4話 根っからのクズの実力
ポーカーを提案した悠は、フォーカードを得る為に“ボトム・ディール”というイカサマ方法を実行するべく行動していた。
スキルの為ならばカミサマとの神聖なる勝負だろうと手段をいとわない根っからのクズである悠は考え無しにポーカーを提案したワケでは無かった。
地球でどこにでもいそうな男子高校生をやっていた頃、毎週のように悪友である桜井彰斗と毎週末に賭け事をやっており、その際に使われていたのがポーカーだったからだ。
負ければ1000円のハンバーガーセットを奢る、という勝負であったが、男子高校生の懐事情はかなり苦しいのだ。
その為、彰斗と悠はポーカーを使って勝負していたが最早、ポーカーでのイカサマ勝負となっていた。
そして、彰斗とのイカサマポーカー勝負にて培った中でも特に完成度に自信があった“ボトム・ディール”を実行しようとふぅ、と一息吐いてから悠はデックの一番下にセットした4枚のエースの塊——ボトムを移動させずにあたかも、まんべんなくシャッフルしているように見せかける。
それを30秒程続け、万を辞して口を開いた。
「それじゃ、配るぞ」
言葉を発した直後の#ディール__配る__#動きはもう、光速といっても良いほどに速く、そして手慣れていた。
トランプを5枚ずつ配る際に用いた時間は僅か3秒。
“ボトム・ディール”の完成度はプロのそれであり、イカサマをする為だけに鍛え上げられたその技術はもう絶句ものだ。
カミサマと勝負にイカサマを刹那の逡巡もなく使用しようと決断し、行動に移した今の悠の姿を彰斗が見れば間違いなく、こう言うだろう。
————お前、根っからのクズだわ。と。
しかし異世界に加え、チートというロマンの前であれば汚名だろうが、ドブだろうが何でも被るのが宮西悠という人間である。
イカサマを使用したというのにも拘わらず、平然と素知らぬ顔で「さ、やろうか。交換は1度だけだからな」と言い放っていた。
その表情はもう、熟練の詐欺師の顔であった。
クズという言葉以上の彼にピッタリな言葉があるだろうか? いや、ない。
「1回だけか……分かった。なら、俺は全て捨てよう」
何の躊躇いもなく持っていた5枚を全て捨てていたカミサマ。
その捨てたカードには1つだけペアが出来ており、嘘だろ!? ブタじゃねーの!? と内心驚くが、それを顔に出すようなヘマを熟練のイカサマ師がする事はなく、心を無にしながら手札にあったエース以外のカードであるハートの5を捨て、山から1枚引いた。
手にしたのはスペードの4であったが、フォーカードというブタが当たり前の1回交換の制限付きポーカーにしてはもう、ぶっ壊れレベルに最強な役を手にしていた悠に焦りは欠片もない。
「よし、それじゃあ、見せるぞ」
不安をそそるような満足気な顔を浮かべるカミサマの表情に多少の愁いが湧き出るものの、フォーカードだぞ? と胸中で連呼しながら悠が応じる。
「ふははは!! 全世界のカミサマに愛されしこの宮西悠の手札を見て驚きやがれっ! オープンッ!!」