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四〇層に向けて・後

本日三話投稿予定中第三話目。





「取り敢えず武器の検証は粗方済んだな。

 火属性を与えればスライムにも効果があるし、ウィル・オ・ウィスプにはルイーゼの聖鎚が効果的だ。

 そして残念ながら闇属性は今のところ特に効果的な魔物がいない……」

「アキト様、まだ三九層ですから」

「そ、そうだな。これから活躍するかも知れないな」


 さて、このまま進めば四〇層で、定期的に復活する守護獣を倒さない限り先には進めないわけだ。

 一〇層毎に節目となる守護獣のいる場所には入り口にも転移門があり、一度誰かが中に転移されると出てくるまでは誰も入れないらしい。

 その転移門も大きい物ではなく、大人なら一〇人乗るのがせいぜいだろう。

 つまり守護獣戦に大人数で突入することはできないと言うことになる。


 今までと同じように四〇層を超えている人がいればスルーもできたが、守護獣を倒せないようならその先にいる魔物も楽ではないはずだ。

 それにもし四〇層を越えることができれば、しばらくは素材を独占できるのだから、簡単にはスルーさせて貰えないのが普通だ。

 いくら人が増えてきたとは言え、三十一層までスルーさせてくれたマッシュたちが例外であり、その時に周りの冒険者が驚いたのも納得できた。


 ちなみにマッシュたちのパーティーは、四〇層に到達したオルトガたちに抜かれるまではトップ集団だったらしく、強権の発動も黙認されている感じだ。

 冒険者ギルドとしては三〇層の素材が多く回ってくるので、マッシュのように新人を発掘してはどんどんと昇って貰いたいみたいだが、無理して全滅されるのも困るので歯がゆい思いをしているらしい。

