プロローグ ~異世界転移事件~
「きもちわりぃ・・・」
「おいお前話しかけてみろよ」
「嫌だよ気持ち悪い」
「なにあの人怖い・・・」
俺の名前は 柊 真
今日は高校の入学式、晴れて新入生となった俺だが・・・
案の定周りからは罵る声が聞こえてくる。
聞こえてるんですけど・・・。
心の中でそう言うと、ため息をつく。
慣れたもんだ。小学校から経験してたからなんら苦じゃない。
一時期は、高校デビュー!なんてものも考えたけど
それができるはずもない。俺はチキンだ。
目を隠すように垂れる前髪、ヒョロヒョロの体、
緊張からか、ぎこちなく猫背で廊下を歩く俺。
自分でもわかる。近寄り難い雰囲気を纏っていると思う。
「起立!着席!礼!」
場所は変わって教室、俺のクラスは1年6組だった。
1クラス40人、1学年6クラスあり、全校生徒で720人いる。
男女比は五分五分だ。比較的この学校は美男美女が多いらしい。
まぁそんな事、俺には関係ない。
どうせ俺は高校でもイジメられるのだから。
担任は安藤 由紀先生。
140cmと小柄な体に茶色のボブヘア。
癒し系と言わんばかりのほわほわした先生だ。
緊張しつつも必死に学校のルールやらを説明する先生を尻目に
これから始まる楽しい高校生活に目を輝かせ、近くの席の者と挨拶を交わしたり自己紹介したりしている中
俺は一人殻に閉じこもったように、自分の席に座っていた。
「そういうわけで、これからよよしくお願いします!」
あ、噛んだ。
緊張で噛み噛みな先生、その愛くるしい姿に
さっそく数人の男子生徒が釘付けになっている。
冷めた目で男子生徒を睨む女子生徒もいれば
女子生徒の中にも先生に興奮した視線を向ける者がいる。
その後、恒例の自己紹介タイムがやってきた。
「じゃあ次!」
順番が俺の前の席まで回ってきた。
「はい!」
俺の前の席の人が立つと椅子が勢いよく下がり
机に突っ伏して前に突き出してた俺の手に当たる。
「あ、ごめんよ」
そういうと前の席の人は俺に振り返り軽く頭を下げ
にっこりすまいるを向けてきた。
短髪黒髪の爽やかボーイだった。
身長は180cmくらいあるであろう。
モテホルモンムンムンの青年だ。
「斎藤健と言います、よろしく!」
そう一言告げると席に座る。
女子生徒の視線が此奴に釘付けである。
しかしチラホラ俺に向いてる視線も感じる。
そりゃそうだ、イケメンの後ろには気持ち悪い男がいるのだから。
斎藤の魅力はより引き立ち、俺の気持ち悪さもまた引き立つ。
女子生徒が不快そうな目をしながらコソコソ言ってるが気にしない。いつものことだ。
「じゃあ次の人~」
先生の言葉にビクッと反応し、俺は立ち上がる。
今の見た・・・?
あの人なんかきもちわるいね・・・
なんて声が聞こえてくる。
聞こえてるぞメス共・・・
まぁいい。俺がこんな容姿してるのがいけない。
そう自分にいいかせ、どもりながら自己紹介をする
「柊 真です。よろしくお願いします・・・」
周りからクスクス笑う声が聞こえる。
もう慣れっこだ。うん。全然なんともないよ。うん。
その後、自己紹介を終え
体育館で入学式があるので先生の誘導のもと、移動した。
体育館には720人+α(先生や保護者等)がびっしり詰まっていた
再び一人ずつ、名前を呼ばれ、校長の挨拶、生徒会長の挨拶、等々を終える。
「ではこれで、第○○回、入学式を終わります」
その時、"ソレ"は起きた。
ゴゴゴゴゴゴ
地震・・・?
まさにゴゴゴと音を鳴らしながら視界が揺らぐ
それはどんどん強くなっていくと、足元がピカっと光った
な、なんだ!?
周りも驚いている。
足元で光ったそれは
どこかで見たことのある物だった。
魔法陣・・・?
それはまさに魔法陣であった。
ゲームとかに出てくる魔法陣、体育館の床一面に魔法陣が広がっていく。
そのまま光が強くなっていき、やがて視界が真っ白になった。
"異世界転移事件"
後にそう呼ばれる事になるその日。
一瞬にして体育館に居た全生徒と数人の教師がその世界から消えた。