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9話 玉砕

「……やばい、ピーンときちゃったわ。てか、美人すぎないか……」



 女騎士を凝視しながらも、無意識のうちに悠はそう言い放っていた。



「おぉ、悠にもあの可愛さが分かるか! 覚えとけ? その気持ちが……恋だ!」

「可愛い? ……美人が一番マッチしてる気がするが……まぁいいや。……そうか、これが恋か」



 彰斗の視線の先には王女。

 しかし、悠の視線の先には女騎士。

 


 会話が噛み合わないのは自明の理であったが、生まれてこの方一度もリア充になった事のない彰斗に諭されながらも自分の気持ちを認知していっていた。



 彰斗と悠が会話をしている最中も紅山稔ことリア王とその腰巾着共は王女へ必死のアプローチをしていたがそんな光景は一切気にする事なく、悠が一世一代の大勝負に出ようとした。




「なぁ、彰斗……俺、ちょっとプロポーズしてくるわ」

「なんだぁ? まぁ、悠の初恋を応援したいのは山々なんだが俺もあの王女ちゃんに惚れてしまって……へ? おい、今、プロポーズするとか言わなかったか!? せめて告白にしろよ! 飛躍し過ぎだボケ!! ……お、おい? ちょ、ちゃんと人の話は聞こうぜ? な? な? って無視すんなあああぁぁ!」



 思い立ったが吉日。

 つい先刻程前に女騎士に一目惚れした悠は直ぐ様、告白よりも何段階もグレードアップした行為を行動に移そうと恋愛に関してはピュアなハートを持った彰斗の叫びを無視しながら王女の隣にて直立不動で待機している女騎士の下へと歩を進め始めた。 



「おい、何だよ宮西。お前も王女様に惚れたクチか? だが残念だったな、王女様は既に稔君にベタ惚れ状態だ……ん?」



 勿論、女騎士の下に向かう場合は王女の隣に居るのだから最短距離で行こうとすればリア王とその腰巾着共と王女の間を横切る事になる。



 周りがちゃんと見えてればそんな事はせずに、キチンと迂回をするのだが、全く周りが見えていなかった悠はそのまま横切ろうとし、腰巾着の1人——赤石透(あかいしとおる)に話しかけられていた。




 その光景を前に悠も自分と同様、王女に惚れているとばかり思っていた彰斗は「あちゃあ……」と目を手で覆いながら言い放っていた。



 だが、その際にまたしても手の指と指の間にちゃんと大きな隙間を作っているがそこは彰斗クオリティ。


 

 王女を横切った事で透も何がしたいんだ? こいつ。と言わんばかりの素っ頓狂な声を上げた透だったが、そんな彼を一切気に留めず不思議そうな顔を浮かべる女騎士と相対した。



 しかし、そんな彼女の表情もドストライクだったようでプロポーズをする事に微塵の躊躇いも無かったのだが、起こそうとしていた行為をさらに急き立てる事となっていた。



(ぐはぁっ!! 何、その表情……天使か!? 天使なのか!? 畜生、可愛過ぎるぜ……)



 そして、一度気持ちを落ち着かせようと深い息を吐いてから



「あ、あの……貴女に一目惚れしました!」

「……は?」 



 悠はありのままを伝えるのだが、そんな事を全く知らない女騎士は咎めるかのように冷たく訊き返す。化粧っ気のない整った容姿にはどことなく苛立ちめいたものが現れており、傍から見ても悠への彼女の好感度は0だと誰でも断言出来ただろう。



「そ、それで……その……俺と……じゃなくて、僕と清い結婚を前提としたお付き合いを……」

「……私はリシャラ様の剣でありリシャラ様を守る盾だ。すまないが、男にうつつを抜かす気は無い。それに、お前みたいな軟弱そうな奴は頼まれても御免だ」



 お前は思春期の中学生か!

 と離れた場所で悠のセリフに対して彰斗がツッコミを入れていたが、それは人知れず虚空に呑まれていた。



 少々、幼さが感じられる突拍子のない一世一代のプロポーズを右手を突き出しながら実行に移したが、見事に一刀両断された事で悠は膝から崩れ落ち、両手で頭を抱えて蹲った。


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