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第六話「何とかしなければ」

『おい、スリーピングスリー! どこに居るんだ!!』


 私は、ねむちゃんに用事があり、彼女を探している。ちなみに、スリーピングスリーとはここでのコードネームのようなものである。自室に行ってもいない。いつもの映機材などがある部屋に行ってもいなかった。

 どこにもいない。まさか、ねむちゃんが一人で、しかも誰にも行き先を言わずにいなくなるなんてありえないことだ。


(あ、もしかして)


 一つだけ、姿を消した理由を思い出した。前にも、何度かあった出来事だ。ということは、ねむちゃんはあの部屋かな。


『む?』


 辿り着いた部屋は、転移装置がある部屋。ねむちゃんはよく寝ぼけて色んな場所で眠っていることがある。だから、色んな場所でねむちゃんが目撃される。

 前は、食堂で発見されたっけ? そして、もっともやばかったのが寝ぼけたまま転移装置を起動させちゃって、秘密基地からどこかランダムに転移しちゃったって出来事かな。


「あ、総統様ぁ。おはようございますぅ」


 やっぱりそうだった。部屋に入ると同時に、転移装置が起動した。そして、そこから姿を現したのは、いつも通りのねむちゃんだった。

 なぜか、ココアの缶を持ってるけど。戻ってくるついでに買ってきたのかな?


