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探偵オレール・アダンの場合Ⅰその1

 二年以上放置していましたが、なろうにおける処女作がエタっているってのもあれなのでぼちぼち続きを書いていきます。

「あー眠い」


 俺、オレール・アダンはティニッジの郊外にて、探偵事業を営んでいる。ティニッジは、貿易都市として帝国の中でもトップクラスの急成長を遂げている都市だ。インフラが整備され、帝都よりも整っている。


 だが、決して良いことばかりではない。急激な人口流入に伴って犯罪も増えているからだ。もちろん、警察官の数も増員はされているが犯罪件数は増加の一途をたどっている。


 そこで、俺が目をつけたのは探偵業だった。街の郊外に位置する一階建ての何の変哲もない事務所。それが俺の探偵事務所である。

 創設した当初は瞬く間に大量の依頼が入ったのだが、俺の模倣犯が雨後の筍の如く増えたため売上は決して良くはない。


 入る仕事といえば猫探しだの配偶者の浮気の証拠などの軽いものだ。前者はキャットフードを事務所の前に設置したら匂いを嗅いでやってきたし、後者の場合は初日の昼間から白昼堂々異性とホテルに入っていったのですぐに終わってしまった。


 俺のイメージ的には、もっと連続殺人鬼がこの街に潜んでる! ってみたいのをやりたかったんだけどな……。


 どうしてこうなった。

 そんな時、机の上にある電話に着信が入った。何だろうと思いつつ俺は受話器を手にとった。


「あの……。そちら、ティニッジにある探偵事務所でよろしいでしょうか」


 受話器を通して聞こえてきたのは自信なさげな女性の声だった。怪しく思い番号を確認するが、非通知である。


「ええ、そうですが。ご依頼ですか」

「はい。……岡田健一氏の奥方が消えたという話はご存知で?」


 週刊誌が報じたというニュースは聞いたことがある。どうやら一人は親の介護を理由に別居とのことだが、居場所が不明らしい。もうひとりに至っては普通に行方不明だと聞いた。

 だが、週刊誌の情報なんて嘘や誇張にあふれている。どこまで本当かわかったものではなく、とても信じきれるものではない。


「はぁ……。週刊誌に載ったらしいとは聞いたことがあります」

「そうですか、では依頼させてください。岡田健一という人が犯罪者である証拠を掴んでください」

「はぁ!?」


 あのティニッジにおける大恩人である岡田健一氏が犯罪者!? とてもじゃないが信じきれるものではない。だいたい、逮捕されたらこの街はとんでもないことになってしまう。ティニッジは岡田健一氏の会社に経済を大きく依存している。会社が大きな影響を受ければこの街の経済はほぼ壊滅状態だ。

 それに、電話の相手が主張しているだけであって根拠もなければ報酬も聞いていない。


「失礼、いくらまで出せますか?」

「それは……。失礼ですが、あまり多くは出せません」


電話の相手は、かなり噤んでいた。相当懐事情が芳しくないようだ。申し訳ないが、受けるメリットがなくデメリットの方が多いようであれば無意味だ。


「……今回はご縁がなかったということで。第一、電話のみでは信用しかねます」

「……会えないんです。私はティニッジに入ることができないから、あなた方に頼むしかないんです。もし信用しろというのであれば、後日あなたの事務所に荷物を送らさせてください。お願いします──」


 電話の相手はそう言い切ると、電話を切ってしまった。

 一体彼女は何だったのだろうか。俺の疑問は深まるばかりだ。


 そして、後日。事務所あてに怪しいダンボールが届いた。送り主の住所を調べてみたが、架空の住所である。それほどまでに居場所をバレるのを恐れているのだろう。俺は恐る恐るそのダンボールを開けた。入っていたのは一枚のカードと紙。

 俺は先に紙を読もうと手にとった。


『先日、電話をして依頼を断られたものです。なので、あなたに私の個人情報を送ります。どうか信じてほしいです』


 ダンボールの中に入っていたカード。それは、女の個人情報らしい。そもそもの話、女の名前が一人わかったところで何になるというのか。

 俺は面倒ながらもカードを見た。


『チャロ=リーリョ』


 どこかで聞いたことがある名前だと思い、ふとPCで調べてみることにした。


《短期間に二人の妻が行方不明!深まるDV疑惑》


 検索結果の一番上に出たのがその記事だった。運営元は大手週刊誌のウェブサイトで、俺はその記事をクリックする。


 ……まじかよ。


 俺は内心、こう呟かざるを得なかった。だって、この記事では岡田健一氏の妻の二人の失踪疑惑について追っていたが、その記事に書いてあったのだ。失踪した妻の一人、本名チャロ=リーリョと。

 もしこれが本当ならば、本当に岡田健一は……?

 いや、電話の相手が単に本人から強奪した可能性がある。なら、何のためだ?わざわざ岡田健一を探らせて何がしたい?競合他社による妨害?ならもっと報酬は弾んでくれてもいいはずだ。

 必死に俺は悩んだ。この明らかに違和感のある依頼を受けるか否か。


「まあ、暇だしな」


 現在、依頼は入っていない。その間の暇つぶしとしては有意義だろう。

 俺は、身支度を整えると、事務所を出た。

2021/4/5 改訂

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