1話 異世界召喚
「はぁ……可愛い彼女が欲しい……そして癒されたい……」
放課後の終礼に担任の教師が教室へやって来るのを待ちながら、頬杖を木造の机でつきながら鬱々と宮西悠は呟いた。
「全く……良いご身分だな、悠さんよぉ。猫被りまくった学校でのお前なら告白すれば彼女の1人や2人出来るだろうが」
盛大に皮肉を込めながら悠の机に苛々とした空気を振り撒きながら歩み寄りバンッ、と机を両手で叩いたのは悠の幼なじみの桜井彰斗だ。
ツーブロックの髪型に、鋭い目付き。
そしてガタイの良い体から不良? とよく呼ばれがちだが、実際はロマンチックな恋を夢見るキモい男だという事は悠と彰斗だけの秘密となっている。
「うっせぇな、彰斗。猫被って何が悪いってんだ……それにしても、こう……ピーンと来るような女性は居ないものかねぇ……」
「ピーンと来るようなってどんな女だよ……。ま、猫被るのが悪いとは言わないが……はっきり言ってキモいぞ? 何が「大丈夫かい?」だよ。キモすぎてゲロ吐くかと思ったわ」
嘆息しながら彰斗は先日、日直だった同級生の女の子が運ぼうとした大量のプリントの山を然り気無く手を差し伸べ、キモいセリフを口にした悠の真似をした。
「わぉ、お前のその顔でそのセリフはキモすぎだわ……お巡りさーん!! ここに変態がいまーす!」
「うるせぇ!! 黙れ糞野郎。……それにしても未希ちゃんおっせぇな」
「確かに今日は何時もよりも遅いな……ミキティー何してんだか」
未希ちゃん、ミキティー。等と様々なあだ名を持つのが悠や彰斗の担任である結月未希だ。
低身長に加え、童顔。そして生徒達へのフレンドリーな態度から全生徒から人気の女性教師である。
未希ちゃんと呼ぶのは殆ど男子生徒だけで、女子生徒や一部の男子からは未希と先生を組み合わせたミキティーというあだ名で呼ばれていたりする。
未希は背が低い為、生徒に紛れていても違和感がない。
そんなことあってもしかしてもう教室に居たりする?
という考えの下、悠は周囲を見回してみるが視界に飛び込んでくるのは談笑したりする他生徒達だけだ。
「あれ? マジでいないんだけど。ミキティーがどこいったか彰斗知らね?」
「テメー、人の話聞いてたか? 俺がお前に聞いたよな? だったら俺が知ってるわけねーだろうがバカ」
頬杖を崩し、後ろ頭をボリボリ掻きながら尋ねると、こめかみに青筋を浮かばせながら彰斗が罵倒を吐いた。
——もっと男なら爽やかにならないと。女の子にモテないよ?
という天然か、はたまた敢えて言っているのか、神経を逆撫でる悠の発言に彰斗の苛立ちゲージが振り切れた。
「あぁ、いいぜ、やったろーじゃねぇか!! 俺だってそこそこモテんだよ。見とけ悠。数分後、テメーの笑う顔を拝む事になるだろうがな!」
「ちょ、彰斗。それ失敗します宣言だよね? ゴメン、俺が悪かった。考え直せ彰斗。俺はお前にフラれる歴16年のレッテルをはりたくないんだ!」
「うっせー!! こうなりゃ、やけくそだ。やけくそ!」
心なしか、小さな涙を浮かべていた彰斗を止めに入るが、彰斗は女子生徒達数人が固まって談笑している場所へと向かっており、悠の言葉は届かない。
——もう、ダメだ。
そう思った刹那、ガラリと教室のドアが開かれた。
「はぁ……ホンット、職員会議ってどうしてあんなに長ったらしいんだろうね! はーい! ホームルーム始めるよー! 座って座ってー!」
悠や彰斗の担任教師である結月未希だ。
——教師がそんな発言していいのか?
とクラスメイト達の心中は一致し、視線が集まるがそんな事は全く意に介さず、ホームルームを始めようと席に着くように促した。
はーい、や、うぇーい。等と伸びた返事を教室内に響かせ、次々と自分の席に着席していくが、突として教室が光に包まれる事となった。
突拍子のない不思議現象に皆、素っ頓狂な声を上げるが教室内に居た人間は1人残らず、なすがままに光に飲み込まれていった。
ノリで書き始めた小説ですが、楽しんで頂けたら幸いです♪