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四〇層ゴーレム戦・前

本日二話目になります。

最新話よりこられた方は、一つお戻りください。




 審判の塔の三九層に飛んだ俺たちは、既に戦ったことのあるスライムや岩亀を相手に体を温めていく。

 翡翠剣(デュランダル)の切れ味は素晴らしく、その名の通り岩で出来た体を持つ岩亀すら切り裂き、左腕のナックルは岩亀の頭部を軽々と粉砕した。

 これで魔力を込めていないのだから、末恐ろしい威力だ。


 ちなみに武器の素材には幾つかの等級があり、鉄とかミスリル鉱とか、素材その物を利用した武器。次いで、それらの素材が強い魔力によって変異した物で、これが魔剣と言われている。そして最後に魔力で満たされた状態の物がくる。

 それぞれ状態が上がるごとに武器の等級も上がっていく。


 一般的に魔力で満たされた物はベースの素材がミスリル鉱でも、国宝とされるほどだ。ちなみに、昔使っていた星月剣(ガラティーン)に魔力を満たした時が超越級(ユニーク)、もちろん国宝 にあたる。

 知らなかったとは言え、そんな代物を振り回していたとはちょっと驚きだ。


 そして翡翠剣は魔力で変異した状態であり武器等級は超越級 。つまり魔力で満たさなくても星月剣と同等級となる。

 この分類で言えば、その名の由来どおり魔力で満たされて翡翠の輝きを放つ時は、武器等級が上がって伝説級(レジェンダリ) と言えた。


 人類史上もっとも等級の高い武器は伝説級の上で神話級(ゴッズ) とされており、世界で五つの武器が確認されている。もっとも、最低でももう一つあることを俺は知っているので、全部で六つはあるはずだ。


 伝説級以降は『古代文明の遺物』(アーティファクト)でしか存在しない為、事実上量産型の限界は竜の素材か同等品を使った武器で、超越級止まりということになる。


 ふと、もし不死竜エヴァ・ルータの素材で武具を作ったなら、と思ったところで身震いがした。これ以上は考えてはいけないようだ。

 そう言えば、魂の抜け殻はどうなったのだろうか……!?

 俺は思わずモモを見る。モモは俺の知りたいことがわかったのか、任せろとばかりに胸を張る。


 びっくりした!


 あれだけの質量を内包してまだ十分な魔力を余らせていたのか……そして、それがなければどれだけ魔力に余裕が出来るのか……とは言っても、捨て置くって訳にもいかないしどうしようもないか。

 もしかしたら不死竜エヴァ・ルータの肉体を蘇生できれば、この体を明け渡す必要もなくなるかもしれない……誰にそんなことができるのかという話でもあるが。

 おそらくルイーゼの天恵でも無理だろう。なぜなら、この世界において始原の三種族と呼ばれる竜族は、神々の上にすら立つ存在といわれているからだ。

 もっとも、一言で竜族と言ってもランクの低い存在であれば人間族でも討伐できるのだから、天恵による肉体の蘇生も可能かもしれない。

 とは言え、勝手なこともできないので、取り敢えず忘れることにした。


 どちらにしろ、名無し(ネームレス)の竜素材でさえ加工出来る人は限られる。名有り(ネームド)の竜とか、誰にも加工出来ないだろう。


 ちなみに『魔力付与』エンチャント・マジック『失われた技術』(ロスト・テクノロジー)になりつつあるので、星月剣や翡翠剣は本来存在しない剣になる……訊かれた時は『古代文明の遺物』と誤魔化すのが良さそうだ。困った時に使える便利な言葉に感謝しよう。


 更に余談だが、ルイーゼの聖鎚は最上級(レア)で、マリオンの魔剣ヴェスパは超越級にあたる。もっとも聖鎚はその質量から発生する威力だけを見れば上位の武器に並びそうだが。

 あぁ、うっかりしていたが、聖鎚も魔剣ヴェスパも『魔力付与』しているんだよな……もう、開き直るか。


 獣人領で知り合った鍛冶屋のゴードンに説明を受けるまでは、細かいことを知らなかったのでその力を振るったが、色々と驚かれる訳だ。『魔力付与』自体が天恵と思われていたしな。


「しかし、魔物が可哀想だと思ったのは初めてだ」

「同意」


 マッシュが呟き、ミーティアが同意する。

 魔物には魔物の言い分があると思うが、俺は食材や素材としか見ていなかったな。これが魔人族とかになれば、多少は思うところもあるが。


「しばらく見ないと思ったらとんでもない物を用意してきたな」

「それはもしかして素材に竜の物を使っているのか?」


 マッシュの疑問に、魔術師ロイスが的確に当ててくる。


 マッシュたちパーティーは五人組で、前衛を担うマッシュとドルバン。共に二メートルほどある大男だ。中衛には情報収集や罠の発見、追跡の技能を持つベンツ。直接戦闘は行わず、戦闘中は魔術師ロイスの護衛をしている。そして弓を扱うオーバン。以上の五人で構成されている。


 なかなかバランスの良い構成だ。強力な攻撃魔法と回復役をロイス一人に依存する為、常に魔力に余裕を持っておく必要があるとは言え、単独パーティーでも四〇層を超える実力は十分にあると思えた。


