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その夜、夢を見た。
1人の老人が、病室のベッドに腰かけて静かに泣いている夢だ。年老い、痴呆の進んだ彼は、古い記憶に囚われいつも泣いていた。
騒いだり、暴れたりといったことはなかったので、病院にとっては良い患者だったのかもしれない。ただその涙が辛くて、大好きだった彼の病室から私の足は遠ざかった。
彼は日本で最も一神教の信者が多い街に生まれた。その日、疎開していた彼自身は命を拾ったが、それ以外の全てを失った。同じ神を信じる者たちの手によって。私には彼が生涯のほとんど最後の瞬間まで信仰を保ち続けた理由は分からないし、理解も共感もできない。
100歩譲って1発目が終戦に必要だったのだとしても、2発目は本当に必要だったのか? 2発目が本当に必要なのだったとしても、なぜ型の違うものが使われたのか?
あれが、人体を含めどのような影響が表れるか、その実験でもあったことは、言い逃れようの無い事実だ。
私は自分が何を恐れ、何を忌避しているのかの根源を知った。
そして、祖父の死因が信仰上禁忌とされる自死だったことも。
凄く短くてすみません。