サキミコンコン其ノ肆
004
所変わって、放課後の屋上。
僕はこの場所から、放課後に夕陽を見るのが日課である。
まぁ。
単に、屋上は生徒の立ち入りが禁止で、人がこないから、落ち着けるという理由である。
僕と空との境界線のように緑色のフェンスが並び、そこから下を見下ろすと、帰宅する生徒や部活に勤しむ生徒が見える。
そんな、時間の流れを忘れるようなこの場所が僕のベストプライスであった。
「何を黄昏ているんだい、少年」
そう言って僕の前に現れたのは、朝方僕に仕事押し付けてどこか行ってしまった荒さんだった。
「荒さん、どこ行ってたんですか」
「なんだ、仕事を押しつけたことを怒っているのか」
「いや、別に怒っているわけじゃありません、ただひとこと言ってくれてもよかったじゃないですか」
そう言うと、荒さんは少し微笑んで僕に近づいてきた。
「まぁ、急用が入ってね、君も知っているだろ、例のうわさを…」
「やっぱり調べていたんですか」
「そんなところだよ、だが今回は私の出る幕じゃなかったみたいだね」
荒さんは夕方の校庭を見ながら僕にそういった。
「出る幕じゃなかったんって、それじゃあ今回の件はどうするんですか」
「そう焦るな少年、私の出る幕がなかったと言う事は、私よりも適役の人間がいると言うことじゃないのかい」
荒さんからそういわれて僕の脳内に幸さんの顔がよぎる
「もしかして、幸さんですか」
「察しがいいね、まぁ今回の件も先に気がついたのはあの子だったしね、それにおまじないなんて私の専門外だろう」
確かにその通りであった、荒さんの専門は物理的に対処できるものだからである。
物理的といっても霊的なものや妖怪的なものそんなものを切っている時点でもう物理的でも何でもないような気がするが、荒さんから言わせればそれがどんなに存在であれ意思を持ち魂があるのならそれは切れるものだとのことである。
「そんなに心配するな少年、あの子の事だいつも通りうまくやるさ君の時と同じでね」
荒さんは僕の顔を覗き込むとそういった、僕はそんなにも人を心配するような顔をしていただろうか、自分の顔など自分ではよくわからないがきっと僕は僕の命の恩人、僕の大事な人、僕が守ると誓った彼女のことを無意識のうちに心配してしまっていたのだろう。
「すいません、ありがとうございます」
僕がそう言うと、荒さんはとても優しい顔した。
「そういえば、荒さんはどうしてこんなところに」
「どうしても何も放課後に立ち入り禁止の屋上てま何の意味もなく残っている生徒を注意しに来ただけだよ、生徒会長としてね」
といい、荒さんは キメ顔(?)をする。
「そういうことですか、わかりました素直に帰りますよ」
僕はすぐにフェンスに立てかけるように置いていたカバンを手に取りそそくさと帰ろうとした。
「そんなに焦るな少年、なぜ君は私と話すときにそんなに慌てるんだい、私はそんなに怖いのか」
「そんなことありませんよ、ただ妙な威圧感があるだけで…」
僕がそういうと荒さんはあからさまにムッとした表情をとる。
「少年よ、それはなかなかに傷つくぞ、私だって年頃の乙女だぞ」
そう言って、次に荒さんは頬を赤らめた。
この人は時々こうやって僕を試してくるから困る。
まぁ困るといっても僕的にも嫌では無いのだが。
「わかりましたよ、すみませんでした、今度から気をつけるようにしますよ」
「いや、わかってくれればいいんだ、それでだ少年、君は潔く帰ると言ったな」
「はい、今から帰りますけど」
何を当然のことをと僕は思い、少しポカンとした。
「そうか、実を言うと私も偶然にも今から帰りなのだが、よかったら一緒に帰らないかい、もう一度言うがあくまでも偶然だからね」
なぜか、偶然と言うことをことさら強調する荒さんであったが、まぁ、僕と荒さんは一緒に帰る事になった。
僕が現在住んでいる、恩妙寺家にーーー。