第2話「100機」
東ノ国 野原地帯
何処かにちょうどいいモンスターはいないかな?
キョロキョロと俺は辺りを見渡しているとリエルが俺の肩を叩き
「でしたら、あそこにいるスライムはどうでしょうか?」
とリエルが眠っているスライムに指を指すと、俺は剣を構えて、忍び足でゆっくりとスライムに近付き、真後ろに立つと、スライム目掛けて剣を思いっきし振った。
“バキーーン!!”
バキーーン?あれ?スライムを切った時の音ってこんな金属音したっけ?
そう不思議に思いながら、ふと剣の方チラッと見てみと………俺の剣の先っぽが折れていて俺は違和感を感じて空を見上げると、そこには剣の先っぽらしき部分が宙を舞って、物凄い勢いで地面に刺さって行くのをただ呆然と見ていると突然、スライムが振り返り俺に殺意を向けてきた瞬間、俺の腹に体当たりをすると、俺の意識がどんどん薄れてゆきこう思った。
序盤でこんなに強いスライムに会うなんて………ついてない………な………。
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イタタタタ………一体、ここはどこなんだ?
そう思いながら、俺はゆっくりと辺りを見渡していると突然、どこか見知った声で
「ここは教会です。」
と答えると俺は一瞬でリエルだと分かり、心の中で返事を返した。
教会?確か俺はスライムにやられて力尽きたはずなんだけど。
「はい、不動様は確かに力尽きてしまった。だけど、不動様にはまだ“99機”あるのですから安心してくださいね。それと私が教会まで運んであげたのですよ。」
そうかありがとなって………“99機”!?それってどう言うことなんだ?
「言ってませんでしたっけ、不動様には女神様の力によりあと99回力尽きることが出来るのですよ。」
そ、そうなのか。じぁさぁ、もしも100回目で力尽きたら………いや、いいや。
「聞かなくていいんですか?」
今はまだいいや。それよりも、スライムをどうやって倒すかだなぁ………。
そう思いながら俺は自分のステータスを見て考えていた。
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不動海斗(17)男性
レベル:1
職業:勇者
武器:なし
属性:“闇のキセキ”(一つのキセキを持つ者)
体力:83
攻撃力:17
防御力:12
耐性:11
素早さ:17
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あれ?俺のステータスってこんなんだったけ?もしかして………まぁ、いっか。とりあえずは、スライムを倒すまで何度も挑んでみるか。待ってろよ、スライム。今度こそ倒してやるからな。うおぉぉーーーー!!
俺は気合いを入れ直してもう一度スライムに挑んだ。そして、一瞬にして返り討ちにあい、力尽きてしまうとまた、リエルに教会まで運んできてもらった。
くそ!スライム相手で拳は無理があったか┅┅。
「無理に決まってるじぁないですか!何で拳で勝てると思ったんですか!」
いや~金使うの勿体なくて。それよりも、収穫は有ったぜ。
「どうゆうことですか?」
リエルが問いかけてくると俺は自分のステータスをリエルに見せた。
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不動海斗(17)男性
レベル:1
職業:勇者
武器:なし
属性:“闇のキセキ”(一つのキセキを持つ者)
体力:85
攻撃力:18
防御力:13
耐性:11
素早さ:19
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「このステータスがどうかしたんですか?………あぁ、なるほどそう言うことですね。つまり、不動様が力尽きれば尽きるほど強くなるっと言うことですね。(でも、不思議ですね、女神様がこのような力を与えたなんて聞いていませんでしたし。けどまぁ、相性は良いですし気にしないでおきましょうか。)」
それから俺は何度も何度もスライムに挑んでは倒されてを繰り返した。そして………
「うおりぁーーーー!!」
と声を上げ、スライム目掛けて剣を振り下ろすと、今度は剣が折れずにスライムを真っ二つに斬れて、スライムは消滅した。
フゥー、やっとだ!やっとスライムを倒したぞ!!
「10回目でやっとですね。」
俺たちが(スライムを倒せた)喜びに浸っていると突然、俺のステータスが表示された。
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不動海斗(17)男性
レベル:1→2
職業:勇者
武器:剣
属性:“闇のキセキ”(一つのキセキを持つ者)
体力:103→121
攻撃力:29→36
防御力:23→28
耐性:14
素早さ:28→31
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お!レベルアップもしたんだな。………てどうしたんだよ急に俺の肩なんか叩いて。
「見てくださいあそこ!」
とリエルが指を指す方向に目をやるとそこには………
村だな。ま、丁度いいか。(スライム戦で)疲れたし、休憩と調査がてらに行くとするか?
俺はリエルに提案すると、リエルは頷き
「はい!そうしましょうか!」
と俺の提案に賛成すると、俺たちは第1の村へと向かったのだった。
東ノ国 第1の村~ハクバ村~
俺は村に着くなり辺りを見渡した。特にモンスターに襲われている気配は無いな………ん?アレは何だ?