『ああ、おはよう。スリーピングスリー、また寝惚けて転移していたのか?』

「はい。でも、大丈夫ですよ。もしもの時は、防衛システムが起動しますから」

『それは確かにそうだな。だが、何度も言っているが寝るのならば自分の部屋で寝るんだ』

「ふわぁい……ねむねむ……」


 これだけ、彼女が眠そうにしているのは色々と作業を頼んでいるからだ。しかし、その作業以外は基本自由なので、何をしてもいい。

 とはいえ、彼女のどこでも寝れるという特技は今回のように困った事態になることもある。最初、転移システムを寝惚けて起動させた時は、本当に驚いたと同時に心配したな。


「あっ、総統様。これ」

『なっ!? このお守りは!?』


 ねむちゃんも見つかったことだし、さっそく用事を済ませようと思った刹那。

 差し出されるお守り。

 何の変哲のない赤い色のただの安全祈願のお守りだけど、わかる。これは、私がお兄ちゃんに渡したお守りだ。

 どうしてねむちゃんが……いや、お兄ちゃんに会ってきたんだね。


「実は、転移した先で、兄上様に助けて頂きまして。お土産にと、これを」

『……ふむ。了解した。受け取っておこう。あぁそうだ、スリーピングスリー。メカニカルツーが頼まれていた機械が直ったと言っていたぞ』

「そういうことでしたら、メールとか置手紙とかでいいですのに」

『私も、丁度暇をしていたところだったからな。それに、お前の場合メールを送っても、ほとんど見ないだろ?』


 ねむちゃんは、よくネットサーフィンをするんだけど。メールなんか極力見ないからこうして、直接教えたほうがいいんだよね。


「それも、そうですね」

『さて、用事も済んだところだし、私は』

『総統様!!』


 次の仕事に行こうと思った刹那。

 秘密基地で働く同士が、慌てて通信を入れてくる。ちなみに、同士は全員女子だ。男子は、一人たりともいない。


『どうした?』

『またあの組織からの通信です』

『そうか。今すぐ、そっちに向かう。そのまま待っていてもらえ』

『了解しました』


 通信が切れた後、私はねむちゃんに部屋に戻るように伝え、通信司令室へと向かった。




・・・・・◆




『だから、あんな化け物をなんで庇うんだよ!』

『ただの化け物じゃないわ! 私達、女性に夢を与えてくれるいい化け物、化け物なんて可哀想だわ。マスコットと呼ぶべきよ!!』


 異世界から帰還して、一週間が経った。

 朝食の味噌汁を啜りながら、テレビを見ているとよくやっているニュースが流れている。それは、さやが起こした世界征服の影響についてのニュースだ。


 片や男性が、あの戦闘員達を早く倒すべきだといい。

 片や女性が、あの戦闘員達は女性に夢を与えてくれる存在だと庇っている。戦闘員にやられると女性は、若返る。

 世間では若返りと言われているが、正式名称は妹化だ。とはいえ、妹化と言っても、全員が妹という存在というわけではない。

 その証拠に一人っ子な人でも、あの戦闘員にやられて若返っているが、本当にただ若返っているだけなのだ。


 妹化は、世界を影響を与えている。

 悪い意味は少なく、いい意味での影響が多い。例えば、若返ったことで昔を思い出し、毎日がつまらなかった人が、今ではかなりエンジョイしているとか。

 更に、歳を取った昔のアイドルが、若返ったことでファン達が、昔に戻ったようだ……と、今まで以上に応援をしている。アイドルも、若返ったことで体力もかなり戻り、今までリリースしてきた曲を長時間ファンのために熱唱したとかなんとか。


『いまや、あの化け物達は、女性にとってはただの化け物ではなく。夢を与えてくれる存在となっています。そして、女性達は自分から進んで、世界征服宣言を行った謎の女性を信仰し、支援している状況ですが』

『まったくもって、不可解な存在だよ。あの化け物は。まるで、空想の世界にでも紛れ込んだかのようだ.。いや。もっとも不可解な存在は、総統という少女だろうか。あの少女が、化け物達の親玉なのだからね』

『だが、これは現実。我々は、今を受け止めどう対処をするか考えていかなければならないわけです。幸い、あの化け物達は、仮面を砕くとやられるという情報がありますから』


 テレビでは、コメンテーター達がそれぞれの考えを言い合っている。空想の世界か……まあ、俺はその空想の世界。

 所謂異世界に行っていたんだけどな。いや、俺だけじゃないだろう。父さんも含めて、俺が知らないだけで、めちゃくちゃ居るはずだ。

 その人達は、いったい何をしているんだろうか? この状況を見て見ぬふりをしている? それとも、いつでも解決できると高みの見物をしているか。どちらにしろ、この事態を起こしたのは俺の妹で、俺が原因だ。俺が、なんとかしなければ。


「とはいえ、どうしたものかな」

「そういえば、さやは倒して見せろと言ったが、具体的にどんな倒し方とは言っていなかったな」

「さすがに、普通に戦うってことはなさそうだけど」


 今から連絡して、内容を聞いてみるか? それとも、あっちから仕掛けてくるまで、あの戦闘員達と戦い続けるか。一度、リーダー格の奴と戦ったが、まあ楽だったな。

 リーダーと言っても、他の戦闘員と見た目はあんまり変わらず、違うところと言えば喋れるところだろうか? あっちも俺のというか、名も無きヒーローの存在を認めているようだったし。


『では、次のニュースです。ここ最近、化け物達を倒す謎のヒーローの存在が話題となっています。化け物達を、颯爽と現れ、圧倒的な力で倒していき、名も告げず去って行く。その強さは、我々でも簡単に倒せないリーダー格の化け物を一撃で倒すほどです』

『彼は、まさに正義の味方。誰なのかはわかりませんが、彼が味方だということは確かですね』


 ……あっちゃぁ。やっぱりニュースになっちゃったか。すると、父さんと母さんがすごくにやにやした表情で俺のことを見詰めてくる。


「大活躍ねぇ、謎のヒーローさん」

「だな。名も告げずってところが、かっこいいな。だが、さすがにずっとってことはないだろ。名前を決めておいたほうがいいんじゃないか?」

「名前ねぇ……」


 そう言われても、人気になりたいがためにあいつらを倒していたわけじゃないしな。まあでも、いつまでも名も無きヒーローってわけにもいかないだろうし。

 とりあえず、考えておくだけ考えておくか。

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