第23話
今回、短いです。
屋敷に帰ると慌てて出迎えにきた侍女に心配の目を向けられるが、ぐったりとジェラールに抱えられるままだったベルは、声をかけることもできず、そのまま寝室へと運ばれた。
ベルがシーツの中に入ると、ジェラールは無言のまま寝台の端に腰かけた。
ジェラールになにか声をかけようとしたが、言うことが浮かんでは消えていった。
二人は無言のまま、しばらく時間を過ごした。
口火を切ったのはジェラールだった。
「考える時間が必要……か。たしかにそうだな。」
最初はなにを言われたのか分からなかったベルだったが、その意味を理解すると、じわじわと恐怖が襲ってきた。
「先走りすぎたようだ。ベルの気持ちを聞いていなかったな。」
どくんどくんと心臓の音がうるさくて、身体が金縛りにあったように動かない。
続く言葉を聞くのが怖くて、耳をふさぎたいというのに。
「少し離れて、考えてみるか?」
ぼろぼろと涙がこぼれてきた。
シーツを頭までかぶって、いやいやと首を振ったが、ジェラールには見えていないだろう。
のどが引き絞られて、声を出そうとしても嗚咽しかこぼれてこない。
「改めて、選べばいい。」
寝台にかかっていた重みがなくなった。ジェラールが立ち上がったのだ。
ジェラールの中では、すでに結論が出ているのかもしれない。
ベルを手放す、という結論が。
(違う、違うんです。今が嫌だから、屋敷を出て行ったんじゃないんですっ!)
ごめんなさい、ごめんなさい。
だから、許してください。
以前のように、戻りたいです。
頭の中で言葉を繰り返しているうちに、ジェラールは寝室から姿を消していた。
イヴ、自滅。
しかし、後遺症が残りました。




