2話 カミサマ
「……どこだ? ここ……」
先程まで悪友である彰斗と談笑のような事をしていた筈だった悠はいつの間にか、辺り全てが白に染まった奇妙な空間に佇んでいた。
「おー、やっと気がついたか。後がつっかえてるんでさっさと説明済ませるから耳の中、かっぽじって聞けよ?」
「……は? ちょ、アンタ……誰? それに……ここは何処だ?」
「だから、それを含めて話すから聞けって言ってんだろうが」
少し、荒い口調にて無精髭を生やした齢30程の男性が地べたに胡座をかきながら言い放った。
悠は周囲を見回すが、見慣れたクラスメイト達の姿はなく、オッサンと自分だけの2人となっていた。
「お前らはランガ王国ってところに異世界召喚される事になったんだ。んで、俺は地球のカミサマってもんをやってんだが、異世界を治めているカミサマの力がこれまた強くてな……。強引に異世界へと召喚される事となったお前らを地球に引き留めておく事が出来なかったんだ」
「……異世界……だと!? うおおおおおおぉぉぉ!! チートだ! チート! チートをくれんだよな? そうなんだよな?」
地球にいた頃からライトノベル等を読み、異世界に憧れる少年Aであった悠にとって目の前のオッサンが言っている事は渡りに船だった為、喝采をあげていた。
「チートっつーのか? まぁ、異世界の神から全員にスキルを2つだけ与えろって言われてるな「いやいやいや、2つと言わず、10個くらい下さいよ!!」」
後ろ頭を掻きながら複雑そうな面持ちにてオッサンがスキル、と口にするがその与えられる数に不満であった悠は割り込むようにして土下座のポーズを取りながらまくし立てる。
「あのな、俺も一応はカミサマなんだ。そんな1人だけ贔屓して、突出させるわけにゃいかねぇんだよ。だから大人しくスキルを2つ「そこを何とかお願いしますッ!! 靴でも何でもペロペロ舐めますからあああぁ!!」」
大人の対応を求めるオッサンの思う通りにはいかず、悠は粘り強くも複数のチートを貰えるよう頼み込んでいた。
「あのさ、お前って人間の誇りとか無いの? そんな見ず知らずの相手の靴を「誇りを持ってたらチートを沢山くれんのか!? あぁん!? 違うだろ!? 誇りなんてもんはそこら辺の犬に食わせたわ!!」」
呆れ混じりに悠に向かって言葉を発するが、返ってきたのは誇りを捨てた欲望に忠実な人間の怒声だった。
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そして悠がひたすら大量のチートを懇願し始めて数時間後。
ふと、思い付いたかのような表情をオッサンこと地球のカミサマとやらが浮かべた直後、思いもよらない言葉が彼から言い放たれた。
「そんなにチートが欲しいのなら……少し、ゲームをしようじゃないか。賭け金は君に与えられるであった2つのチート。そして景品は……そうだな。元々、スキルも私が適当に選び与える筈だったのだが、
————5つのチートとそれらを幾万とあるスキルの中から自由に選ぶ権利を与えよう。さぁ、どうする? 宮西悠君よ」