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第十二話「次なる刺客は」

「ふむふむ。まずまずの感触って感じっすね」


 お兄ちゃんと桐火ちゃんとのやり取りを見終わった私達、互いにどんな感じだったか話し合う。モニターに映し出されているのはドット絵の桐火ちゃん。

 そして、その横には何かの数値が表示されている。


「十パーセントか。最初の出会いにしては、結構な好感度なんじゃない?」

「でも、十パーかー。最低でも五パーに抑えるべきだったすねぇ。最初の出会いから、二桁は好感度高すぎじゃないっすかね?」

「つまり、桐火ちゃんは案外ちょろい?」

「ちょろちょろーですねぇ」


 あの様子を見る限り、桐火ちゃんは相当楽しかったと見える。なにせ、すごくはしゃいでいたからね。連絡では、少し寄り道をしてから戻ってくると言ったけど、位置的にまだ森の中みたいだね。


「それで、皆はどうだった?」

「そうだなぁ……私は、まだまだ見ていたいかな」

「あたしは、お兄さんに興味が出てきたっす」

「お? ということは明ちゃん。次、行くのかな?」


 舐めていたキャンディーを口から取り出し、明ちゃんはにやっと笑う。なんて無邪気な笑顔なんだろうか。こういう時の明ちゃんは、色々とやり過ぎちゃう時があるからなぁ。

 ちょっと心配だけど、相手がお兄ちゃんだから心配いらないかな?


「当然っす! それに恋愛ゲーム。いや、どのゲームでも出会いは大事っす! 最初は、互いに出会って知り合い。そこから、主人公が思うようなルートに進む。時代がどれほど変わろうとも、これは変わらない鉄則っすよ」

「でも、そのテンションで行ったらあっきーもあの人に攻略されちゃうんじゃないの?」

「大丈夫っすよ。ちょーっとご挨拶をして、遊んで、帰って来るだけなんで!」


 明ちゃんのちょっとは、ちょっとじゃないからなぁ。


「いやー! 刀弥さんならあたしの開発した子達の相手ができそうっすからねぇ」

「え? まさか、あれで持って行くの? それは目立つんじゃ」


 と、かなでちゃんが驚いているが。


「あー違うっすよかなでさん! あの子は、さすがに持って行かないっすよ! あの子は、特別っすからね。プロローグは、ちょっと派手に、でもあまり目立たないように」

「ふむ。そういうことならば、拙者も明殿のプロローグとやらをしかと見させてもらうでござる」

「あっ、桐火ちゃん。おかえり」

「ただいまでござる」


 嬉しそうだが、どこか悔しそうな雰囲気がある。やっぱり、お兄ちゃんにコテンパンにやられたのが、悔しいだろうな。

 席に着いた桐火ちゃんは、腕組みをしたまま明ちゃんのことを見詰める。


「経験者の拙者からアドバイスでござる」

「お? なんすか?」

「刀弥殿は、人柄もよく強さも計り知れぬ。だが、ちょっと子供っぽいところがあり、拙者と修行をしている間も、何度か眩しいばかりの笑顔を振りまいておられた。それは、映像で観ていたから明殿も理解できているであろう?」

「そうっすね。桐火さんが、めっためた!! にやられたところもばっちり観ていたっすから」

「うぐっ……! ま、まあそうでござるな。だが、あれはあえてああしていたのでござる。本気で刀弥殿と接していたら、拙者もやばかったでござるからな」


 そう言っている割には、結構本気っぽかったけど。時々、意地悪そうにしていたお兄ちゃんに対して、桐火ちゃんは息を荒くしていた。

 お兄ちゃんは、それを察していたけどあえて何も言わず、桐火ちゃんと修行を続けていた。桐火ちゃん自身は隠し通せていると思っていたみたいだけど。

 

「拙者のことは一度置いておいて……刀弥殿と接する時は、作戦などあまり通用しないと思って接していたほうがいいでござる」

「はいな。アドバイスありがとうっす、桐火さん。それじゃ、あたしは準備があるから。これで失礼するっすよー。おっさきー!」


 再度キャンディーを口に入れて、飛び跳ねるように椅子から離れる。明ちゃんが会議室から居なくなった後、残った私達は再び顔を見合わせる。


「あっきーは、どんなアタックを仕掛けるんだろうねぇ。あっきーの発明品は、マジでやばめのものが多いからねぇ」

「そうでござるな。拙者も、明殿に発明品の実験に付き合わされたことが何度もあるが。正直、あれが十三歳の女子が作った代物とは思えぬ。明殿が、敵でなかったことをあれほどよかったと安堵した自分を今でも鮮明に覚えているでござるよ……」


 昔から、親の影響で作ることが大好きだった明ちゃんは、魔法を混合とした魔法機械を専門として、発明を続けている。

 今では、親をも超える代物を作ってしまったほどだ。明ちゃんの親とは面識があり、こうして活動していることも承諾済み。


「あっ」

「どうしたの? ねむちゃん」


 今回は珍しくずっと起きていたねむちゃんは、何かを思い出したのか声を上げる。


「明ちゃんに、映像機材直してって言うの忘れてました」

「なんだ、そんなことかぁ。それだったら、今から言っても遅くないんじゃない?」

「でも、明ちゃん。準備で忙しそうだし」

「大丈夫だよ、ねむちゃん。明ちゃんだったら、ぱぱっと直してくれるから」


 明ちゃんの技術力は世界一。いや、宇宙一? とにかく、この地球で明ちゃんに敵う人は……いないとは言い切れないか。

 地球にだってまだ、私の家族や明ちゃんの家族のように、異質な力を持っている者達が隠れている可能性が高い。とはいえ、今のところは明ちゃんの技術力が一番ってことで。


「そうですねぇ……ねむねむ……」

「こーら。ねむねむー。寝る前に、ちゃちゃっと伝えておいたほうがいいんじゃないのぉ?」


 そう言って、ねむちゃんのところに移動してかなでちゃんはちょっと強めに頭をぐりぐり撫で回す。


「ふみゅう……わかりましたぁ」


 なんとか目を覚ましたねむちゃんだったが、まだちょっと眠そうだ。


「もう。仕方ないわね。私がついていってあげるわ。さやっち、きりりん。それじゃ、私達も行くから」

「うん。お疲れ様、二人とも」

「おつかれさまでし……すぴぃ」

「ねーむねむ。ほら、ちゃんと歩いて。……もう」


 結局、一人では歩けそうにないねむちゃんをかなでちゃんがおんぶする。そのまま会議室を出て行って、残ったのは私と桐火ちゃんだけとなった。


「私達も解散って言いたいところだけど。その前に、桐火ちゃん。今後も、お兄ちゃんと関わっていきたいって思った?」

「ふむ……そうでござるな。刀弥殿とは、まだまだ高めあって生きたいと思っているでござる。そのためにも、拙者は拙者で修行を積み重ねばならない。というわけで、さっそく行ってくるでござるよ、さや殿」

「うん。頑張ってね。色々と」


 こうして、最後の一人になった私は、静かにモニターを見詰める。そこには、お兄ちゃんが楽しそうに桐火ちゃんと競い合っている映像が再生されていた。


「むふっ」


 新しいお兄ちゃんコレクション! とりあえず、これを今から最初から最後まで観賞しようっと。次の仕事までまだ時間あるし。

 次は、明ちゃんの番。どんなお兄ちゃんが見られるか。今から楽しみだなぁ。

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