第九話「攻略せよ」
『というわけで! お兄ちゃんよ!! 勝負の内容が決まったので、私自ら知らせにきちゃったぞ!!』
『お、おう』
やっと勝負内容が決まったので、私はお兄ちゃんに知らせるべく自分から通信をとっている。単純に、お兄ちゃんとお話をしたかっただけなのだが、それは秘密だ。
今の私は、世界を征服しようとしている総統なのだから。
突然の連絡にお兄ちゃんは驚いているようだけど。驚いているお兄ちゃんもいい!! っと、いけないいけない。ちゃんと説明しないと。
『勝負内容は簡単。私が、信頼する四天王をお兄ちゃんが攻略すればいいのだ!!』
『攻略?』
『お兄ちゃんは、恋愛ゲームはやったことあるな?』
『まあ、それなりに。……あぁ、攻略ってまさか』
察しがついたようだ。私は、力強く頷き手を突き出す。
『そう! これから、四天王が一人、また一人とお兄ちゃんのヒロインとして現れる。お兄ちゃんは、全ての四天王を攻略する! さすれば、お兄ちゃんの勝利となるのだ!!』
『随分となんていうか、異質な勝負だな』
さすがのお兄ちゃんも、私が考えた勝負内容には困惑しているようだ。
『だが、ただ普通に戦うだけではそこらに居る野蛮な連中と同じだ。お兄ちゃんとの勝負は、趣向を変えた平和的な勝負こそが相応しい!!』
それに、こういう勝負をすれば色んなお兄ちゃんが見られる。一年も生のお兄ちゃんの行動を見ていなかったんだ。その行動、どんなものなのか全て映像に記録しないと!
今からわくわくしてきたよ。
『なるほどな。確かに、俺も平和的な勝負がいいとは思っていた。だけど……俺が四天王の攻略か。できるかな……』
『お兄ちゃんならば、可能だろう。とはいえ、我が四天王達もそう簡単には攻略されない。さあ、お兄ちゃん! 返事はいかに!?』
私と四天王が見守る中、お兄ちゃんは少し考える素振りを見せて、決意したように頷いた。
『わかった。その勝負、受けるぞ。さや』
『さすがは、お兄ちゃんだ。では、刺客を送り次第お兄ちゃんは攻略に取り掛かるがいい。楽しみにしているぞ? お兄ちゃん』
『ああ。絶対、お前のことを止めてやるからな! そして、また四人仲良く一緒に暮らそう!』
今すぐにでも、仲良く暮らしたいけど。私にも、私なりにやることがあるから。映像が切れ、私は仮面を外し一息つく。
ずっと無言のまま見守っていた四天王も、仮面を外した。
「さやっち。また変な勝負を提示しちゃったねぇ」
「リアル恋愛っすかぁ。あたし、そういうのやったことがないから。よくわからないっすよ」
最初に喋り出したのは、かなでちゃんと明ちゃんだった。かなでちゃんは、私の提案に苦笑し明ちゃんは、恋愛経験がないからどうなるのかと眉を顰めている。
私も、恋愛経験なんて全然って言っていいほどない。まあ、恋愛をしなくてもデートはしたことがある。もちろんお兄ちゃんとだけど。
「私もですねぇ」
「そもそも、ねむ殿と恋愛というのはいかがなものかと拙者は思うのだが」
「そういえば、そうっすね。さやさんのお兄さんは確か十七歳っすよね?」
「うん、私より三つ年上だよ」
「で、ねむっちが現在十二歳。小学生と高校生かー、これって大丈夫なの?」
た、確かにねむちゃんと恋愛をさせるのは常識的に、いや! 私達は世界の敵! 地球の常識なんてまったく関係ない! でも、お兄ちゃんはそのことを気にしてそうだし。
どうしようかな。
ま、また勢いで言っちゃったことが、こうも悩まされることになるなんて。
「まあ、その辺りは後で考えるとして。誰が先に行く?」
「そうっすねぇ。どうするっすか?」
「そういうことなら、拙者が先行しよう」
「お? やっぱり、きたっすね。切り込み隊長さん」
世間では、小学生と高校生の恋愛っていうのは確かにあれだよね。でも、ねむちゃんも四年すれば十六歳で結婚できる年齢になる。
高校生ぐらいになれば、いくらねむちゃんでもかなり成長しているだろうな。あ、四年後って言ったらお兄ちゃんはもう二十歳を超えるのか。
二十歳のお兄ちゃん……あぁ、いいかも。今のお兄ちゃんもすごいかっこいいけど、ちょっと大人の階段を上ったお兄ちゃんも絶対いい!