俺は疑問に思いながら目を細目て、フワフワとした白い毛並みと純白色の翼の生えた馬を見ているとリエルが話しかけてきた。
「アレは“ペガサス”ですね。この村では主に家畜などに飼われているらしくてですね。ちなみに、この村ではペガサスの卵やお肉などを使った料理がうまいらしいですよ。」
うっ!リエルが料理の話をするからお腹が空いてきたな。そう言えば俺はこっち(この世界)に転生してからまだ一度も食べていなかったし、何処かこの村で食べに行くか!
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フゥーー、食った食った。俺は腹一杯に料理を食べて満足になっていると、リエルが問いかけてきた。
「このあとはどうしますか?」
そうだなぁ~?取り敢えずは宿屋を探して、それから武器を調達して………ん?なぁ、リエル、あの“黒い”ペガサスは何だ?
俺は不思議に思いながら飼い主らしき男にリードを引っ張られている黒いペガサスに指を指してリエルに聞いてみた。
「あのペガサスですか?あのペガサスはですね………いわゆる“変異種”と言うやつですね。」
変異種?てどう言うことなんだ?と首を傾げて再度、聞いてみた。
「変異種はですね………あの黒いペガサスのように毛や翼が白以外の色になっていたりするとそう呼んでいるんです。普通の人とかは重宝したりするんですけど、たまに居るんですよ処分したり、高値で売ったりとかしている輩がですね。………て不動様、何処に行ったんですか!?返事をしてください。不動様!!」
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俺はリエルの話を聞いていると、無意識にあのペガサスを追いかけ始めていた。もしもリエルの話が本当ならあのペガサスは多分、処分されるんだろ。それを見逃すのも目覚めが悪いし絶対に止めないとな!と見つけた!そう思いながら俺は厳つい格好をし、右目に眼帯をしている男性に声をかけた。
「おい!ちょっと待ってくれないか、そこの眼帯男。」
すると、眼帯男は振り返って、辺りを見渡してキョトンとした表情で
「もしかして眼帯男のことってオレのことか?」
質問してくると、俺は頷き再び、問いかけた。
「あぁ、そうだ。それでそのペガサスをどうするきなんだ?」
眼帯男はさも当たり前かのような表情でさらっと答えた。
「どうするって?処分するに決まってるじぁないか。」
やっぱり、そいつ(黒いペガサス)を処分するのか、だったらそのペガサスを俺にくれないか?と聞いてみると眼帯男は一瞬、断ろうとしたが何かを閃いて悪巧みした表情で提案してきた。
「………それなら一つだけ条件がある。今からこいつ(黒いペガサス)を貸してやるから2週間後にオレの愛ペガ(愛用ペガサス)と三本勝負をして、もしもお前が勝てたのならこいつを処分せずにお前にくれてやるよ。だが、お前がオレに負けたのならオレの奴隷として一生働いてもらうからな。それでどうだ?」
まぁ、そう簡単にはくれないよな。俺は気合いを入れて威圧感のある声で了承した。
「………分かった。受けて立つぞ!!」
すると、眼帯男は黒いペガサスに着けていたリードを乱暴に俺に向けて投げて、見下したかのような声で
「それじぁあ2週間後、精々恥をかかない程度には頑張れよな!ハハハハハ!!」
と高笑いしながら眼帯男は黒いペガサスを置いて去って行くと、俺は絶対にあいつに恥をかかせてやるから覚悟しとけよな!!と闘争心を燃やすのだった。
ー夜ー
ハクバ村~宿屋~
あのあと直ぐにリエルのテレパシーで会話をしてリエルが予約をしといてくれた宿屋に案内をしてもらった。ちなみに、あの黒いペガサスはペガサス専用の小屋に泊めてもらっている。そして今、俺は正座をしながらリエルに説教をされていると言う訳です。
「何をごちゃごちゃと言っているんですか!?本当に反省していますか全く……。」
リエルは怒った様子で俺に話しかけてくると、俺は反省して自分の頭を床に着けてリエルに謝った。
「はい、本当に本当に反省しています。誠に申し訳ございませんでした!」
すると、俺の誠意が伝わったのか、リエルは少し落ちつき俺を許してくれ………
「なら、よろしいです。以後、気をつけてくださいね。それよりもなぜ、勝負を受けたのですか?しかも、もし不動様が負けてしまったら奴隷として一生働かされることになるんですよ、それに不動様には王様からのクエストである残り四つの村を調査しなくてはならないんですよ。もしかして忘れていたのですか?」
てはいなくてまた、怒ったような声に戻り問いかけてきた。
「いや、別に忘れてはいないけど、ただ最初あの黒いペガサスを見ていた時にな震えてるように見えたんだ。多分だけど自分が処分されるのが分かっていてだけど、何らかの理由で抵抗できなかったんだ。だから俺は勇者として救って挙げなくちゃならないと思ったんだ。それにペガサスが居たら今後の移動が楽になるしな。」
俺は理由を説明すると、少し呆れたのかリエルの怒りが収まり、いつもの温厚な声に戻った。
「ハァー、大体の事情は分かりました。それに受けてしまった勝負に逃げるのも勇者らしくありませんし、その代わり必ず勝ってくださいね。」
分かってるよ。あの黒いペガサスのためにも絶対に勝つから、待ってろよな眼帯男!
