静かな怒り
無言で歩き酒場に着いたリースはトウヤ達が戻って来ると、急用が出来たから明日埋め合わせをするからと会計を済ませ先に出て行き、そのままクライスの屋敷へと向かう。
「なんか、さっきまでとは違うよな?何かあったのかな?」
トウヤの言葉にライラは同調する。
「そうね、いつもと同じ笑顔だったけど何かおかしい気がするわね」
その言葉にセイルとマリは驚きながら反論する。
「お前ら本気で言っているのか?俺はリースさんから今まで感じた事のないものを感じたぞ?さっきの蛇が子供に思えるぐらいの恐怖だった。今でも鳥肌が治まらないぐらいだ」
「同感。リースさんは魔物の首に触れてから様子がおかしかった。ギルド長が肩に手を置いて話しかけていたけど、即座に手を放し距離を取ったその顔は、青ざめて冷や汗を流していたわ。何より、対面した時の目がやばかった。あれは、奥底に殺意が込められていたのだと思う遠目から見ただけなのに怖かったもの。と言うより、それに気付かないあなた達がどうかしている。あれが人型の魔物だったら死んでいるわよ」
トウヤとライラは二人の言葉に絶句し、顔を見合わせる。
「すまないリズ。遅くなった」
リズは誰も来ない部屋に案内するように言い、クライスはセバンに人払いをするように伝え私室へと案内する。私室に入ったリズは防音結界を張り話し出す。
「殲滅の刃の件はどうなっているの?」
「あの村からの報告だとリズの言った通り、ドラゴンゾンビを討伐したのはあいつらだって話だったが、それだけだった。多少の報酬は貰ったみたいだったがな。それと、一部の依頼者からの評判の高さなのだがこれも未だ、憶測の域を出ないのだがどうも皆クエスト終了後に亜人などの少女達をメイドとして雇っているんだ。人身売買をしている風でもなく、クエストも亜人と関係あるわけでもないからたまたまかもしれないが」
「奴らの根城は?」
「そ、それは分っている」
リズの気迫にクライスはたじろぎながら答える。
「つまり、進展らしい進展は無いという事ね。なら、あいつらは私が処理する。お前は後処理をしろ。それから奴らの場所を教えろ。明日は忙しくなるぞ」
場所を聞いたリズは結界を解き、屋敷を後にする。
恐怖から解放されたクライスは力なくその場に座り込み、一気に噴き出す汗を拭わず、過去に一度リズが今のように本気で怒った時の事を思い出す。