恋の風は今日の町に吹いているのだろうか
サブエピソード的なやつです。
街風ちゃんの一人称視点で進みます。
これは恋なのだろうか。
気が付けば彼のことを目で追っている。しかし、恋とか愛の好きかと聞かれると、単純にそうですとは答えられない。
昼一番の授業。
私たちの1年1組は数学。グラウンドにいる2組は体育のようだった。
授業の内容は私には理解しがたいもので、なんとか板書だけはするものの、肝心の中身が頭に入ってこない。
自然、授業には集中できず、ついつい窓の外を眺めてしまっている。
1人黙々と走る彼。
彼との出会いを思い返す。
最初に会ったのは入学試験の会場で、その時は変な人がいるなと思い、見ていただけだった。
背の高い男子。
片目が隠れるような髪型をしていて、なんというか、痛い風貌だ。
そして、陰謀論の本を読んでいた。
前の席に背の高い人がいるなと眺めていて、何の本で予習しているんだろうと思っていたら、試験に全く関係ない本を読んでいて驚いた覚えがある。
試験中は流石に彼のことを考えずにいたが、試験が終わり顔を上げると彼の姿が目に付いた。
彼は同校の生徒であろう複数の男子に囲まれていた。
人気者なのだろうかと思ったが、囲んでいる男子の表情から違うことが読み取れた。
あれは自分とは違うものを馬鹿にしている人の顔だ。
嫌なものを見たと、目を背けようとしたところで彼の顔を見てしまった。
彼はただ、無関心でいた。
目の前で見せつけるように、悪意を浮かべる者たちに一切影響されることなく、毅然と存在していた。
私はそれを見て、恥ずかしさで顔が熱くなった。
耳まで真っ赤になっていたと思う。
ちょっとのドジで、私が同じように周囲の嘲笑の的になったとき、私は追従の笑みを浮かべていた。同い年の、名前も知らない彼はあんなにも毅然としているのに。
恥ずかしさから逃げるように家に帰った。
その日の晩御飯は入試頑張ったね記念で豪華だったけど、あまり食べられなかった。その分妹は多く食べられて喜んでいたけど。
翌日からは毅然といられる研究を始めた。その過程で彼が呼んでいたような与太話、オカルト系の知識も身に着けた。
そのせいで、オカルト研究部に強制入部させられたのは災難だったけど、そこでまさかの彼との再会。塞翁が馬とはこのことかと思った。
オカルト研究部での活動を通して、彼のことを少し知った。
立花孝弘という名前。一人称が僕であること。口調はきついけど、行動が紳士的で優しいこと。
何が彼をそんなに毅然とさせるのか、その秘密にはまだ遠い。
だから、彼のことをどんどん知っていきたい。
今日の部活で好きな動物でも聞いてみようかな。
「おい、街風!話を聞いてるのか!」
先生の声。
自分の意志とは関係なく体がこわばる。
「ッ!?すみません!聞いてませんでした!」
クスクスと教室に広がる笑い。恥ずかしさで顔が熱くなる。
彼の毅然さにはまだ遠い。
それでもと、表情だけでも引き締めて私は授業に集中した。
今回は街風ちゃんですが、全員分やろうとは思っています(やるのか?)
頑張ります。