ー翌朝ー
東ノ国 野原地帯
俺は黒いペガサスを小屋から連れ出して、リエルに見せていた。こいつが俺が言っていた、例の黒いペガサスだぜ。と言ってもリエルも昨日見たんだよな。
「はい、まぁそうですけど、改めて近くで見ると毛の色が黒と言うより漆黒に近いんですね。それよりも名前はもう決めたんですか?」
あ!そう言えば昨日は色々ありすぎてすっかり忘れてたな………
「よし!決めた!今日からお前(黒いペガサス)の名前は『クロバ』だ!黒い天“馬”だからクロバだ!よろしくなクロバ………」
俺はそう言いながらクロバに着けていたリードを外すと突然、暴れだした。俺は直ぐ様リードを付け直そうとクロバに近付くと、パニック状態に陥っていたのか俺に向かって後ろ蹴りをし、それに反応が出来なくてもろに食い、遠くに吹っ飛ばされて、力尽きてしまった。
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暫くして、俺の意識が回復し目を覚ますと、リエルが話しかけてきた。
「不動様、大丈夫ですか?」
イタタタタ………まぁ、残機が1つ減ってしまったけど何とかな。それよりも何で急に暴れだしたんだ?今までは大人しかったのに?
「多分ですけど原因はそのリードにあると思いますよ。」
俺が今、持っているこのリードにか?確かにリードを外した瞬間に暴れだしたけど、このリードに何かしら仕掛けでもあるのか?
「はい、そのリードには『抵抗すれば抵抗するほどとてつもない痛みが自身を襲う』呪いが込められています。だから、リードを外した瞬間に暴れだしたんではないでしょうか?」
そうか。ならこのリードはもう要らないな。俺は剣を抜き、リードを木っ端微塵に斬ると、そのまま風に乗って舞い散って行き、その光景を見ていると大事なことを思いだし、リエルに問いかけた。
そうだ!クロバは、クロバは何処に行ったんだ?
「クロバ様なら森林方面へと逃げて行きましたよ。」
マジか!?それならクロバがモンスターに襲われる前に直ぐに探しに行くぞ。
「はい!了解致しました。」
東ノ国 森林地帯
俺たちはモンスターに襲われないように警戒しながらクロバを探していると
「不動様!居ましたよ、あそこです。」
とリエルがクロバを見つけて俺を呼び、指を指して居場所を伝えた。
そして俺はその方向に目を向けると、クロバがゴーレムに襲われかけているのが見えて、俺は必死になって走り出し剣を抜き、ゴーレムに向かって剣を振るとギンッと音が鳴り纏わり付いている泥に弾かれてしまい、そのまま反撃を食らいかすり傷を負ってしまった。
くそ!纏わり付いている泥が思っていたより硬すぎて剣が弾かれるな。一体どうすればいいんだ?
俺が悩んでいると、リエルがテレパシーで助言を言い出した。
「(不動様、こう言う時は“キセキ”の力で対抗しましょう。その力ならきっと泥も貫通するはずです。)」
そうか!俺にはキセキの力があるんだった。でもまだ全然使いこなせていないけど大丈夫だろうか?まぁ取り敢えずやってみるか。まずは感覚を研ぎ澄まして鋭利な物を想像するんだ出来るだけ鋭利な物を。そして、その想像した物を形にするんだ。
すると、俺の手の平に黒くてとても鋭利な棘が無数に出来ていた。やったぁ!出来たぞ!って喜んでる場合じぁなかったな、よし!それじぁあ、これをゴーレムに向けて放つ!!
“闇のキセキ 黒槍の棘”
俺はゴーレムに向かって無数の棘を一気に放つと、無数の棘がゴーレムに刺さり、それにビックリしたのかそのまま逃げていった。
フゥーー、流石に倒すまではいかなかったけど何とかクロバを助けられて良かった。
安心すると体中の力が一気に抜けてしまい地面に倒れ込むと突然、クロバが俺に近付きケガをしたところを舐め出した。これって信頼の証的な感じと受け取って良いのかな?
戸惑いながらもリエルに聞いてみると、どうでも良さそうに答えた。
「そう受け取っても良いと思いますよ。それよりも暗くなって来ましたしそろそろ村に戻りましょうか。」
そうだな。取り敢えずはクロバの信頼の証を貰ったことだし、まぁ良しとするかな。
のこり残機《87》