夜中のつぶやき
物語は、読むのも書くのも、大好きだ。
読むほうだとその物語の世界の住民になった気分でわくわくするし、書くほうだとちいさな物語の世界の神様になれてる感じがする。
神様はちょっと大きすぎたかな、完成させないと世界は成り立たないもんね。
☆
「起きてる?」
ノックもなしに部屋を開けてそう低い声が聞こえてきた、慌てて顔に近いソレを安全な場所に隠そうと手が動きかけたが寸のところで制した、下手に動くとバレてしまうかもしれない。
枕に顔を埋めてすこし大きな呼吸を繰り返す、冷房のかかった部屋なのに今の出来事で額からじわじわ汗が浮かんでくる。
ぎゅっと目を瞑ってると後ろから安堵の息とそれから静かに扉を閉める音、それが過ぎた5秒ぐらい後に枕から顔を離してふうっと息を吐く、片手で隠してた携帯を持ってきて電源をいれる。読みかけの小説が画面に映り文に目を走らせる。
寝れないから少しだけネットに潜ろうとして、凄くいいサイトを見つけてから軽く1時間経ってる、いずれ眠気がくるだろうと思ってとった行動が逆の効果になっていた。
オリジナル小説で、まだ完結はしてないサイト、1部の終わりまで読んだら寝ようと決めて今最後の話を読み進めている、頭に物語を整理しながら、個人でよくこんな事が思いつけるなあなんて感嘆の吐息が知らずこぼれる。
私も趣味で物語を書いてるけど、だいだい三日後には放置してる、うん。三日坊主というやつ、何度も「これっ」て決まったお話が未完でぐたぐたのまま薄暗い場所に放られている。
(また、書こうかな)
最後に書きなぐった勢いだけの小説から、もう何年か経ってる、その間たくさんの本や勉学を学んできているからきっと今は昔より文章の流れも上手く繋げられるだろう。
(でも、前みたいにしない、勢いだけじゃなくてちきんと世界観を決めて)
心の中でそう決めこむと、サイトのトップページをお気に入り欄に入れて携帯端末とランプの電源を切って頭ごと布団に潜り込んた。まだ胸の中で沸騰する高揚感が残っているが物語の世界を考えていればいつか消えるだろう。
(昔の作品の子……登場させよ、見返すのは恥ずかしいけど)
ひとり、布団の中で考え始めたちいさな物語が、世界に大きな波紋を広げるがどうかは。まだ誰も知らないこと。