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8話 リア王

「な……なんだあの美少女は……神々しすぎて前が見えないぜ……」



 扉が開かれた直後、姿を現した純白のドレスに身を包んだ女性を目にした悠のクラスメイトの男子勢は皆、見惚れていた。



 悠の隣にいた彰斗も例に漏れず、眩しそうに日除け代わりにと手で目を覆うが口とは裏腹に実は見てたいのか、日除け代わりにしていた右手からは大きな隙間が空いていた。




「確かに美少女だなぁ……」



 別にここで

 ——いや、全然可愛くなくね? ぶっちゃけブスじゃないか?



 等と嘘を吐く理由もなかったので悠は素直に同意していた。

 直後、そうだろう、そうだろう。

 と自分の事でもないのにも拘らず、得意気に首肯する彰斗の行動にツッコミたくなるが刹那、全員の注目を集めていた女性が一度、咳払いをしてから悠達に向けて口を開いた。




「私はランガ王国第1王女。リシャラ・ランガと申します。この度は私共の都合により、誠に勝手ながら召喚の儀を執り行わせて頂きました。……本当に申し訳ありません……」



 前口上を述べ、目元に小さな涙を浮かばせながらティアラを頭に乗せた女性が謝罪をする。

 


 ——あれ? ライトノベルとかにありがちな傲慢王女じゃないの? 滅茶苦茶良い子じゃん!!



 と内心、べた褒めしていた悠に対してクラスメイトの男子共はどこぞの過保護な親を彷彿させるようなセリフを言い放っていた。



 事実、彰斗は「わわわっ、あ、頭を上げて下さい! 悪いのは貴方じゃない。悪いのは全て王様だ!」



 等とまだ顔も見たことがない王様をディスりながら頭を上げて貰おうと奮闘していた。



「あ、有難うございます……こんな何の取り柄もない私に優しくして頂けるとは……これ程嬉しい日がありましょうか……」



 主に男子共から慰められていた王女は社交辞令のような言葉を予め決めていたかのように一切の迷いなくスラスラと口にしていく。



 その容姿で何の取り柄もない。

 って言われても皮肉にしか聞こえないぞ?



 等と、呆れていた悠の熱だけが段々と男子勢の中で唯一、冷めていっていた。



「いやいやいや、王女様はもうそれは美しく、人類の宝と言っても過言じゃないです! 何でもお申し付け下さい。貴女様のナイトである、この不肖紅山稔(くれやまみのる)は精一杯尽くさせて頂きます!」 



 だが、王女の言動には悠を除く男子共がまるで打ち合わせでもしていたかのように否定する最中、王女のナイトだ! と名乗りあげた男が居た。



 学校では“リア王”というアダ名が定着していた紅山稔だ。

 稔はどこかの大企業のお坊ちゃんならしく、常日頃から数人の取り巻きがひっつき虫のようにくっついているのだが、頭が回らない取り巻き共と稔は良いように自己解釈していた。



 何を隠そう、“リア王”と命名したのはリア充大嫌いを地で行く彰斗である。



 稔達はリア充の王を短縮させて“リア王”と呼ばれていると思っているが、実際は大間違いだ。




 幾多の悲劇に見舞われ、哀れな最後を遂げた主人公リアの物語である、シェイクスピアの4大悲劇の1つの“リア王”を安直にも稔の不幸を祈ってアダ名にあてた、というのが事実である。



 それは“リア王”に登場する登場人物達もだいたい皆死ぬように、取り巻きのお前らもウザいからさっさと黙れよ。



 という意味も込められたとっても奥が深いアダ名であった。



 取り巻き共が「お似合いですよ!」とおだてている光景を前に、すっかりと気が萎えてしまった悠はカミサマに貰ったスキルってどうやって使うんだろ……と思いながら周りを見渡していた。



 

 その際に、視界へと飛び込んできたのは、茶髪ロングヘアーの女騎士であった。




 精緻に整った勝ち気な容姿にやや吊り上がっていたしばみ色の瞳。

 言葉を交わさずとも感じられる凜とした雰囲気等、王女とは違ったタイプであったが、その女性の騎士を目にした悠の頬にはほんのりと薄紅が差していた。

 

 

    

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