤化してケモノになるとか――」


 そう告げるサモに邪気は感じない。本心からそう言っているのだろう……と思いたい。

 えーと、前世でやらかすと重度の呪いに掛かるんだよな? ……こいつは何をやらかしたんだ。信じていいのだろうか。出し抜こうとか考えていないだろうな。


「――そうなってしまった時の希望として、集めたいすよ。誰に使うかは、最後話し合って決めるって事すね」


「ラクリマの探索は互いに協力して行うって事か。まぁ、目的は一緒だしな……」


 お互いに譲れないものはある。だが度合いってものがあるだろう。例えば、サモの呪いが更に重症化してパンツを脱がないと死ぬとなった時。俺はラクリマを譲ってもいいと思っている。逆に、将来俺の呪いが大変な事になってしまった時は二人が俺に譲る、と。ヴィータの「腹いっぱい食べたい!」なんてのは、俺からすれば戯言に等しいのだけど……。

 サモの言っている事は、つまりそういう事だ。集めてから、誰が使うか決める。

 実際、一つ目のラクリマ入手以降、既に探索は難航している。三人寄れば文殊の知恵とも言うし、効率的ではある。


 ラクリマは各種族の長が保有している。だが、現時点でラクリマを所持している事が判明しているのはエルフ、有翼人、竜人。この三種族。

 獣人が持っているってババ様が言っていたけど、獣人には様々な種族がある。例えば狼人族、猫人族とか。どの獣人が持っているかは不明だ。

 残りの四つをどの種族が持っているかは調査中だが、サモはアロファーガの種族に詳しい。各地を渡り歩いて色んな種族に会ったって言っていたからな。ラクリマの探索に一役買うんじゃないか、と俺は思う。


「なるほどですー。つまり、集めるのが先ですねー」


「ああ、とりあえず……呉越同舟、やね」


 俺達は頷き合うと、互いの拳を突き合わせた。協定の締結である。椅子に座って気絶したままのラフィリアを尻目に、笑い合う。




 それから数か月。アロファーガが肌寒くなった頃。フィガの町に出した俺の店、二号店の売上は好調だった。開店したのは随分前だが、フィガの町を起点にして、更なる各地へ配達が可能となった。ハーピィ便の数も増えた。だが一番は、塚さんがよくやってくれていた。喫茶ツカ・エネーナの廃業後、奔走してくれている。俺は時折、様子を見にフィガへ赴いたが、従業員も増えたようで、俺が居なくとも全て維持、管理してくれていた。


 本店である俺の家の軒先では、獣人のアネシス、エルフのラフィリアが売り子を継続中だ。俺は新商品の開発を進めつつ、時間が余った時はサモとラクリマの情報収集……と余念がない。


 そして、俺の銀行預金は五千万ターラを突破する。

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