サキミコンコン 其ノ壱
001
恩妙寺幸。
恩妙寺家の次女。
黒髪、ショート、生真面目、天然、陰陽師
彼女を構成する要素を一つ一つ上げって言っても良いのだけれども、それにもきっと限界がある。
だから僕は、僕の分かる範囲で彼女のことを話そうと思う。
僕が彼女と出会って、もうかれこれ一年くらい経つ。
これは、刀に憑かれた僕と彼女の物語が終わって一年立つという意味でもある。
彼女と出会ってからの一年間、縁あって僕は、彼女の家――恩妙寺家でお世話になっている。
だが、僕と彼女の出会いの話の全貌はまた今度にして、今回は彼女という人を知ってもらうために、彼女が解決した厄災を一つ語ろうと思う。
憑依型の妖怪を専門とする彼女だからこそ解決できた厄災。
だけど、少なくとも、彼女が一人で解決したわけでもない。
まぁ。
これはあくまでも僕の視点からでしか話が出来ないし、この厄災の被害者のことも僕は知らない。
そもそも、今回の厄災に被害者なんてものはいたのだろうか。
結局、被害に遭っていようといなかろうと、今回の厄災の発端となるべき原因は自業自得な部分が多い。
けれども、もしもアレをはやらせた人物がいるとすればそいつこそが今回の悪役と言えるのだろうけれども、はっきり言って、今回の厄災ではそんなやつは僕の前に現れなかった。
現れなかったが故に簡単に解決したとも言える。
もし、現れていたとしても、人間相手に僕たちは何もすることはできない。
あくまでも僕たちが相手取るのは、人ならざるものだけなのだから。
こんなふうに言ってしまうとなんだか無責任なようにも思えるのだけれども、そもそも僕たちには起きてしまった厄災に対する責任なんてものは最初からありはしない、むしろ責任があるのは被害者気取りの加害者たちの方だろう。
そいつらが引き起こしてしまった厄災を、そいつら自身で解決できるのが一番いいのだが、それもそれで不可能な話だ。
だから、変わりに、人知れず僕たち―――陰陽師が、変わりに解決している。
そんなわけで、この話を進めていこうと思うのだけれども、折角なので彼女たち恩妙寺家四魂姉妹、全員のことをこの際だから紹介しようと思う。
彼女たち。
恩妙寺家長女、恩妙寺荒。
恩妙寺家三女、恩妙寺和。
恩妙寺家四女、恩妙寺奇。
そして、今回の主役、恩妙寺幸。
この四人のことと、今回の厄災の全貌を僕、八栗寺解は語ろうと思う。