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番外編 異世界に召喚される以前の悠の日常Part8

遅れて申し訳ない…

次回、本編。

そろそろ番外編と本編をわけやす!

「遅れてすんませーん」



 ガラガラと音を立てながらスライド式の扉を開けながら気だるそうな声を遅れてやって来た1人の男子生徒が響かせる。



 時刻は10時35分。

 3時限目の授業が始まって直ぐの時間であり、普段ならば先程の声の主である久保田静香に視線が注目する筈であったのだが、




「お前らマジで何も分かってねぇな! メイド喫茶を制服でやる? どこがメイド喫茶なんだよ!」

「……五月蝿い。必死過ぎ。きも」

「あぁ”ん!? 倉持ぃ、お前、なめてんのか? あぁ、そうかそうか。貧乳の断崖絶壁女にメイド服はちょっと酷だったか。すまねぇな!」



 教室内は剣呑な空気に包まれており、壮絶な言い合いが繰り広げられていた。




 喧嘩腰でクラス代表である倉持加那(くらもちかな)にイチャモンをつけているようにしか見えない坊主頭の男は渡嘉敷恭弥(とかしききょうや)



 以前、クラス代表を決める際に「全員で立候補しようぜー」と誰が言ったのか分からない言葉を鵜呑みにし、「クラス代表やりたい人ー?」と聞かれた時に、気持ち良いくらいにスパッと1人だけ手を挙げ、クラス代表となった渡嘉敷。



 かたや、放課後にクラス代表を決める事となった際に帰宅時間が遅くなる事が嫌で自ら立候補した学年一、メガネが似合ってるランキングで1位を見事勝ち取ったクールビューティー倉持加那。



 お互い面倒臭がりな為、面倒事は常に相方へ押し付けようとする為、かなりの頻度で言い合っている。



 勿論の如くランキングは裏ランキングであり、安定の彰斗調べであったのだが、何故か加那にバレ、ドロップキックを彰斗が食らわされていた。



「何? この状況……」



 呆気に取られながらも静香は状況を知ってるであろう友人達の下へ駆け寄った。



 しかし、



「……俺、イト……俺、イト……がっ……」

「ふんっ、紅奈さんにチクらなかっただけ、有難く思え」



 そこには放心状態となり、うわ言のように“俺イト”とひたすら呟く友人Aである宮西悠と不機嫌そうな友人Bである桜井彰斗がいた。



「彰斗、悠! どうしたんだ? これ。俺が知ってる限り、今の時間は数学の筈だと思うんだが……」



 3時限目は彼らの担任である結月未希が担当する数学?鵺の時間であった筈なのだが、誰一人として勉強をしている人はおらず、肝心の未希はカックンカックンと椅子に座って船を漕いでいた。



「あぁ、数学は結構授業が進んでるから未希ちゃんが文化祭の事に使っていいって言ったんだ。後、静香。お前、歯ぁ食いしばれ」

「あー、成る程な。それでこの残状か。納得いった。……ん? ちょっ、なんで殴ろうとしてる!? おい! 待てよ! 待てーーー」



 ガタンと席から立った彰斗に教えて貰い、納得がいったのか晴れ晴れとした表情をしていたが、一変。



 弁明の余地すら与えられず、理不尽に容赦の無い右ストレートが静香の右頬を襲い、激痛が奔る。



「いっでぇぇぇぇッ!! なにすんだよ!」

「コッチのセリフだ馬鹿野郎! お前が居なかったせいで文化祭がメイド喫茶になったんだぞ!」

「…………マジか?」

「マジだアホ。お前のせいで紅奈さんが売女(ばいた)は死ねとか言って包丁を持ってくるかもしれねぇんだぞ!」

「す、すまない……」



 先程の激昂が嘘のように萎れる静香を眼前に、はぁぁー、とため息を吐いて再び彰斗が椅子に腰を下ろした。



「なぁ。気になってたんだが、悠はどうしたんだ? 紅奈さんに別居しよう。とでも言われたか?」

「別居!? ……俺、要らない子なんだ……邪魔者なんだ……死のう」



 虚ろな目を未だしていた友人に目をやり、静香が尋ねた刹那、悠が急に我を取り戻し、目を剥いてそう叫んだ後にガンッと鈍い音を響かせて頭を机に打ちつける。




「相変わらずウチのクラスは荒れてんなぁ……」



 感慨深そうに呟きながらも、やーれ! やーれ! と数人が囃し立て、一触即発となっていた倉持と渡嘉敷へ視線を戻すと




「2日で振られた粗チンが」

「……お前は今、絶対に言ってはならない事を言った! 俺のピュアピュアな心を傷つけーーー」

「つまり童貞か。はっ!」

「表出ろやぁぁぁぁぁあ!! 倉持ぃぃぃ!!」



 胸ぐらを掴み、「貧乳過ぎるから掴みやすっ!」と渡嘉敷が嘲笑った直後、綺麗に倉持に背負い投げされ、宙に舞った後、盛大に彼が床に叩きつけられる音が響き渡っていた。

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