 どの世界でも人材の育成に時間が掛かるのは一緒のようだ。


「過去の最高到達点は五〇層で、そこへ最後に到達したパーティーが敗退してから既に十年ほど経っているって話だったわ」

「あぁ。四十層を超えたのは三パーティーほどで、五十層到達はその内の一つ。

 そのパーティーが五十層の守護獣を相手に全滅して、残りのパーティーもいつの間にか途絶え、四〇層を越えて転移出来る冒険者は今現在いないらしい」

「アキト様。次が四〇層ですが、直ぐに向かいますか?」

「いや、ティティルの件が片付いてからにしよう。

 上手くいけば新しい武器が手に入るはずだ」


 三十九層を突破した先はバルコニーになっていた。

 ここは塔の外周にあたるので、当然周りは絶景と言ってもおかしくない光景だ。

 眼下に広がる領都シャルルロアの町並みは全貌が一目で見えるほどで、覗き込めば吸い寄せられる錯覚に陥る。

 これで風でも強かったら本当に吹き飛ばされそうだが、不思議と空気の流れを感じる程度の風しか吹いていない。

 それがたまたまなのかこの塔の魔法効果なのかはわからないが、怖さが半減するので良いだろう。

 半端な高さだと怖さを感じるが、ここまで高くなるとなんかもうどうでも良くなってくるのが不思議だ。

 モモは全く怖くないのか、バルコニーの手すりに立って、クルックルッと回っている。

 落ちても精霊界に逃げ込むだろうから、好きにさせておく。

 ルイーゼがハラハラしているが、そんな様子を見せるのが珍しいので、俺はその珍しい光景を堪能する。


 片やマリオンは腰に両手を当て、四十層の更に上にある五〇層あたりを見つめていた。

 俺たちは過去に何度も生死に関わる戦いに身を置いてきた。

 そんな時、結局最後に物を言うのは生き抜く為の力だと思っている。

 全てが避けられない戦いだったとは言わない。

 でもそんなことは後になってからわかることで、結局の所偶然であれ必然であれ戦いは起こる。

 だから俺たちは戦いの中に身を置いて、その力を高めてきた。


 弱ければ死ぬ。死にたくないから戦って力を付ける。戦えばいつか死ぬ。

 全く以て矛盾している。

 戦闘ジャンキーというわけでは無いと思っていたが、最近は否定出来ないな。


「この先は鍛錬に丁度良いかもしれないわ」

「ここまでと違って緊張感のある戦いになるだろうな。

 仲間がもう一人二人欲しいところだな」


 昔の仲間がいれば最高だが、みんなそれぞれやる事があるからなぁ。

 ずっとは無理でもスポット的になら調整次第でなんとかなるだろうか。


「いずれにしても、まずは四〇層の守護獣が相手だ。

 俺の考えでは装備を調えれば倒せる程度で、魔物で言えばBランクを少し上回るくらいと見ている」


 Bランクの冒険者というのはかなり少ない。

 Cランクであれば十分に生活が出来るので、そこから危険を冒してまで先を目指すとなると限られていた。

 それでも名声を手にする為、より多くの富を得る為、自らの力を誇示する為と様々な理由で上を目指す者はいる。

 色々なパーティーに声を掛け、引き抜いて集めれば四〇層の守護獣を倒すくらいの戦力は得られるだろう。

 引き抜かれるパーティーの方としても、四〇層を超える転移の権利は魅力だったようで、その時は上手く条件が噛み合ったようだ。

 実際、過去に攻略された時はそうしたらしい。

 だが、権利だけ得ても結局四〇層をまともに攻略するだけの力があるわけでもなく、四〇層を攻略したパーティー以外に五〇層まで行けたパーティーはいなかった。

 そんな事があって、結局仲間を引き抜かれるだけでうまみの無い話となって以来、そうした大々的な引き抜きによる攻略は行われていないとか。


 先行していたオルトガは四十層の守護獣を相手に二度敗退しているらしく、仲間が一人亡くなったと聞いている。

 そうした犠牲を出しながら抜けた先へ簡単に連れて行ってくれとは言えないし、言う気も無い。


 そして敵の情報を公開するかどうかは冒険者本人に委ねられている。

 通常はギルドが買い取るのだが、冒険者の利益を守るのもギルドの思想なので強制力は無い。

 野心的に取り組んでいるオルトガが守護獣の情報を公開するとは思えないので、俺たちが知っているのは四十層を守る守護獣がゴーレムだと言うことくらいだ。

 守護獣なのにゴーレム。なんか矛盾しているなと思ったが、そもそも守護獣と呼び始めたのは今の人間であって、塔を作った本人ではないのだろう。


「一般的なゴーレムの特徴は物理耐性と魔法耐性が共に高く、動きはそれほど速くありません。

 巨体が産み出す質量任せの攻撃が中心ですが、精霊魔法に似た属性をともなっていることがあり、魔法には注意が必要です。

 他にも守護獣……この場合は守護者でしょうか。

 それに見合った能力を隠し持っている可能性も考えられます?」


 情報担当はルイーゼ。

 最後の最後で首をコテッと傾げたところを見ると、ちょっと自信が無いようだ。

 俺もわからないが「可能性は大いにある」と答えて誤魔化す。


 精霊魔法を使うには生まれ持った適性が重要だ。

 適性が全くなければ精霊魔法を使うことが出来ない。

 逆に強い適性を持っていれば相手の精霊魔法による抵抗力も上がる。

 精霊に愛されると無効化することまで出来ると言われているが、真実かどうかは不明だ。


「ゴーレムの使う魔法の属性が知りたいところだな」


 出来れば相対する『対抗魔法』(カウンター・マジック)の準備をしておきたい。


「まぁ、いずれにせよ三人で挑むのはリスクが高いだろうし明日からは仕事だ。

 対策は道中でゆっくりと考えれば良いさ」


 新装備次第では意外となんとかなってしまうかも知れない。

 むしろ四〇層より五〇層攻略に向けての準備の方を始めておいた方が良さそうだな。


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