幼い頃の私~幸せの形~
それは夢だった。
男女が出会い、幾許かの時を経て夫婦となり、子を産んだ。
子供の名前は、リリー。
つまり私だった。
その中で私は、それなりの生活をしていた。
そうして六歳の誕生日。
リビングにつがなる扉を開いたところで目が覚めた。
「悲しい夢・・・だったなぁ」
そう確かに私は今日六歳になった。
孤児院で、夢とは違い。食堂で祝ってくれた。
青年は、王都に帰っていった。
彼のイタズラは、あの日以来ぱったりとやんだ。
なにか思うところがあったのかもしれない。
それともあの日、彼は勇者たちから話を聞かされていたのかもしれない。
ともあれ暴挙其ノ四を発動させずに済んだことで一安心といったところだろう。
徐々にだが、院内の空気も明るくなってきた。
でも彼は私を見ない。
いや多分見ているのだろう、こちらがそれに気づくと視線を背けるだけで。
二年間も繰り返されてきたのでいい加減にして欲しいのだが、あちらは多感なお年頃。そのまま関係者がづかづか入ってきていいものではない。逆にこじれてしまう。
私は静かに彼の心が落ち着くのを待った。
sidechangeto??
七年か、私は今でもあの日の行いを悔いている。
その程度で許される行為ではなかったのだがな。
彼女の墓はない、そんなものなど作ることはできなかった。
あの雪の日、なぜお前は早く来たのだ。
過ぎたことばかりが私の中に残る。
私は妻を愛していた、あの日の過ちですら彼女ではなく妻の顔しか浮かんでいなかったからな。
今は下の子も順調に育っている、妻とあの日のことを話したが妻は責めてこなかった。
ただ一言、なぜ話してくれなかったのとしか言わなかった。
あの日以来妻に逆らえた試しはない。
私は今から彼女との約束を果たす。
私は、これから二つの家を・・・潰す。
sidechangeto??
私はひとりで酒を飲んでいた。
「失礼しま・・・父上、また飲んでいらしゃったのですか?」
「またとはなんだまたとは、もうそんなに飲むことはないだろう。これはたむけ酒だよ」
「・・・義兄のですか」
「飲むか?昨日大鷲から手紙が届いた。今日中に蹴りがつくそうだ」
「そう・・・ですか。仕方ありません。一杯だけですよ、私はゴタゴタが嫌いですから」
「妻に似て育ってくれてこれほど安心したことは、ない」
「父に似て欲しいと、母には言われましたけどね」
「そうか」
そう言って、私はベルを鳴らす。
「何のようでございましょうか、旦那様」
相変わらず、今までどこにいたと思われるような執事だが、信頼はできる。
何よりあの日のことを私よりも深く胸に刻んでいるのだろうからな。
「酒とグラスを二つ・・いや、三つだな。用意しておいてくれ」
「かしこまりました」
乾杯をしよう、私は決して天国へは行けないのだから。
誰にとっても彼女の事件は幸せとは程遠い結果となってしまったことだけは憶えておいてください