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バイトテロ奇譚 ~人外娘を求めて旅立ったら呪われた~  作者: さっさん
第一章 獣食った報い
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第十四話 異世界生活二日目

 翌朝八時。異世界生活二日目のスタートだ。俺は寝室を出て、共用スペースであるリビングを訪れた。


「あ、おはようですー」


「おはようさーん」


 ヴィータは既に起きていた。互いに挨拶を交わす。ふと彼女を見やると、床に座り込んで何かをガツガツと貪り食っている。……昨日買っておいた食料だった。


「って、オイ! ちょっと」


「ふぇ」


 ヴィータの首根っこを掴む。慌ててストックを確認してみるのだが、数日分はあった筈の食料が殆どカラになっていた。

 何という事だ。アレもコレも……今では全部、この食いしん坊の胃袋の中だ。


「あー! もうアカンで、これは!」


「江戸っ子は宵越しの銭は持たないですー」


 何を言っているんだ、コイツは。昨日のバーテンダーといいヴィータといい……なにか、アロファーガは今、江戸時代に突入しているのか?


 あんまり強く叱るとしょぼくれるからな……いや、しかしこれは……あきまへんで、ヴィータはん。食糧の確保はサバイバルの基本やん。


 俺は座してヴィータに言い聞かせる。やがて、自然と話題は今後の動向についてとなった。


「俺、ラクリマを探す旅に出ようと思う」


「はぁ、おなかすいたです……」


「さっき食ったばっかりだろ!?」


 俺の話など眼中にないといった様子で、彼女はテーブルに突っ伏していた。仕方がないので、俺の食べていた調理パンを半分ちぎって、分けた。よく分からない肉と野菜っぽいのが挟んであるパンだ。


 竜人というのは皆、こんなに燃費が悪いのだろうか。

 ヴィータはどうしたいのかと問うと、おいしい物が食べられるなら同行したいとの事。


 ……そうは言っているが、実際はラクリマを狙っていると見た。一緒に居て分かったのはこの少女は食い意地が張っている事と、がめついという事だ。

 美味しいものが食べたいのは嘘ではないが、それは建前なのだろう。金持ちになりたいという野望を諦めていないようだ。


 ハハハ、甘い。人生経験の差だな。分かる、分かるぞ……ヴィータはウソを言う時や誤魔化す時、視線が動かず、口調も棒読みになる。魂胆が見え見えだ。

 お天道様は誤魔化せても、接客で散々人間を観察してきたこの俺は誤魔化せんぞ。ラクリマを見つけ出し、願いを叶えるのは俺だ!


 ……さて、そう宣言したは良いものの。ラクリマを探索するにしても、まずは生活の拠点を築くべきだろう。いかに異世界での生活を安定させられるかが要訣だ。


 冒険の旅――それは甘美な響きで、世の青少年達は憧れる事だろう。だが、いざ実体化すると、全てが浅はかだったと気付かされる。言うは易し。冒険譚なんて結局、面白い部分しか描かれていないのだ。

 主人公達はその裏で、宿を探したりお金を稼いだり……炊事に洗濯、大変な思いをしているに決まっている。数日間に及ぶ冒険なんて時にはウ○コを漏らしたり、洗濯できなくて悪臭の漂う衣服を着用したりとか……汚物にまみれた日々を過ごしているに違いない。俺は、そんなの御免だ。


 宿は何とかなった。お金も食事も……まぁ、暫くは平気そうだ。だけど、ここアロファーガに転生して右も左も分からないんだが。


「それだったら、転生者向けの講座みたいなのがあった筈ですよ?」


「マジで?」


 提案したのはヴィータだった。……転生者向けの講座、確かに携帯電話で調べてみるとホームページが出てきた。講座を開いているのは、協会なのかな。


 こんなの、俺がたまたま国王と知り合いだったから良かったものの……どうやって知り得るんだよ……。普通の転生者だったら詰んでるよね? この情報まで辿り着けないぞ。


 時刻は朝の八時半ぐらい……繋がるかは分からないが、掲載されていた電話番号に掛けてみた。すると呼び出し音の後に、女性の声が聞こえてきた。


「――はい、こちら〈転生者支援協会サポートセンター〉です」


「あ、あの、転生者向けの講座があるって聞いたんですけど」


 俺は繋がった事に喜びつつ、尋ねた。これで……異世界での生活も安泰だろう。

 受話器越しのお姉さんは中々に早口であるが、受講に関しての要項を俺に教えていく。


「異世界に転生したら、まず役所に〈転生届け〉を提出していただきます。最寄の役所をお訪ねください――」


 役所? 何か申請したりするのか。

 ……面倒臭そうだな。「転生しました、はいオッケー、新たな人生頑張ってね!」とは行かないって事だな。


 そういうのが無い世界を選ぶべきだったか。現代社会は便利だけど、同時に不自由で窮屈という考え方も往々にしてある。許可を取らなければあれも駄目、これも駄目とか。勝手には使えませんとか。法律で決まってますとか。当たり前だけど、ファンタジー世界にそこまでのリアルは追及しないで欲しかった……。そんな事を思っていると、お姉さんは更に口頭で説明を続ける。


「――それから住居の選定、職業の斡旋などを行います。既にどちらかにお住まいの場合は住所変更も含めてお手続きを……」


「あー、とりあえず一度受講します!」


 何やらすごく時間が掛かりそうだった。俺は受講する日と氏名を伝えて、電話を切った。

 予約した日時は今日の夕方である。善は急げ、だ。

 夕方までの空いた時間に、俺は足りない家電や衣服、食糧などを買い足しておいた。

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