世界創生
一日目、暗闇に光をつくり、昼と夜を名づけた。
二日目、天をつくり、天と地の水を区別した。
三日目、下の水を集めて乾いた土地に名をつけ、大地に植物を生やした。
四日目、昼を照らす太陽、夜に輝く月と星をつくった。
五日目、海の生き物と、翼のある鳥をつくった。
六日目、地に生きる獣や家畜をつくり、人間を生み出した。
七日目、全てをつくり終えて休んだ。
神様は、世界を七日で創りあげたという。
最後に人間を創って満足して、人間に世界を支配させたのだと、何かの宗教で言っていた。
とっても適当で、とっても簡単に創られた世界に、わたし達は住んでいる。
苦しんで苦しんで、怪我をして絶望して、苦渋と幸せを噛み締めながら成長し、老いて、死んでゆく。
それは多分、とても滑稽で、とっても美しく幸せな生き方なのだろう。
わたしは人間が嫌いだった。
人の悪意や欲望は恐ろしくて、幼い頃から他人が怖くて、成長してからも隣人にさえ怯えて暮らした。
どっかの誰かはそんな人間が大好きだと言うが、わたしにはどうしても、そう言い放って笑顔を作ることはできそうにない。
この世は恐ろしく不完全だ。
きっとそれは、神様が七日間という短い時間で世界を創ってしまったからだと思った。
だから、もしわたしだったら、わたしが世界を創るならもっと時間をかけて、きっときっと完成した世界を創ってやるって、
……………そう、思った。
「第×□△×△◯世界の創生状況はどうですか、■■■■さん」
時々こうして顔を覗かせて、嗜好品を差し入れ代わりに置いていく天使が、ふとそう問いかけてきた。
どうしてか、酷く懐かしく感じる珈琲をカップを傾けて口の中に含んで飲み込み、わたしは困ったように目尻を下げる。
「すみません、もう暫くかかりそうなの。長く待たせてしまってごめんなさい、天使さん」
いえいえ、僕達に時間の概念は無いですから。と告げて去っていく天使を見送って、わたしはまた作業に戻った。
今の制作段階でシミュレートしてみても、数千年後の未来には人間が神に反逆を起こすという結果が出ているのだから、まだまだ創生の余地がある。
――――嗚呼、今日もまた世界は完成しない。
読んで下さった方、ありがとうございました!
この作品は、千文字以内の短編集を作るときに書いていたものの一つになります。なので本当に短いのですが、少しでも楽しんで頂けたのならば幸いです(*´ω`*)