「じゃあ、最初のヒロインはきりりんで決定ってことね?」
「うむ」
「でも、桐火さん。大丈夫なんすか? どう見ても桐火さんは、恋愛経験なさそうっすし」
「だからこそでござる。拙者は、恋愛など興味などもなく、恋もしたことがないゆえ。そう簡単に堕ちることはなかろう」
二十歳になるってことは、お酒も飲めるようになるんだよね。お兄ちゃん、お酒とか飲んだりするかな? もし、飲んだりしてすごく弱くて酔った勢いで、過ちとか犯したり……。そうなちゃった場合は、私が絶対なんとかしてみせる!
もし、警察のお世話になっても私が。
「本当に大丈夫なんすか?」
「どういうことでござるか?」
「こんな映像がありまーす」
『はあ……はあ……』
「なっ!? その映像は!?」
「桐火さんの性癖は知っているので、またこんな状態なったら」
「し、心配はいらぬ! 拙者とて、秘密結社イモウトの四天王が一人! 同じ過ちは犯さぬ! さや殿!! 是非、拙者を第一ヒロインとして……さや殿?」
あ、あれ? なんか皆が私のことを凝視してる。もう、会議は終わったはずだけど。何か、私に内緒で話を進めていたのかな?」
「え、えっとなに?」
「だーかーらー。さっきも話してたじゃん。誰が先にさやっちのお兄のところに行くのかって」
と、かなでちゃんが私の頬を突きながら説明してくれる。
「そ、そうだったね。えっと、それで」
「拙者が第一ヒロインとして、さや殿の兄者と戦うでござる。よいでござるか?」
「うん。桐火ちゃんなら、きっとやってくれるって信じてる」
「お任せあれ。必ずや、秘密結社イモウトに勝利を!」
そう言い残し桐火ちゃんは、姿を消す。そして、桐火ちゃんがいなくなったところで、私は忘れないようにねむちゃんにこう指示する。
「ねむちゃん。準備はできる?」
「できてますよぉ」
「その辺りは、心配いらないっすよ。なにせ、あたしが作ったんですからね。ばっちし効果を発揮するっすよ!」
明ちゃんの自信たっぷりな言葉いただきました。まあ、明ちゃんの発明は失敗作なんてものはないからね。
「それじゃ、さっそくスイッチーおん」
ねむちゃんがかるーく傍のボタンを押すと、桐火ちゃんのドットで作ったキャラが巨大モニターに現れる。
すると、そのドット絵が現在どこかへと向かっている。まるで、昔のゲームのようだ。
「うん。ばっちりのようっすね!」
「きりりんは、今……あぁ、私達の学校近くを走ってるみたいね」
「じゃあ、次はリアル映像もお願い」
「はーい」
そして、隣にあるボタンを押す。すると、ドット絵の隣に桐火ちゃんのリアルの映像が映し出される。どうやら、お兄ちゃんを探しているようで物陰に隠れながらも周りを見渡している。
ちなみに、映像で見ていることは皆承諾済みである。
「で? この観賞の意味は?」
と、かなでちゃんが聞いてくるので、私は考える間もなく即答した。
「お兄ちゃんを見るため!!」
「やっぱりそうかー。まあ、わかってたけどね」
「それしかないっすよ、かなでさん。っと、言ってるそばから、お兄さんが見つかったようっすよ」
わかってる。どうやら、桐火ちゃんはお兄ちゃんを発見したようだ。なんだか野良猫と遊んでるみたい。あぁ、私もお兄ちゃんに頭を撫でてもらいたい……う、羨ましい。
「って、き、消えたっす!?」
お兄ちゃんが突然その場から消えたと思いきや、桐火ちゃんはすぐ背後へと振り返る。だが、そこにはお兄ちゃんの姿はなく。
『よっ。数日ぶりだな』
『そっちでござるか!?』
背後には回りこんでいなく、普通に目の前に移動をしていたらしい。桐火ちゃんが、勝手に背後に回りこまれたんだと思い込んでいただけのようだ。
『それで……まさか、桐火ちゃんが?』
『そうでござる。拙者が、第一の刺客でござるよ』
「刺客じゃなくて、ヒロインっすけどねぇ」
「まあ桐火ちゃんらしいけどね」
「でも、出かける時はヒロインって言ったっすよね?」
今は、あえてヒロインと言っていないだけなんだろう。さてはて、桐火ちゃんはお兄ちゃんとどんなルートに進んでいくのだろう。
ゲームだと、選択肢によって色んなルートに進んでいく。間違った時、攻略したいヒロインのルートに行けなかった場合はセーブデータをロードすれば戻ることができる。
でもこれは、現実。セーブなんてない。一度限りの恋愛。お兄ちゃんが、桐火ちゃんがどういう選択をするのか……。
『そうか。えーっと、じゃあ何しようか?』
『そうでござるな。実は、拙者兄者……刀弥殿とやってみたいことがあるのでござる。少し、場所を移さぬか?』
『別にいいぞ。どこに行くんだ?』
お? 最初にいったのは桐火ちゃんみたいだね。さてはて、どういう展開になるのか。今からわくわくが止まらない!




