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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

僕は勇者を撃ち殺した。

作者: 鍵子
掲載日:2016/08/17

僕は勇者を撃ち殺した。



胸からだらりと垂れ下がる鍵を睨み付ける。

無関心の権化。

僕を無色透明の檻に閉じ込める古の鍵。



僕は勇者を撃ち殺した。



魔物から身を挺してパーティメンバーを守る勇者。

傍らで僕が魔物に喰われようとする様を見ていた癖に。



僕は勇者を撃ち殺した。



魔物から村を救った勇者に村人の子供が抱き付く。

勇者は僕には向けない優しい眼差しを向け、

僕を撫でるはずの手は村人の子供の頭を愛おしげに撫でた。



僕は勇者を撃ち殺した。



賞賛に次ぐ賞賛。

魔法の閃光のようにその瞬きは勇者を輝かせ続ける。

僕は一人身も心も栄養失調の体を自ら抱き締める。

僕は、賞賛なんかいらない。

ただ――勇者(父さん)の愛情が欲しかった。



それから長き旅路の末、魔王と対峙する勇者(父さん)の頭部を――僕は後ろから撃ち抜いた。

状況を把握する前にパーティメンバーも次々に、全て。

幼い癒し手の僕がこんな暴挙に出るとは皆思う筈もない。

歴戦の英雄達といえど、背を向けていた彼等の末路は何とも呆気ないものだった。

勇者(父さん)から致命傷を受けて崩れる寸前だった魔王の蟀谷(こめかみ)に銃口を向ける。

僕の闇に同調したのか、魔王は口から紫炎(しえん)を吐き出しながら(わら)った気がした。



「―――くたばれ。」



黒煙と、盛大に蒼黒い血飛沫を上げて魔王は倒れた。

魔王が塞いでた通路の奥に、天空まで届くかのような階段を感慨もなく見つめ――その先で僕を待つであろう女を無視して踵を返す。

魔王城の庭から一輪の黒い薔薇を摘み、勇者(父さん)の亡骸に手向ける。

称えられる(愛される)事はできても――愛す方法の解らなかった哀れな勇者へ。




僕は魔王打倒後の勇者ご一行を心待ちにする祝賀ムードの街や村も通り過ぎ、

『始まりの村』と書かれた心無げな懐かしいアーチの前に立った。

一人歩き慣れた自宅への道を急ぐ。

解りきっているのに、ドアノブを一度引いてしまうのは何故だろう。

“お帰りなさい”

聞こえる筈のない声。

首から下げた鍵を鍵穴に挿し込む。



長らく閉め切りにしていた室内は()えた臭いがした。

窓も開けず自室に向かうと、以前勇者(父さん)がくれた『冒険の書』を机の上に広げる。

見習いから癒し手に昇格し、初めて冒険に同行させてもらった日から昨日まで事細かに一日の出来事が書かれている。

パラパラと捲り、一ページ目から昨日までのページを一気に引き千切った。


銃口を咥える。









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