嵐の中の私~静かに忍び寄るもの~
あくる朝、目を覚ました私は布団から出て、窓開ける。
雨上がりの新鮮な空気を吸い込みながら、
「いい朝」
となんの気なしに呟くと。
「おはようございます、いい朝ですね」
いつの間にか戻ってきていた、リルファに見られていた。
「・・・おはようございます」
なんとなくだけど恥ずかしい、赤くなった頬を隠しながら自分の持ち物を確認する。
「あ、それならもう終わってますよ」
「え?・・・あ、ホントだ」
「昨日の夜、ちょっと所用で戻った時についでで確認しておきました」
「ついでってことは本命は、違うのね」
「それについては答えるつもりはありませんん」
相変わらずの秘密主義なようで、
「そっか、・・・そろそろ行こうか」
「ええ、遅れると何が起きるかわかりませんから」
微妙に不安になることを言うリルファ。
まあ用心するに越したことはないでしょうね。
集合時間十分前に着くと、平民階級の人たちばかりが全員集まっていた。
「よーしみんな揃ったか?・・・揃ったようだな。じゃあ共同馬車に乗りこめ」
引率の先生が、平民しかいないこの場で貴族を待たずに行こうとします。
「先生、貴族の方々は待たなくていいのですか?」
「ああ、気にすんなあちらは現場まで家から直行だそうだ。毎年の事だ、気にする必用はない」
そう、生徒の質問にそっけなく答える先生。
その言葉にはやりきれない何かが詰まっているような気がしてみんな言葉がなくなった。
が一人だけ空気なんて読めないかのように、話しかける生徒がいた。
「アルペド先生、今から行くのはどんなところなんですか?私、ちゃんと栞を見なかったものですから」
「栞を見てもわからんだろ、あれを書いたのは文才もない奴らばっかりだったからな。今から行くのは、ヤーレウス高原。まあ簡単な宿営地だと思ってくれればいい。魔物も弱い上に弱点もはっきりしている奴ばっかりだ、ヘマしなきゃ怪我人すら出ないで終わる。ま、多少の怪我なら先生の誰でも治せる安心しな」
そう言い切ったあと、アルペド先生は続けてこう言った。
「だからと言って、面白半分になるなよ。服の切れ端しか戻ってこなかった生徒もいたんだからな」
教訓めいたことを言った。
「大丈夫でしょう、ここにいない人たちが無茶をしなければいいだけですから」
「ま、そうだな」
それでこの話は終わったとばかりに静かになる、もうすぐ目的地だ。
「準備は?」
「だいじょうぶ、今年も生徒が一人服の切れ端で帰ってくるだけよ」
「ひどいね、王家ってのは」
「坊ちゃんは金払いが良くて助かるわ」
「あんなのが王様になったら、私たちの天下も近いわね」
「さあ、そんな先のことより今のことよ」
崖の上か眺める者たちは、何者にとっての災厄となり得るのかはてさて、そんなことを私が知ったのは、あとの話だ、今はただ浮かれる一人の傍観者だった。