ドラゴンゾンビ
「はぁ。あのリーダーらしいクズっぷりね。とうとう堕ちる所まで堕ちたのね」
クライスの話を聞き、リズはそう言う。
クライスの話によると、Aランクパーティー「殲滅の刃」は何故か高ランクの魔物を集めているという噂があるが、証拠はなくまたその動機も皆目見当もつかなかった。
「まさか動機に心当たりがあるのか?」
「昔、ドラゴンゾンビを討伐したときに共闘したのを覚えている?」
「覚えているさ。修行がてら倒しましょうとか言って討伐に向かったのだからな。確かあの時は・・・」
数少ないAランクパーティー殲滅の刃。彼らの実力はランクが示す通りメンバーの実力も高く、何よりメンバー全てが欲の為だけに戦っている問題の多い集団だが、不思議とその証拠がなくギルドとしては処分が出来ずにいた。それに、高ランクのクエストもしっかりとこなし、一部の依頼人からは評判が高くもあった事も処分が出来ない要因の一つにもなっていた。
そんな殲滅の刃との共闘をしたのは、昨年の年が明けて少ししてからだった。旅の途中、魔物に襲われている村を救った際に、近くに現れたドラゴンゾンビから逃げてきた魔物が村を襲っている事を聞いたリズは、修行がてら討伐しようと言い向かった先にいたのが、数日前に村からの要請を受けた殲滅の刃だった。彼らからドラゴンゾンビの情報を貰い、共闘し止めをアインが刺した事で討伐した。
アイン達がそのまま旅に向かう事を知った殲滅の刃のリーダーは、それなら共闘した誼で後処理は自分たちがやると申し出て来たので、任せる事にしてアイン達はそのまま旅に出た。
「と、こんな所だったか」
クライスは話し終え、水を一口飲む。
「なら、これは知っているかしら?そのドラゴンゾンビを倒したのは殲滅の刃で、勇者はかすり傷を負わせるので精一杯だったって話」
「なんだその噂は!一体どこでそんな噂が・・・っ」
憤るクライスは静かにこちらを見ながら微笑むリズの姿に理解した。
「そうか・・・。なら、あの村に向かい殲滅の刃の行動を調査するとする。恐らく奴らは、あの後欲望のままに過ごしていた事だろう」
クライスはセバンを呼び、秘密裏に調査をするように指示をする。セバンが部屋から出て行ったのを確認したリズは、殲滅の刃のメンバーをどうするのかを問う。
「それは調査結果次第だな。本当は高ランクの魔物を森に放つ瞬間を押さえられたら良いのだが、警戒心が強くてすぐに尾行に気付かれてしまい未だに成果は無い」
(それなりに考えているのね。多分、相手の探知魔法を防ぐ術を持たずに尾行するから直ぐにバレているのでしょうけど。本当、そういう詰めの甘さは変わらないわね・・・)
「分かったわ。私の生活に影響ないのなら、関与しないし精々頑張りなさい。それじゃあ、今日はごちそう様。次はドラゴンでも狩っておくことね」
とリズは屋敷を出る。