嵐の中の私~そして汚泥は啜る~
その馬鹿はいやらしい笑顔で近づいてきた。
「よくここまで負けずにこれたね、でも僕たちには勝てないよそうだろう」
後ろを向くと皆目を伏せる。
「買収?」
「そんなことはしないよ、ただ僕の権力を「間抜け」っ!無礼だぞ!!」
「無礼?権力なんてこの学園では関係ないはずでしょ。王様がそう宣言したんだから、そうじゃなければ、この国に、優秀な平民なんて言葉根付くと思う?良くて普通の貴族、最悪金の虫いえ害虫ね。そんな言葉が平民のあいだで、いくらでも囁かれると思いますが?」
「・・・」
「まあいいでしょ、私が全力出すだけですから」
「は?」
「後ろの方たちは、手を出さないでください。わたしは手加減が苦手なので下手をすると殺してしまうかもしれません」
殺気をこめながら、睨みつけるとみんな首振り人形のように縦に振った。
「ありがとうございます」
殺気を緩めると、みんなの顔が安堵したような顔になる。
「ですが、何らかの理由で反故にされた場合。本人の意思、無意思に関係なく消すつもりなのであしからず」
「消すだと?できるのか、いやそんなことをすればお前は大罪人だ。できるはずがない」
「いいえ、これに私の意志は関係ありません。私を敵意を持って傷つけたのなら、自動で発動するんです」
そう言って彼らに背を向けた。
先生の目が届かない所に場所を移し、いざ勝負というその瞬間に私の胸に刃が生えた。
これであたしの仕事は終わり、そのはずだった。
「ハァハァ、・・・あの化物は?」
「もう追ってきていません、ですが」
「とんだ無駄骨を折っちまった。・・・金が払われることはないみたいだね」
「そうですね」
うっそうと茂る森の中、私たちは乱れた呼吸を整えながら先ほどの光景を思い出していた。
標的の胸にきちんと刃を突き立て、こちらの姿を見られずに殺した。
その直後、依頼人の顔が驚愕と恐怖に歪んだ。
その顔に危機感を覚えた私は、仲間に指示を出すと振り向ことなく依頼人の横を通り過ぎていった。
響く悲鳴が誰のものか言うまでもない。
しばらく、木々をなぎ倒す音がしていたがその音は今はもうしていない。
「ここで私らは解散、バラバラにここから撤収するよ。他の班は?」
「妨害にあいましたが、全員無事とのことです」
「そうかい、ならこのままずらかるよ」
私は、ターゲットの生死を確かめることなくこの場を去った。
それで何が変わるかはわからないが確かめに行かなかったことを、信じてもいない神に感謝したことだろう。
それを私が知れたかどうだかは別としたて、だ。