プロローグ
正直、これが恋愛なのか。自分でも疑問に思いながらジャンル設定をしました。
大体ノリで進んでいく予定。
「やっと帰ってきたぞ……」
俺の名は、篠原刀弥。今年で十七歳になるのだが、俺は異世界召喚で異世界に行っていたんだ。一年ぐらい。
それは突然だった。
いつものように、妹のさやと一緒に帰っていて、途中トイレに行きたくなりコンビニのトイレに入った瞬間だった。足元に突然魔法陣が展開し、気づいた時には……異世界。俺を召喚した召喚師達と王様の前に尻餅をついていた。
そこからなんだかんだあって、世界を危機に貶めている魔王とやらを倒す旅に……最初は苦労したが、今こうして目的を達して俺は帰ってきた。
両親が居るとはいえ、さやは絶対心配しているはずだ。
いつも俺にべったりで、俺もあいつにべったりだった。異世界に居る間も、俺はいつもさやのことを考えていた。
「鍵は、開いていないみたいだな。ま、当たり前か」
俺達四人が暮らしている一軒家。篠原と書かれた表札。俺は、ずっと大事に持っていた合鍵を鍵穴に入れる。
そして、ドアノブを捻った。
三人の靴はない。出かけているんだろうか? 中に入ると……何にも変わっていない。俺が異世界へと召喚される直前の風景と一緒。そのままだ。
すぐ、カレンダーを見る。今は、六月か。俺が召喚された時は、うん。ちゃんと一年だな。異世界と地球とでは時差が全然違うってパターンがよくあるから心配していたが、安心した。
「ただいまぁ」
「この声は!」
俺はすぐに家に響く声に反応する。それは、ずっと聞きたかった母親の声だったからだ。俺は、すぐに玄関へと向かった。
いち早く顔を見たい。ただいまとただいまと言いたかったから。リビングのドアを開け、弾んだ声で声をかけようとするが。
「あ、あれ?」
俺は自分の目を疑った。
それは、母さんの姿がなかったからだ。おかしい。さっきまで、母さんの気配はちゃんと。
刹那。
「ふふーん」
「うわっ!?」
母さんの気配が、背後からすると思いきや背中に柔らかい感触といい匂い鼻を刺激する。
「やっと帰ってきたのね。もう、一年もどこの世界に行っていたの?」
「あ、いや俺は……って、え? か、母さん。さっきなんて?」
母さんから離れ、俺は問いかける。黒く長い髪の毛を、一本に束ねている美人。垂れ目の瞳とふんわりとした大人な雰囲気は、全然変わっていない。
篠原恵乃亜。
全然知らない人が見たら、二十代の女性に見えるほどの美貌。昔から近所の人達からは、魔性の女と言われている。別に悪いことをしているわけではないのだが、十年以上も経っているのに全然見た目が変わらないことから、そう言われているのだ。
「そ、それにいったいどうやって俺の背後に」
「簡単よ」
と、母さんの体が光に包まれ、粒子となり四散する。
また気配が消えたと思いきや、背後から母さんの気配が。
「とったー」
ゆるくも弾んだ声で、また抱きついてくる母さん。さっきのは、まさか転移術? しかも、魔力による転移術じゃない。
この気配は。
「母さんは、何者なんだ?」
「ふふ。その話は、後々。まずは、刀弥。おかえりなさい」
「……ただいま」
なんだか、変な感じになったけどやっと言えた。この一言を、何度言いたかったか。後は、父さんと我が妹のさやだけだな。
父さんは、時間帯的に仕事。さやは学校かな。となると、まだまだ時間はかかりそうだな。その間に、この一年でどうなったのか母さんと話し合うか。
「刀弥。帰ってきて早々なんだけど。あなたに何とかしてほしいことがあるのよ」
何とかして欲しいことか。
こんな母さんの真剣な表情は、初めて見たかもしれない。いや、真剣なのか? いつも通りふんわりとした雰囲気だから、よくわからないけど。
まあでも、一年も心配させていたんだ。俺にできることならなんでもやる。
「やってほしいことって?」
そう問いかけた時だった。
独りでに、テレビが点く。それに気づいた母さんは、丁度いいわねぇと俺を連れてソファーに座る。なんだ? 一年も経つと自動でテレビが点くようになるのか?
あー、もしかして観たい番組を一緒に観てほしい……ってわけじゃないよな。
『諸君! 元気にしているかな? 私だ!!』
なんだろうこの子。
額に妹と書かれた髑髏の仮面を被ったまあ女の子であろう人物が映っていた。長く黒い髪の毛は、腰まで届いており、胸はかなりでかい。
そして、まるで軍服をデザインしたかのような服に身を包んでおり、赤いマントまで着用している。うーん、ミニスカートに黒のニーソからできる絶対領域は完璧だ。
しかし、何なのだろうかこの番組は。
『世界中のお兄ちゃん達よ! 妹に優しくしているかな? 愛しているかな?』
「えっと、母さん。この番組って何なんだ?」
背景も、どこかの秘密結社のような雰囲気をかもし出している。よく見ると、彼女の周りにも何人か人が居るようだが、よく見えない。
「これは……世界征服宣言の映像よ」
「はい?」
何を言っているんだ? 母さん。