 マッシュたちだけなら、危険を冒してまで四〇層に挑戦する気はない雰囲気だったが、それだけ俺たちが信頼されているということだろう。

 細かいところで何度も助けられているし、その期待には十分に応えたいところだ。


「それじゃ、ご対面と行くか」

「あぁ、体も温まって丁度いいころだ」


 マッシュに答え、四〇層への転移門に乗る。

 飛んだ先は一階層まるまる使った大広間になっていた。どのようにして天井を支えているのか疑問になるが、事実としてそれだけの強度を保つ方法があるのだろう。

 通常の階層とは違い、天井の高さも一〇メートルはありそうで、第一印象はとにかく広い。


 そう言えば、マッシュの転移に乗る形で三一層から入ったから、ボスフィールドは初めてだったな。


 広間の反対側には、遠く一〇〇メートルほどの距離があるにも拘わらず、巨大に見えるゴーレムが鎮座していた。

 灰色の岩の塊に見えるそれは、四肢に当たるものがあり、関節の部分には魔法陣が浮かび上がっていた。

 いくら魔法のある世界とは言え、岩が液体のように動く訳ではないのか、柔軟性を求められる部分は魔法的な要素で出来ていた。


「前にも似たようなのを見たことがあるな……召喚魔法のゴーレムか」

「召喚魔法まで使えるとか言うんじゃあるまいな」

「さすがに俺は使えな――いな」


 もしかしたら使えるかも!?


 適性があるかどうかは使ってみないとわからないが、異世界召喚魔法は使えたのだから使えそうな気もする。

 後でリゼットに相談してみよう。楽しみが増えたぞ。


「それじゃ作戦は決めた通り、俺とドルバンで正面を押さえる。アキトたちは背後からの攻撃で、ロイスとオーバンの護衛はルイーゼの嬢ちゃんに頼む。ベンツは周りの異変を見逃すな。それと……」

「私は後で見てる」

「だそうだ」


 ミーティアの扱いは正直迷っていたところだが、自分から下がっていると言ってくれたので、後で楽しんでもらうことにしよう。恐らくこの戦いに命の危険はないと考えている。


「ルイーゼがいればそこが一番安全だ。ミーティアと二人の守りは任せる」

「はい、アキト様」


 ルイーゼに任せられることで後顧の憂いなく戦いに参加出来る。


「アキト、計画通りにしばらくは手を出さないでくれ。俺たちも戦った感触くらいは欲しい」

「作戦通りでいくさ」


 序盤はマッシュたちがメインとして戦い、ゴーレムの特性を調査する。これは、今後攻略を目指す後続に対して、情報を残す為でもある。

 その為には、ある程度ゴーレムを自由にさせる必要があり、そこに俺の攻撃は邪魔になると判断されていた。ぶっちゃけ直ぐに倒されては困るという意味で。


「それじゃ――」

「少し待つ」


 行くか! と声を掛けようとしたところで、ミーティアからストップが掛かった。

 多少ずっこけぎみに振り向くと、竪琴を構えたミーティアがいた。

 そこから紡がれる音色に、心が躍動する。


「ここは我らが戦域」


 そして、歌われるのは聞いたことのない歌だった。

 決して大きくはないのに大広間に響くその声は、凜とした気高さを持ち、竪琴から溢れ出る音に乗って空間を満たす。


「手に持つは勝利の(つるぎ)、眼前に塞がる全ての敵に一撃を」


 ミーティアが歌う。竪琴の弦が弾かれ、歌が踊るように耳を打つ。

 景気付けだろうか?


『戦闘魔曲』(バトルソング)か、これは助かる」


 知らない言葉が出て来た。

 でも、それが示すものは既に俺も感じていた。

 その歌声を聞くだけで気持ちが高まり、良い具合に緊張感と高揚感に見舞われる。魔力が自然と活性化し、俺の場合はむしろ押さえるのが大変なくらいだ。


「気持ちの良い曲ね」

「そうですね、負ける気がしません」


 マリオンもルイーゼもやる気だ。いや、殺る気だ……主に目付きが。


「二人とも作戦通りにな」


 コクコクと頷く二人から目を離し、ゴーレムを見据える。結構派手に準備をしているけど、どうやら近付くまでは反応しないようだ。

 逆に言うと奥まで行かなければ戦いにならず、状況が悪くなれば直ぐに逃げるのも難しい。


「ミーティア、行ってくる!」


 歌い続けるミーティアに告げ、盾役のマッシュとドルバンを先頭に駆け出す。『戦闘魔曲』の影響もあいまって身体が非常に軽く感じた。


 良く動く、歌の効果も侮れないな!


 一気に駆け、それでもゴーレムに動きが見られたのは、その距離が五〇メートルを切った辺りだ。


 鎮座していたゴーレムが、その巨大な腕を引き摺るようにして立ち上がる。床の大理石を削り取るような音がゴーレムの巨大な質量を感じさせた。

 立ち上がったゴーレムの高さは五メートルに達し、胴は幅で三メートル、頭が比較的小さい為ずんぐりむっくりとした体型だ。

 巨大な拳は一メートルに達し、ただ振り下ろされるその拳すら人を圧死させるに足りるだろう。

 何かしらの魔法効果があるのか、全身が茶色いオーラで包まれていた。魔闘気とは違う感じだが、詳細は不明だ。


 立ち上がったゴーレムは守護獣の名を飾るにふさわしい存在感を持って、俺たちの前に立ち塞がる。





引っ越しは無事? 終えました。

片付けという大物が残っていますが、取り敢えずパソコンは使えるようにしたので問題ない?

第二巻の書籍か作業も平行しておりますので、今しばらく更新時期が安定しないと思います。その分、第二巻も良い物にしたいと思います。

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