第三十一話 セイレーンの……
それから二十分くらい経過しただろうか。空き部屋にフォルテが連れてこられた。ヴィータとラフィリア、二人掛かりで息を切らせて運んできた。
ベッドに横たえられるフォルテ。すうすうと穏やかな寝息を立てていて、大事はなさそうである。
この一件でラフィリアは疲れてしまったらしい。そろそろ帰ると言うので、玄関まで見送る。服はカレーまみれだったので、ヴィータの服を貸した。洗濯したものは今度取りに来るそうだ。
ヴィータは曰く「動いたらお腹が減った」らしく、彼女は台所のカップ麺を調理していた。
目下、静まり返った空き室に居るのはセイレーンのフォルテだけだ。
……これはチャンスではないか。口うるさいラフィリアは居ない。ヴィータは少なくとも三分は台所から出てこない。あのハヤシ先生ならこういう筈だ。――いつやるか? 今でしょ!
「お邪魔します~」
俺はフォルテの寝ている部屋に忍び込んだ。……左よし、下よし、右よし、発車します。お捕まりください! ……おおっと、お掴まりください!
尤も下は機能不全だから下よしではないが、そんな事は犬にでも食わせておけばいい。
俺は、コンビニで培った素早く丁寧な業務を遺憾なく発揮していく。
セイレーンってどうなっているんだろう。総排泄肛なのかな。ハーピィの産卵シーンっちゅうのは、実に素晴らしいものさかい。同じ有翼人であるセイレーンの下半身がどうなっとるか、そら、気になりまんなぁ……っとイカンイカン。
「これは純粋な好奇心。そう、勉学や……」
自らに言い聞かせると、俺はベッドの横に立つ。そして、掛けられていたタオルケットを剥いだ。
視界に広がるは、白い半円形の双球。桜色に実った野苺は羽毛に覆われて見ることが出来ない。しかし、食べ頃を思わせた。
……ふむ、下はスカートを穿いたままか。けしからんでござる。拙者、その下に繁茂する、不浄の大地も見てみたいでござる。
「日本には良い言葉がある。据え膳食わぬは――ハッ!?」
スカートに手を掛けた矢先、視線を感じて振り返った。何奴か、俺のゴールデンタイムを邪魔する不届き者は。
すると開いたドアの隙間から何者かがこちらを窺っていた。……ヴィータだ!
バカな、三分間は台所から離れない筈……!
いや、そうか。カップ麺が出来上がるまでは三分……。その三分間は逆に自由だったのか! 行動に移すなら三分後だったのか! 策士、策に溺れるとはまさにこの事。
「…………」
「ちゃちちゃちゃ、ちゃ……違いますって。冗談……まさか、ね。そんな、ハハハ……」
ヴィータは虫けらを見るような目で俺を見ていた。なんか、以前にもこんな事があった気がする。
仕方ないやん。ひとつなぎの大秘宝が目の前に広がっているならこの手で掴み取らな、ウソやん。ルフィも絶対背中を押してくれるやん。俺はありったけの夢を搔き集めて探し物を探しに行こうとしてただけなのに、ウィーアー……、ウィー・アー・オール・アローンではないか。
俺が取り繕っている内に救急車のサイレン音が聞こえてきて……色んな意味で助かるようだった。
予定よりもかなり早い到着だが、いや、それは喜ばしい事だ。このセイレーンのお姉さんも早く診てもらった方がいい。
ヴィータは「スエゼン……?」と呟くと、どこかへ去って行く。きっとカップ麺を食べに戻ったのだろう。そうだ、お前の据え膳は台所にあるだろう。伸びないうちに、食っておくんだ。
間もなく車両が到着した。白いボディと搭載された赤いランプは、アロファーガも共通らしい。
担架で運び込まれるフォルテ。その顛末を見届け、この日は終了した。
余談だが、暫くヴィータが口を聞いてくれなかった。
あばばば……PCを買い替えたんですけど、色々と時間が取れてません。引っ越しと転職も重なりそうで……暫く更新は不定期になりそうです。/(^o^)\
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