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私の始まり、彼女の終わり

というわけで、とりあえず一話目を投稿しておきます。

2/3

私が僕として過ごしたのは、二十になる前までだった。

私の私としての一番古い記憶は、母の視点からだった。

その視線には膨らんだお腹、そこから生えている剣は明らかに私を貫いていた。

そして母は見た自分のお腹を、子を貫いた剣の持ち主を。

そこで一旦記憶が途切れた。




次に目が覚めたとき、私は何かの液体の中にいた。

液体の向こう側にいた女性が母だとはわかった。

けどもうひとりは最後までわからずじまいだった。

彼が何者がわかったのは、最期の時だった。

その時まで母は、何かを悔やむように私に向かってつぶやいていた。

そんな母を彼は支え続けた。

私をこの液体の中から出すための苦労は、生半可なものではなかったのだろう。

私を見ている時間が日が昇って再び昇るまでの間で会えた時間は、三十分がせいぜいだった。

私には母や彼の声は聞こえなかった。それよりももっと大きな声が聞こえていたからだ。

それが断末魔だと気付くのにそう長い時間はかからなかった。




その日は突然訪れた。

それまで聞こえていた声が全く聞こえなくなった。

そして初めて聞こえた母の声は、

「あの子をお願い」

死に際の言葉だった。

そのまま母の亡骸が骨になり骨すら粉々になって、あとには着ていたローブだけが残った。

彼も私に背を向けて何か言っていた。

「なぜ私の体が崩れているかって?当たり前ですよ。主のいない使い魔の末路ってやつですよ。後悔などひとかけらもありませんね。…ひとつだけ心残りがあるとすれば、お嬢様を名前で呼べなかったことでしょうか」

そう言って彼も塵となって消えた。

私の体はチラとも動いてはくれなかった。

ただ光景を見せられ、最期の言葉だけを聞かせられただけだった。

自分の母親のそんな状況を見ても泣くこともできなかった私は、どこか壊れているのかもしれない。




再び気がついたのは、豪華絢爛な広い部屋だった。

そこが謁見の間であったことは、想像に難くなかった。

その中にいたのだ、私と母を貫いた剣の持ち主が。

その隣で豪華な椅子に座っている男がいた。

その時全てを理解した。

豪華な椅子に座っている男が私の父、そしてこの国の王だと思う。

私は生まれてはならない子だった。

だから子を孕んだ母ごと刺し貫いた。

全てはこの国を揺るがせないため、この国の民のため。

父は国を選び、母は子を選んだ。

だからといってそんな悲しい目をしないでください。

私を生かすためだけにこの国の民が死んだのです。

多くの命が失われたのです。

たとえあなたの過ちだったとしても、母のしたことが許されるわけではないのですから。




彼らが私を連れてきたのは、かなり遠くの孤児院っぽいところだった。

その建物は、それから十二年ほど過ごすこととなる孤児院だった。

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